三十八話 アンサ〇クロペディアに真実を書かせた男なんです
シャド〇バースのせいで執筆が進みませんでした……。
昔々、あるところに、三左衛門さんというお侍さんがおりました。
三左衛門さんは森家という家のお侍さんで、織田家に仕えたお侍さんでした。
三左衛門さんはとても腕っぷしの強い大男で、槍術に優れていたので『攻めの三左』とも呼ばれていました。
信長様に信頼され、いつも大活躍でした。
三左衛門さんには『えい』という奥さんがいて、とても仲睦まじい夫婦でした。
森さん夫婦は子宝にも恵まれ、六男三女と大家族でした。
その子供たちの中で、一際異彩を放つ子が居りました。
その子の名前は勝蔵。
勝蔵は次男であったので、お家を継ぐ長男の傅兵衛と違い、仲間のやんちゃ坊主たちと共にスクスクと、それはそれは傍若無人な暴れん坊に育ちました。
そんなある日、彼が十三歳の時でした。父の三左衛門、兄の傅兵衛が相次いで戦で亡くなり、勝蔵は急遽お家を継がなければならなくなりました。
しかし、勝蔵は武家の当主としての勉強をしてこなかったので、突然当主になれといわれても、どうすればいいかわかりませんでした。
そこで、勝蔵は考えました。
「とりあえず敵を殺そう!」
勝蔵は初陣の長嶋一向一揆討伐戦で、盗んだ小舟を漕ぎ出して単身で突撃。
お百姓さんたちに無差別に襲い掛かり、あっと言う間に二十七人もの首を挙げて帰って来たのです。
勝蔵の暴れっぷりはこれだけに留まりません。
自身が一軍を預かる立場であるにも関わらず、敵がいるとみれば
「よし、殺そう!」
と駆け出し、いつも配下よりも先に敵に襲うう掛かっていました。
呆れた信長様にも自重するようにと怒られましたが、勝蔵はあまり聞いていませんでした。
勝蔵は、邪魔するものは味方でも容赦しません。
ある時、味方領内の関所を通ろうとしたとき、
「信長様の命でここは通せない」
と門番に言われました。
怒った勝蔵は、
「ならば殺す!」
と、自慢の名槍・人間無骨で門番を一刺しに殺し、関所に火を放って行ってしまいました。
またある時は、勝蔵が橋を渡ろうとした際にそれを止めた番人を、これまた人間無骨でザクッと一刺しして川に放り捨ててしまったというのです。
その後も勝蔵の残虐っぷりは止まりません。
武田を攻めた際には、城内に鉄砲を撃ち込んで非戦闘員もろともまとめて銃殺したり。
本能寺の変後に信濃から撤退する際には、人質を盾にした後皆殺しにしたり。
あぁ、なんと極悪非道。なんと滅茶苦茶なことでしょう。
こんなとんでもない傍若無人のクソガキは敵からも味方からも恐れられ、『鬼武蔵』と呼ばれた勝蔵の逸話は現代まで受け継がれていくのでした。
めでたし、めでたし。
◇◇◇
……以上、森長可くんの騒々し過ぎる逸話でした。
余りに過激な物語なので、歴史絵本チックに紹介してみたが、多少は和らいだだろうか?
この長可くん。主の信長様の命令をガン無視したり、敵味方関係無く襲い掛かったりと、本当にやりたい放題していたといわれているが、冗談じゃないのかと思う。最初は本当に冗談だと思った。
そんな長可くんが現代日本のインターネットで付けられた呼び名は「DQN四天王」「ヒャッハー系武将」「SATSUGAI」「アンサ〇クロペディアに真実を書かせた男」などと、まぁ大変なことになっている。
某漫画では「首おいてけ」などと呻きながら刀を振り回す首狩り妖怪がいるらしいが、鬼武蔵はそれを地で行くっていうんだから恐ろしい。
ちなみにだが、『俺がこの世界で出会いたくなかったトンデモ人物三銃士』というのがあって、長可も当然その一人だ。
他のメンバーには「裏切り上等の自爆男」とか「夫と姑を謀殺した嫉妬娘」がいる。……一人は何処かで聞いたことがあるが、まぁ気にしない。
……まぁ結論を言うと。この森長可くんは、俺みたいなオタク系男子の天敵である、DQN系男子なのである! だから極力関わりたくなかったのだ!
◇◇◇
「だからと言って、放任する訳にはいかないしなぁ……」
「あぁ、あれでも森可成殿の息子であるし、腕は立つらしいからな。無暗に突撃し過ぎないように見張らなければならないが…。
似たような性格であるし、氏郷とくっつけてみるか?」
「そんなことしたら二人で仲良く敵陣に突っ込んでくのがオチだろ。猪が二頭……。いや、年上の氏郷が馬で、年下の長可が鹿で、暴れ馬と暴れ鹿が一頭ずつ。丁度"馬鹿"だな!」
「誰が馬鹿だ! 誰が馬だ!」
俺と信忠があれこれ言って氏郷を囃し立てていると、そこへ話題の人物・森長可が自慢の人間無骨を振るう手を止め、俺達のところにやってきた。
新品の鎧に身を包み、ピカピカの大槍を固く握りしめた少年の表情には、初めての戦場への緊張と、期待に満ちたような気持ちが浮かんで見えた。
「信忠様、滝川殿、蒲生殿。改めて、この度は某の初陣の目付となって頂きありがとうございます。
先輩方の武功に準えるよう、精一杯働く所存にございます」
と、長可は丁寧に頭を下げた。
「あ、あぁ……。決して無理はせず、突出し過ぎないように気を付けてくれ。共に頑張ろう」
余りに予想外な長可の物腰に、返事をした俺は逆に驚いてしまった。
もしかしたら、この世界の長可はマトモな性格をした好青年なのかも……?
「よし、長可の目付は俺がやるよ。信忠は兵の指揮を。氏郷は先陣に立って味方を盛り上げてくれ」
再び俺達から離れて槍を振るいだした長可の背を長めつつ、「きれいな長可」へ淡い期待を抱いた俺は、自ら彼の目付をすると二人に伝えた。
「(あんな真面目な挨拶が出来る若者が、まさかDQNな訳がないだろう……)」
我が陣内に、物見に出ていたミケが駆け込んできたのは、俺がそう思って安心した矢先の事であった。
「報告~! 朝倉軍の先鋒部隊が川を渡り、徳川軍の先鋒・酒井隊が衝突したにゃ! 浅井軍と織田軍本隊もそれに応じて動き出しましたにゃ」
---それは姉川の戦いの始まりを告げる報告であった。
1570年、夏。
朝倉軍が動いたことで両軍睨み合いの均衡は破れ、徳川と朝倉、織田と浅井が総力をかけて衝突する。
織田家の歴史のターニングポイント、姉川の戦いの開戦なんです。
ミケの報告を聞いた俺はすぐさま配下部隊に指示を出した。
「よしっ! 滝川隊、出撃準備! 徳川軍にも織田軍本隊にもすぐさま加勢できるよう、騎馬隊の用意をして…おけ…?」
配下に命令を飛ばす最中、彼が居ないことに気が付いた。気が付いてしまった。もうなんかすっごい嫌な予感がする。
サアッと血の気が引くような悪寒に身震いしつつ、慌てて陣を飛び出すと、その先に見えたのは……。
「行くぜオラァ!! 浅井だろうが朝倉だろうがぶっ殺してやるよォォォォォ!!!!」
咆哮をあげながら単騎で敵に猛進していく、チンピラDQN武者の姿であった……。
ちなみに私はスタンダート期からずっとロイヤル使いです。
アリスロイヤルが強くて震える。
ロイヤルは神々の騒乱の氷河期を乗り越えたんや……! ロイヤルの春が来たんや……!
次回は姉川の戦い始動です。




