食いしん坊がゆく(千文字お題小説)
お借りしたお題は「散策」「ドーナツ」「川」です。
松子は唐揚げ専門店に勤める元フリーターである。
自分でも信じられないくらい激痩せし、今まで生きて来た中で一番仕事に打ち込んでいる。
それもこれも、辛い恋愛をしたからだ。
告白する事なくその恋は終わったと思った。
(全ては私の粗忽さが招いたのよ。自業自得を絵に描いたような人生だわ)
松子はそんな時、親友の光子とランチをする。
手厳しい事をズケズケと言う光子は松子にとって誰にも代えがたい存在である。
「バカじゃないの」
話を聞き終わった光子が言った。松子は呆気に取られた。すると光子は、
「考えてもみなさいよ。恋が終わったって言ったけど、終わるどころか、始まってもいなかったんじゃない?」
光子は大皿からペペロンチーノを取り分けながら言った。
「あんたの性格じゃ、そのお医者さんにもう一度アタックするなんてできないだろうから、新しい恋を探しなさいよ。川沿いにあるサイクリングロードに行けば、イケメン釣り放題よ」
光子は舌なめずりする。松子はそんな彼女を見て溜息を吐いた。
「相変わらず超肉食系ね、あんたは」
すると光子はフッと笑って、
「あんたの真似したと思われると癪なんだけど、私もロードバイクを買ったのよ」
松子は目を見開いた。
「そんなにイケメン祭なの?」
光子は肉食系だが、下調べを怠らないデータ派でもあるのだ。
二人はランチを終えると、サイクリングロードに向かった。
そこはランチをしたイタリアンレストランから十数キロ離れた所だったので、松子は息が上がってしまった。
それに反して光子は涼しい顔をしている。
(こいつ、結構乗ってるわね)
松子は侮れないと思った。
「いないじゃない?」
ところが、そこには子供連れの夫婦しかいなかった。
確かに「イケメン祭」でもあるのだが、さすがに不倫をしたいとは思わない松子である。
「時間帯が悪かったのね。どこかで時間を潰してもう一度来ましょうか」
小腹が空いた二人は川沿いの道路の反対側にあるドーナツ屋でドーナツを買い、それを頬張りながら、舗道を散策した。
「この辺にもイケメンが多いわね」
早速光子がレーダーを全開にした。松子は半目になった。
しかし、歩いているイケメンは皆女性を連れていた。
「女二人で歩いているの、私らだけだね」
さすがの光子も項垂れてしまった。
「それもまたいいんじゃない?」
松子が微笑んで言うと、光子は、
「そっちに走るつもり? 私は嫌だからね!」
そんな返しが来るとは思わなかった松子は唖然とした。
そんなことでした。




