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十五話 『滝川の戦い』と忠告なんです

昨日、中途半端に切った分を頑張って書いたら、とっても長くなりました。


僅かな月の光すらも木々の葉か遮り漆黒に染まる林の中を、二人の男が何かを追うように駆け抜ける。


二人の服装は武士のそれであったが、本来腰に差すはずの刀を紐で背負い、代わりに腰には二本の短刀といくつかの暗器が装備されていた。


山犬の如き素早さで暗闇を駆けるこの二人が、織田家の武将・滝川一益とその忠臣・佐治新助であると言おうと、武士とはあまりにもかけ離れた動きを見て信じる者はいないだろう。




〇〇〇



「新助、目標の気配は追えているな?」


「勿論です。私が右の二人を仕留めましょう」


「わかった。俺が左をやる。決して逃がすなよ」



俺は新助に確認をとると頷き合い、二手に別れた。

俺があの時、林の中に感じた気配は・・・間違いなく"忍"。


何処の勢力の忍かは知らないが、徳川の忍なら我が陣営を覗き見る必要が無いし、織田の忍びなら俺に対して(・・・・・)こんなマネはしない。

ならば敵対勢力の者であるのはほぼ間違いない。黙って見逃すわけなどないのだ。


敵は追手である俺達の気配を感じ取ったのか逃走しているが、俺達から逃げるには遅すぎる。

次第に距離を詰め、とうとう敵の忍二人を攻撃範囲内に捉えた。


「逃がさんッ!!」


懐から取り出した投擲武器・・・特注で制作してもらった、インド発祥のチャクラムと呼ばれる小さなフリスビーのような武器・・・を投げる。


チャクラムは一人の脇腹を深々と切り裂き、その忍は呻き声を上げて前のめりに倒れる。

もう一人の忍は突然仲間が殺られた驚きに一瞬足を止めるが、直ぐに再び逃げようとした。


手遅れと判断するや、すぐさま見捨てて逃げるのは忍として正しい行動だ。仲間の命よりも、持ち帰るべき情報の方が遥かに価値があるのだから。

しかし・・・


「三流の忍が・・・足を止める奴があるか」


その過ちが、闇夜の世界ではあまりにも大きな隙となる。

一瞬で距離を詰めた俺は短刀を抜き、残った一人に斬りかかった。



ビュッ!!



その瞬間、風を切る音と共に、手裏剣が何処からか俺の頭を狙って飛んできた。


「チィッ!」


俺は舌打ちをし、振り下ろした刀の軌道を変えて手裏剣を避ける。

その勢いのまま、目の前の忍を回し蹴りで蹴り飛ばした。


正確無比に急所を狙う精度・・・、そして、味方を救う為でなく俺を殺す為の攻撃。確実に手練れだな。


吹き飛ばされて木に激突し蹲る忍の首元に素早く苦無を一刺しし絶命させると、

俺は木の上から降りてきた、その手練れに向き合った。



「・・・まさか、織田家の神童・滝川一益がコッチ(・・・)の人間だとは、正直オドロキっすよ」


黒の装束に身を包む女性(・・)は、両手を上げてプラプラと振り、敵意が無いことをアピールしながらそう言った。

長い黒髪をポニーテールのように後ろで纏め、胸元を広く開けた忍装束からは、薄手の帷子が見えている。なんともエロい恰好だ・・・これもお色気の術ってヤツなのかね。



「やはり、日中の販女の・・・。只者ではない雰囲気は感じていたんだよ。お前たちは何が目的だ?」


「へぇ、あの時に。流石に神童と呼ばれるだけあるっすね~」


「おい、質問に答えろよ」


「やだなぁ、目的をペラペラと喋る忍がいるわけないじゃないっすか」



ケラケラとくノ一の女は笑って言う。


随分と軽い態度だが、確実に強い。真っ向勝負になれば負けないかもしれないが、深い手傷を負わされることになるだろう。

一軍の大将が敵の忍の夜襲に遭い負傷など笑えない。相手がやる気でないなら無理にやりあうこともない。


だが、だからといってそのままはいさよならと逃がすわけにもいかない。

俺は敵の正体について思っていたことを口に出した。



「・・・甲斐の歩き巫女」


「・・・」


軽い態度で笑みを浮かべていた彼女の表情が曇る。



「ビンゴだな。お前は武田のくノ一衆の頭領、望月千代女だろ?」


「・・・我々の素性は機密情報のハズなんですがね」



と、千代女は態度を一変させて、殺意の籠った眼で俺を睨んだ。



望月千代女(もちづきちよめ)。武田家の伝承に残る、くノ一衆の頭領と言われた女性である。

甲賀の忍一族・甲賀望月氏の出身で、武田信玄の甥である望月盛時に嫁いだと言われており、夫が若くして戦死したために、その後は武田の忍として「歩き巫女」と呼ばれるくノ一衆を育成したと言われる人物だ。


戦国時代のくノ一と言えば、まずこの望月千代女か、戦国末期の初芽局の名前が上がるだろう。

それほどに歴史オタクにとっては有名な人物だが、この時代ではその情報は知られてはいけないものだろう。忍だから当然だが。



「このまま何も喋らずに逃げるというなら、同盟国・武田家が我が軍に対して密偵を忍ばせたことを信長様に報告しよう。コイツらの首を並べてな」


と、俺は脅しのように言い、それと同時に二人の黒装束の男を抱えた新助が現れ、それを地面に放ると俺の後ろに並び立つ。



千代女はう~んと考える素振りを見せた後、少ししたら懐から白い布を取り出し、それをヒラヒラとさせた。



「わかりました、降参っすよ。ホントはこれ機密情報なんすけど・・・話すから見逃してくれませんかね?」


「内容によるな」


「慎重っすね~。・・・まず、我々の目的は織田軍じゃなくて、本来は別の任務だったんすよ」


と、千代女は言う。どういうことだ?


「本来の我々の目的は『とある抜け忍の抹殺』なんです。織田軍と接触したのは偵察や錯乱じゃなくて、単に人探しの為なんすよ」


「はぁ? 抜け忍?」


「そうですねぇ、これ言っちゃっていいかなぁ・・・。まぁいっか。一益さん、貴方は闇の世界の『加藤』って知ってます?」


「『加藤』・・・。あぁ、上杉を追われて武田に仕えた『飛び加藤』か?」


「そうです。何でそんなことまで知ってるんですか。恐ろしいっすね・・・武田に寝返ってくれたりしません? ご奉仕するっすよ?」


「断る。下らんことはいいから続きを言えって」



御奉仕はちょっと気になるが、俺が簡単に織田を裏切る訳がないだろう。



「残念ですね・・・。で、その『飛び加藤』の弟子がですね、逃げ出したんすよ」


と、千代女が言う。



飛び加藤・・・加藤段蔵は史実でも有名な忍で、始めは上杉謙信に仕え、余りの能力の高さに謙信に警戒されて越後を追われ、転がり込んだ武田家でもその技術を危険視され、最期には信玄の配下の将に暗殺されてしまったという伝説の忍だ。

その加藤段蔵が殺害されるのは、俺の記憶が正しければ1569年・・・丁度今年だ。


予想するに、師匠の段蔵が殺害されたことを知り、弟子は自身の危機を感じて逃げ出したと・・・そんなところかな。



「我々としては逃げ出した忍を放っておく訳にはいかないので。つまり抜け忍狩りってやつっすね!」


「なるほど・・・事情はわかった。それで、滝川軍にソイツが紛れていないかと思って接触した訳か」


「話が早くて助かるっす。どうやら居ないようだったんで大人しく撤収するつもりだったんですけど、まさかバレるとは思いませんでしたよ」


「配下を仕留めたことには謝らないぞ。俺達は所属不明の不審者に対して当然の対処をしたまでだ」


「いやいや、それはもう。この世界はヘマした者が死ぬのは当然っすから」



どうやら千代女は俺達が部下を殺したことにケチをつけようとは思っていないらしい。穏便に済みそうでよかった。



「で、結論としては、今回のは事故みたいなモンなので、お互いに不干渉。今夜の事はなかったことにして欲しいんすよ。

勿論仲間の忍には『今後、滝川一益には関わるな』と伝えておきますし。貴方も今夜の"忍としての滝川の戦"を他者に知られたくはないでしょう? 秘密のニンジャ同盟っね!」


「・・・まぁな」


「でしょう? これで我々は任務が続行できますし、そちらは武田の忍の妨害がなく進軍が出来る。それに織田と武田の同盟も平和のまま! お互いに損は無いっすよ」



・・・まぁいいか。ここでこれ以上争っても仕方が無いし、それにぶっちゃけ、今の滝川軍にとっては武田に流されて困るような隠し事が無い。援軍も何れバレるだろうし、むしろバレてくれた方が牽制になる。

奇妙丸の存在にはコイツらも気づいて無かっただろう。気づいていたならその時点で暗殺しに来るだろうしな。勿論そんなことはさせないが。



「わかった。それでいこう」


「交渉成立っすね! 秘密のニンジャ同盟締結っす」


そういうと、千代女は死体を適当に木の葉で隠すと、その場を立ち去ろうとする。



「あっ、最後に忍仲間として、二つ忠告しておくっすよ。」


クルッと振り返り、指を二本立てて言う。



「貴方は優れた忍の術をお持ちですけど、やっぱり武士っすね。私が言うのもなんすけど、貴方はこっち側に居る人間じゃないっす」


指を一本折る。


「あと、段蔵の弟子には気を付けてください。アレは未熟ですけど・・・間違いなく『飛び加藤の弟子』っす」


もう一本の指を折り、拳をキュッと握ると、それを俺に向かって突き出した。



「貴方のことはとても気に入ったので、これからも仲良くしていきたいっね。それでは、また会いましょう。では」



最後にそういうと、千代女は風のように走り去っていった。



「うーん、なんだかなぁ・・・」


「せわしない忍でしたねぇ」



残された俺と新助は互いに目を合わせて苦笑する。



滝川家に代々伝わる隠された『忍の能力』。それが発揮された事実は、四つの死体と共に闇夜に消えた。









1569年。 隠していた秘密が明らかになった久助は、再び軍勢を進め、遂に掛川城に辿り着くのです。



滝川一族の忍び設定は義務だと思うのです・・・。ということで忍勢との初絡み回。


忍の家の生まれで、武士でもある滝川一益。本当にロマンがありますよね。



本文中で語られている「段蔵の弟子」はオリキャラですが、創作物語ですし、久助も新助君もほぼオリキャラですし今更ですよね! 



次回はようやく掛川城に到達します。ご期待ください。



追記:明日は飲み会があるので更新お休みします。申し訳ないです。

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