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二十三話 三人の天才なんです

信忠の一人称は、父の前では「私」、そうでないときは「俺」のつもりです。

結構ゴッチャになってるかもしれません。


彼らは天才であった。



偶然にして同じ世代に生まれ、同じ家に集った、織田信忠、滝川一益、蒲生氏郷。

織田家の三名の若武者は、それぞれに傑出した才能を持っていた。



この初陣の日までは、織田の天才と言えば、間違いなく『神童・滝川一益』の名が挙がっていただろう。


だがこの日、神童の影に潜んでいた二人の天才は、『織田の新星世代』として天下にその名を並べることとなる。



『軍』の織田信忠。

『知』の滝川一益。

『武』の蒲生氏郷。


彼らの物語は、ここから真の始まりを告げるのだった。




◇◇◇




1569年、八月。

織田軍は木造城救援と大河内城攻めのため、岐阜から出陣した。


織田信長が大将自ら本隊を指揮し、木下秀吉、池田恒興、稲葉一鉄、丹羽長秀、そして俺、滝川一益といった武将が参戦している。



木造城では、北畠氏から寝返った城主・木造具政と、織田軍本隊より先に援軍に駆け付けていた織田軍の神戸具盛らが、五月頃から北畠軍の猛攻を凌ぎ続けていた。


そして八月にようやく織田軍本隊が出陣すると、北畠軍はようやく木造城の攻撃を諦め、本拠地・大河内城や支城に籠って籠城の構えを見せたらしい。


木造城で合流した織田軍はそのまま南下し、予定通りに南伊勢方面に南下を開始した。



「俺が指揮する織田軍本隊は、恒興、稲葉、丹羽、滝川の部隊と共に直接大河内城を目指す。

木下隊は、挟撃を避けるために大河内城の手前の阿坂城を落としてこい。他の支城は烏合の衆だ。無視して構わん」


「「「はっ!!」」」


信長様は改めて作戦の指示を全軍に伝える。


史実通り、俺達は秀吉隊を除いた全軍で大河内城を包囲し、そのまま籠城戦に持ち込む流れになるだろう。

俺はそう思っていたのだが・・・。



「父上! 私も阿坂城攻めに加わらせてください!」


「えっ!?」

「の、信忠様!?」



信忠が突然、阿坂城攻めに参加したいと言い出したのだ。

俺と秀吉殿が思わず驚きの声を上げる。


「私は父上の跡継ぎとして、皆の上に立つ者にならなければなりません。

その為には、まずは久助の上に・・・いえ、並び立てる男にならなければと思うのです。

だから、久助でも成しえなかった阿坂城攻めに加わりたいのです!」


「ウグッ!?」


と、信忠は興奮した様子で言い、俺の心は突然の攻撃で深刻なダメージを受けた。



阿坂城・・・鎌倉時代からある歴史のある城で、北畠氏が北伊勢方面に対する際の重要な拠点となる城である。

実は北伊勢平定の後、俺は何度かこの阿坂城を攻撃させていたのだが、その度に防がれ続けていたのだ。

東国出兵の件で上手く水に流したつもりだったが、まさか信忠に掘り返されるとは・・・うう。



どうやら信忠は、俺でも成しえなかった阿坂城を自らの手で攻め落とすことによって、俺に並び立てるような戦果を挙げたいということだった。



「しかし信忠様は初陣です、いきなり一軍を率いて城攻めというのは流石に・・・」


と、秀吉が反論する。



「なんだ、秀吉。俺では力不足だというのか?」

「いや、普通は心配しますって・・・」


ニヤリと笑ってやる信忠に対し、秀吉は苦笑いをする。



「久助も佐々の助けはあったが、初陣で一軍を率いて伊勢高岡城を落として見せたのだ!

久助の上に立つべき俺が、久助を越えられなくてどうするというのだ!」


信忠は立ち上がって言う。


俺は少々特殊なので、よいこはマネしないで欲しいんだけど・・・なんて言っても止まらないよなぁ。


まぁ、信忠にとって、具足を着込んで刀を抜き戦場に立つという意味での初陣はこれが初めてになるが、実際の戦争や軍略を目の当たりにするってのは、俺の元で何度もしている。

だからただの初陣のおぼっちゃんよりは確実に経験を積んでいるのは確かなのだ。



「フ・・・面白い。いいだろう、信忠よ。言ったからには阿坂城を攻めて戦果を挙げてこい!

秀吉と一益は信忠の初陣を支えてやれ! 過剰な手出しは無用だぞ!」


「マジかぁ・・・了解です」

「はっ・・・手柄を立てる機会が・・・」



俺と秀吉殿はそれぞれ落胆して返事をした。それを見て信長様は面白そうにカカカと笑っていた。


「すまんな、秀吉。今回だけはお前の手柄を俺に譲って貰う! 久助は俺の右腕となって支えてくれ。頼んだぞ!」


「このサル、やるからには全力でやらせていただきますよ、信忠様!」

「ああ、信忠。任せておけ」



こうして、別動隊の阿坂城攻略部隊として信忠・滝川隊と木下隊が編成され、織田軍は木造城から二手に別れて軍を南下させるのであった。







1569年、夏。

信忠は親友にして忠臣の久助と並び立つ男になるため、初陣にして一軍を指揮し、阿坂城を攻め落とさんと奮起するのです。

『知の一益』の知は、知識の知ですね。色々と新兵器を作っているので、周囲からは物知りなイメージが強いようです。

ぶっちゃけ二分で決めたので、深く考えてません(笑)


次回は信忠くん大活躍回。



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