一話 〇〇熱狂者なんです
思いつきでのんびり書いていきます。
よろしくお願いします。
「久助!! お前には"滝川一益"を名乗り、滝川家を継いでもらう!!」
突然の宣告。いきなり突き付けられた現実に俺は言葉も出なかった・・・。
1567年、春 滝川久助、12歳。戦国武将になりました。
◇◇◇
俺の名は滝川久助。遥か昔の戦国の時代に、滝川家という武家に生まれた。
滝川家と言えば織田家に仕える武士の一族で、織田四天王の1人・滝川一益という名前ならば、現代でも20人に1人くらいは知っているだろう。
久助はその有名な滝川彦右衛門一益の長男として生まれたのだ。
「と、ここまではいいんだがなぁ・・・」
思わずため息が出る。ここまで聞けば、俺は上下の格差が激しい時代に、上の階級の家に運良く生まれてきたラッキーな坊ちゃんだ。
だが、それを含まなくても俺の出生には更なる秘密がある。
語るとちょっと長くなるが、まぁ、お茶でも片手に付き合ってくれたまへ・・・。
○○○
話をしよう、あれは今から36万・・・あ、いや、ごめんなさい。450年くらい先の話です。
俺は20XX年、中部地方のとある町で平成の時代を生きていた平凡な、いやちょっとオタッキーな高校生だった。
戦国時代を題材にしたゲームにちょっと精通していて、あの日もちょっと戦国カードゲームをやりにゲーセンへ行っていたな・・・。
っとまぁ。そう、俺は転生して過去の世界へやってきた転生人間なのだ!
生前の滝川久助(17)は春休みの真っただ中、ゲーセン帰りにトラックに轢かれて、気が付いたらこの世界で子供になっていて・・・という感じだ。
クラスメートが良く読んでいた本のジャンルによくこういった導入が描かれていたな。俺はそのジャンルには疎かったが、まさか当事者になるとは思いもしなかったさ。
○○○
「こうして、滝川久助は生まれたのだ・・・」
「殿、誰に向かって仰っているのですか」
「いや、殿はやめてくれ・・・むず痒い」
「大殿から一益の名を正式に受け継ぐのです。いつまでも久助様と呼ぶわけにもいきますまい」
唐突に話に割って入るなよ、まったく・・・。
この空気の読めない男の名は佐治新助。俺が小さい頃から常に傍で世話と教育をしてくれた、今風にいうと執事のような男だ。
俺は生前の記憶を残していたし、戦国時代の知識にもちょっと自信があったから学問に問題はなかった。むしろ知っているはずのないことまでスラスラと答えて驚かれることもよくあった。そのたびに誤魔化してやった。
だが武士としての礼儀作法なんかにはあまり自信が無かったし、剣術や馬術は当然のことながら現代っ子にはからっきしだったので、そこは正直に助かった。
今の俺が武士としてそれなりに恰好がつけられるのは新助のお陰だろう。それを本人に言うと調子に乗るので言わないがな。
「はぁ・・・本当に、俺なんかが"一益"の名を継いでいいのかよ」
生前、趣味で関東ゆかりの武将について調べたことがあるので、当然、滝川一益という人物について、その名前の重さも含めてよく知っている。
これから俺は滝川一益を名乗ることになるのだが、そもそも史実では滝川一益は1525年生まれ・・・俺が担当するには年齢が合わない人物だ。
1555年生まれの俺は恐らくその息子・・・滝川一忠に該当するべきだった存在だろう。
うん、素直に言って嬉しくない。
「無論ですよ、殿。信長様を支え、天下を取るだけの才能が殿にはあるのですからね」
「過剰評価だよ全く・・・。そもそも、俺にはそんな気は無いんだぜ?」
「またいつものアレですか? あんなこと言ったら、本来なら謀反を疑われて打ち首ですよ」
そんなこと言われたってなぁ・・・。頭をポリポリと掻く。
俺が滝川一忠として生まれたのが喜ばしくない理由は簡単。一つは一忠が史実でどんな末路を迎えるかを知っているからだ。
賤ケ岳の戦いでは秀吉に敗れ降伏。小牧・長久手の戦いでも徳川家康に敗れて責任を取らされ没落。それくらいの情報しかない、わかりやすい"負け組"だ。
そんな人物に配役された身としては堪ったもんじゃない。これから天下を取ろうなんて気概よりも、なんとか現状の地位を保てれば位のモチペーションが精一杯だろ。
ま、この運命を自慢の知識で覆すっていう王道的展開も悪くないが、そんなことよりもう一つの理由。
俺がどうしても織田の天下を取りたくないワケがある。
「いーや、こればっかりは譲れないね! 俺はこのために生まれてきたと確信しているからな」
そう!俺がどうしても譲れない信念。生まれ帰ってから何度も言い続けてきたこの野望。
関東生まれの戦国オタクとして譲れないモノがその胸の中にあるのだ。
「俺は生まれてこの方"北条熱狂者"だ! 必ず北条家と天下を取ってやる!」
滝川一益。織田家四天王だけど、北条家と天下を取りに行きます。




