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三十一話 大河内城・落城なんです

すみません! 執筆中に急用が入ったので途中で投げます。

続きは明日書きます! ごめんなさい!


氏郷が具教と一騎打ちを繰り広げている頃、俺は混乱極まる城下において、懸命に味方部隊を指揮していた。



「足を止めるな! 火を放ち、敵を攪乱せよ!」


織田軍奇襲部隊の目的は、大河内城内を錯乱させることだ。この作戦で最も厄介な存在であった北畠具教を氏郷が足止めしてくれている以上、俺達だって最大限のパフォーマンスを披露するしかない。



「敵兵に構うな! 物資や兵糧を確実に潰せ! 徹底的に敵軍を掻きまわせ!」


織田の兵たちは戸惑い混乱する敵兵や難民たちに紛れながら、城内の至るところに火を放つ。それが更に混乱を招き、地獄のような情景が城下に広がっていく。


織田の兵たちにはわざと具足を泥で汚させ、織田の家紋を見にくくしている。勿論軍旗のようなものは持たせていないし、中には北畠軍の兵から奪い取ったり、拾った具足を着用させている兵も混ぜている。

暗がりの中で一見しただけでは敵味方の区別が出来なくなった織田兵は、それはもうやりたい放題に暴れている。


立ち込める煙と真っ赤な炎に照らされる空を眺め、作戦の成功を判断した俺は、程々で味方を撤退させるべく号令をかけた。




〇〇〇




ある程度味方を撤退させた俺は、大急ぎで氏郷と合流すべく魔虫谷へ向かった。保険(・・)を置いてはいるが、心配ではあるのだ。



「氏郷・・・、無事でいるといいが・・・」


一騎打ちがどんな結末を迎えたのかを知る由もない俺は、一杯の不安を胸に抱えながら、ひたすら走った。

そして、飛び出すように魔虫谷へ飛び出した俺が見た物は・・・



「大丈夫か! 氏さ・・・と・・・?」


血の滴る長柄刀を未だ握ったまま、天を仰ぐように立ち尽くして満足そうな笑顔を見せる氏郷と、それに並び立つ佐治新助(保険)

そして向こうに見えるのは、血で滲んだ肩口を抑えて座り込む北畠具教と、それを囲む何人かの配下の兵。


これってもしかして・・・。



「・・・新助。状況報告を頼む」


「はっ。氏郷様は一騎打ちの末、北畠具教に見事勝利を収めました。後はご覧の通りでございます」


「マジか・・・。勝っちまったのかよ・・・」



やりおった・・・! あの北畠具教に勝ちやがった!



「見たか! 久助・・・! これでお前に並び立つ男だって、胸を張って言えるよな!」


「そんな・・・十分すぎる、城一つに匹敵する大戦果だぞ!」



具教を討ち果たせとまでは期待していなかったが、氏郷は俺の想像を超え、あの北畠具教は見事に打ち破って見せたのだ。若干14歳の少年が果たした大戦果、この功績に文句をつけられる者なんてこの世界のどこにもいないだろう。



「・・・まさかこんな小童に負ける時が来ようとはな・・・」


俺達が感激に身を震わせていると、応急手当を終えた具教が立ち上がってくる。痛々しく血の滲む肩口を気にする素振も見せずに笑みを見せる姿は、いかにも豪傑といったものだ。



「いや、小童と言うのは止そう。貴様はこの儂の剣を越え、討ち果たした立派な男だ」


具教が氏郷を褒めると、氏郷はフフンとドヤ顔をする。

ここで調子に乗らなければもっと恰好がつくんだけどなぁ・・・。

氏郷の相変わらずの様子に呆れながら、俺は告げる。



「で、だ。大河内城主・北畠具教よ。我々滝川隊は城の兵糧や物資を潰して火を放ち、既に撤退している。これ以上の抗戦は兵や民を苦しめるだけになるだろうが・・・、それでも抗い続けるか?」


籠城させる備えも士気も潰した。もう北畠軍に戦う力など残っていないのだ。



「・・・儂が負けた時点で、北畠軍の負けじゃ。もう抵抗はせん、大人しく降るわい」


「そうか、その旨は信長様に伝えておこう。翌日に使いの者を送るよう手配しておく」



具教は、ふぅっとため息をつき、降伏勧告を受け入れた。

この瞬間、長き大河内城の攻防は予想外の形で終わりを迎え、織田軍の勝利が決まったのだ。




△△△




「・・・儂の腕が鈍ったのかと思ったが、そうではなかったのぅ」


織田軍は既に山を下り、放たれた火も消化し終え、静けさを取り戻した大河内城にて、具教は月を見上げてそう呟いた。



「異形な刀、見たことも無い戦法、全ては儂らの剣術に酷く合理的に対応した剣術であった。・・・時代は移り変わる物よ」


長き時代を経て積み上げられてきた自らの剣術は、武器の長さを生かして距離を取り続け、一方的に攻め続ける剣にまるで歯が立たなかった。



「クックックッ、新しい世代の若者たちが乱世にどれだけの嵐を巻き起こすのか、これからが楽しみじゃ・・・」



月を眺め、大河内城で最後の夜を愉しむ具教は、これから来る新しき時代を駆ける新星達の活躍を想い、独り嬉しそうに笑っていた。





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