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ドラゴン様の巣を興せ!  作者: 三流ろっく
第四章 ドラゴン様とヴェルキアの懐剣
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第四十五話 ドラゴン様と山の変化

 我らが巣へ群れを移動させる事を決定した種はグレムリン、ワーム、キャタピラ、インプの四種。

 現在その受け入れの為の改造工事に取り掛かっているのだが、キャタピラは植物の多い環境が生態に適しているらしい。

 その植物はゾンビ化していても良いのだろうか?

 丁度、ランランが壁中によくわからない蔦を張り巡らせている部屋があるのだが。


 残る三種。山の最大勢力であるポチ神が纏めるコボルト種にはのっけから拒否され、オークとノール種は未だ保留中である。

 そして本日、その中の一種が朝早くから巣を訪ねてきた。


「よう。肩の矢傷は良いのか?」

「あの程度。ノールにとっては大した傷ではない」


 高い掠れ声。灰色の毛並みに黒い斑点。

 意外や意外。ノールの長である。

 コイツと良好な関係を築いた記憶は無いのだが、供も連れず巣に単身でやってくるとは良い度胸である。別にどうこうしてやるつもりも無いが。

 ギラついた目を彷徨かせて鼻をすんすん鳴らしている辺り、一応警戒はしているのだろうか。


「で、何の用だ?」

「貴様がそれを聞くのか。我は貴様の言葉に従ったまでだぞ」


 はて? 俺の言葉とな。


「ドラゴンの巣に来いと、貴様が言ったのでは無いか」

「む。確かに言ったが、本当にその用件で来るとは……」

「何だと? あれは我らを冷やかしておったとでも言うのか?」

「お待たせ致しました。お茶をどうぞ」


 長が眼光を放ったが、登場した湯呑みに視線を奪われた。

 湯気のたったそれに、むぅ? と唸りながら鼻をすんすん鳴らしている。

 和風の茶が珍しいのだろうか。確かに狐娘とバァさんのトコ以外で出てくる所を見た事は無いが。


「お前らは否定的だっただろうが。まさか訪ねて来るとは思わなかったんだ」

「おう。あの時は馬鹿にした提案だとしか思わなかったが、先日目にした人族の力は侮り難いものであった。あれ以来、群れの中で色々な意見が出てな」


 あぁ。良いようにやられていたな。とは言わないでおこう。

 それでコイツらの目が覚めたのなら、ナントカ村の勇者様に感謝だ。


「それに、竜はともかく貴様は信用出来そうだ」

「俺が? 何で?」

「惚けるな。我らが貴様を襲おうとしたにも関わらず、貴様は身を挺して人族を追い払ったでは無いか。そこに感謝を感じねば、それはノールでは無い」

「あー……」


 あれね。

 実は助ける気持ちなんか微塵も無くて、面倒事を遠ざける為にやったんだが……。

 うん。これも言わないでおこう。

 しかし、ハイエナってのは獲物を横取りしたりするイメージがあるからあまり良い印象を持っていなかったのだが、このノールは義を弁えているようだな。

 第一印象は最悪だったが。

 もしかしたら元いた世界のハイエナも、それほど悪い奴らでは無かったのかもしれない。


「あの姿に心を打たれた群れの者も多いぞ。我もその一匹だ」


 ニヤァと口端を吊り上げる長。ノール種の笑顔だろうか。ちょっと怖い。


「俺を慕ってくれるのは嬉しいが、巣に来るからにはゴシュジンに従ってもらうぞ」

「ゴシュジン?」

「あぁ、スマン。ドラゴン様の事だ」

「ふむ。それはドラゴン次第だ。我らの上に立つからにはそれなりの器量を示してもらわねばな」


 些か不安な返答である。

 まぁ、ゴシュジンを知れば不満を持つ事もあるまい。

 なんにせよ、あの一件が良い方向に転がってくれたのは幸運だ。

 これもミーアの、不幸を緩和する力とやらのおかげだろうか。

 さて、ノールが片付いたのなら後はオーク族か。

 雌を見境なく襲う彼らをどう受け入れるかが最後の懸念だな。



◇◇◇◇◇



 もう、一月ほど前になるだろうか。

 はた迷惑な土の四天王が、この山の廃村にゾンビを彷徨かせていた事があった。

 新たに来た奴隷の内一名は狐娘の手伝いに。他の者はその廃村で暮らしてもらっている。

 と、言うのも、彼らはどうにも魔物が苦手なようなのだ。いや、人間としては普通の事なのかもしれないが。

 エリザベスが出てはひっくり返り、リザードに出くわせばマラソンが始まる。

 これから更に魔物が増える予定である我らが巣では、彼らが生活していくには難しいようだったのだ。


「よう。捗ってるか?」

「りゅ、りゅりゅりゅ、竜の従者様!」


 へへぇ。と作業を止めて平伏す一同。

 気分は黄門様である。実際こうまでされると、あまり良い気分ではないが。


「皆の者。ご苦労ご苦労っすよ」


 対して、一人だけ魔物相手にでも馴れ馴れしい為、巣で働いている垂れ耳娘は実に気分が良さそうだ。

 コイツらはここで耕作をしてもらいながら、元々の建物を復興してもらっている所だ。

 現在はこの廃村のど真ん中にある建物を何とかかんとか修理して使っている。大きさから見て村長か誰か、お偉いさんの家だったのだろう。


「アタシがいなくて寂しかったんじゃないっすか?」

「ふん。そんな訳無いだろうが」

「ふーん。まだ土をならしてるところっすか。一番しんどい時っすねぇ」

「まぁな。だが、土弄りに慣れた物が多いからな。それなりには順調だ」

「そりゃ良かった。便りにしてるぞ」

「りゅりゅりゅ竜の従者様! あああ、有り難きお言葉でございますぁぁっ!」


 おい。さっきまで普通に喋ってただろ。コントか。

 相変わらず会話にならんなと思いながら、垂れ耳娘に食事を渡して俺は離れる事にする。

 ここは後々人の集まる村になればと思っている。

 ペタの村を見れば、ドラゴン様の集客力は疑う余地も無い。

 そのペタの村も巣からは遠く、往復すれば日が暮れるほどである。

 しかし、この場所からならば巣まで一時間ほどの距離だ。村が出来れば、どちらに人が集まるかは明白であろう。


 今はまだ日々の糧に追われ畑を耕しているが、それが終われば次は宿。幸い傷みの少ない建物も多々あるので、それを直して貸し与える事も可能だ。

 宿泊施設さえあれば人は集まる。あんな何も無いペタでさえ人が集まっているのだから。

 その後は店を出し娯楽を増やし、金の落としやすい環境を整えてやる。

 先日ギルドを通して国に宛てた手紙にまだ返事は無いが、成功すればこの山の上部は国から独立した治外法権。税も無いからやりたい放題だ。

 ペタに吸われた利益。この竜の村で、その全てを奪い返してくれる。


「なに怖い顔してるんだマヒロ」

「む?」


 空想から意識を戻すと、足元にワンコ三兄弟がいた。

 こんな近くに来るまで気付かないとは、我ながら隙だらけである。


「怖い顔してたか?」

「うん。なんか……ふはははははぁって笑いそうな顔だった」


 それは悪そうだ。


「お前らはまた冒険者狩りか?」

「狩りじゃないぞ。パトロールだ。でも、今日は一人も山に入って無いみたいなんだよな」


 ふむ。昨日国に出した脅迫状のせいかもしれんな。

 国が山に入る事を禁止したのかもしれん。そのまま、この山がゴシュジンのものになって、騎士団での討伐も中止になれば良いのだが。


「マヒロ! マヒロ!」「マヒロだ! わふぅ!」


 弟犬達が興奮気味に舌を出してすがりつくように引っ付いてくる。

 ふむ。えらく懐かれたものだな。マヒロでは無いが。


「今日は無いの!?」「ほねっ!」


 骨かよ。勘違いしたじゃないか。

 ちょっと気恥ずかしさを覚えながら肩上の不思議空間に手を突っ込むと、三匹の耳がピクピクと動いた。

 気恥ずかしさの仕返しに、そのまま焦らしてみる。

 次男と三男の尻尾が掛け時計のように振られる。

 一秒、二秒。時計があれば、針の音が響きそうな静寂が続く。


「早くしろよ!」


 怒られた。

 そして、彼らのお目当ての物を取り出し、照準を定めた大樹に投げた刹那である。


「わふぅん!」「あっ、カエデ姉ズルい!」


 犬のしなやかな跳躍を見た。

 どうやら次男では無く長女であったらしいワンコが、骨をキャッチしたのである。

 それは、紛う事無き投げた刹那である。魔物の反射神経を舐めていた。


「……痛っ!? うむぉ?」


 なんだこれは? 右手が痛い。なんで痛い?

 手首から先が犬の口内にある。手首より先を魔力強化。いや、なんだこれは?


「カエデッ!? 何してるんだそれはマヒロの手……っ!? うわ、何か出てきた!」

「むっ、魔物! 主殿を離せ!」

「わふわふ」「ズルい! ズルいぃ!」


 思わず展開した『聖棺人形(アークパペット)』が、ワンコ長女に手を伸ばす。が、超遅い。まるでスローモーション。このダメ魔宝。


「離せぇぇっ!」

「わふーん」


 噛みつかれた手をぶんぶんと振ってみるが、この長女。スッポンの如く。全く離れる気はないらしい。

 むしろ遊んでいるつもりなのか楽しんでいる節すらある。


「マヒロ! カエデ姉ズルしたよ! もう一回! もう一回!」 


 末っ子がキャンキャン吠えている。

 もう一回。なるほど。そうか。

 もう一本投げればこのスッポン犬も気を取られて、手を離すかもしれない。

 肩上の不思議空間から追加の骨を取り出し、その途端である。


「わうん!」

「あっ、モミジ!」


 犬のしなやかな跳躍を見た。


「おおおおおぉぉぉいッ!?」


 左手の手首より先が、ポチ神の末っ子になっていた。

 今度は手から骨を離してすらいない内に。完全に俺の手ごと狙っていやがった。なんて貪欲な一族だ。


 その後、騒ぎを聞き付けてやってきたポチ神によって二匹は引き剥がされる事になるのだが、俺の手には大きな犬の歯形が残る事となった。

 無邪気とは怖いものである。


「ゴメン……じゃれたかっただけなの……」

「甘噛みのつもりだったのに……マヒロがそんなに弱いなんて知らなくて……ゴメンね」


 それは、とても納得のいかない謝罪であった。

 人間は体だけで無く心も繊細なのだが、無邪気とは本当に怖い。

 もう少し体を鍛えよう。



―To be continued―


双子の月 二十八日


収支報告 

      61,000G 元資金

-     15,000G グレムリン仮説部屋増設費

-     10,000G インプ仮説部屋増設

-     40,000G ワーム仮説部屋増設

-       3,000G 生活雑費

──────────

資産     13,000G

借金 111,251,000G


経過報告


人員      4名

来客      0名

奴隷       13名

魔物

高階梯     3匹

戦闘員      30匹

非戦闘員     17匹


設備

決闘の間、待機小部屋、第二待機部屋、リザードマンの大部屋、湖の間、調理設備、上下水道、宝箱(×12)、風呂、ランランの間


クエスト 魔女文字翻訳(40/50)

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