第21話 全くあの人は…! by従者の二人
「トーカ、強い、ね…」
「何年も戦っているからな、わっちは」
ここは最北にある森の奥地。のちに「銀風の森」、そして「弱者を守る地」と呼ばれる森にうつ伏せに倒れている少女とそれを立って見ている女性がいた。一人は銀髪に獣の耳と尻尾が生えた少女。この森の異界の新たな管理者「ミーシャ」。もう一人は明らかにこの辺りの出身ではない顔立ちと黒髪の女性。動く屍が集う異界「死屍累々の廃村」の管理者「雨宮刀華」。この二人にはある共通点がある。それは
「いつ帰ってくるんだろう、ユート」
「わっちには答えられない質問だよ、主殿がいつ帰ってくるかなんて」
一人の男に仕えていることだ。しかしその男「南海優人」は数日前にこの森を出ていた、一つの書置きを残して。その書置きには「しばらく『一人』旅に出ます。探さないでください」と書いてあった。これを見た二人は「捨てられた」と涙が出そうになった。………が良く見ると小さな字で「形式美でやってみました」と書いてあるのを見て涙が引っ込んだ。だけじゃなく帰って来たらオシオキすると二人は決めていた。自業自得である。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ブァクション!!………うぅ」
風邪でも引いたか…。何か悪寒もするし…。
そんな事を考えながら俺はある階段を降りていた。何故降りているかを話す前にここがどこか、そして降りた先に何があるかを話すとしよう。
ここはラスペルのある教会の地下へ向かう階段。背信者や犯罪者を捕まえた際に逃がさないようにする牢獄がある。………ただしその牢獄は普通じゃない。都市伝説みたいな話だが一度入ったら二度と出ることは叶わないらしい。
まぁ、そのおかげでこの町では昔から続いている宗教―――今でも使われる貨幣を作った国で重要視された宗教の事だ―――を蔑ろにする人はいないし、犯罪も基本的には無い。今では使われることの無い場所だ。それだけだったら俺も「へぇ~」だけで済ますところだ。………噂が流れ始めた時期が時期じゃなければ。
この牢獄の噂が出来始めた時期は魔物がある程度減った頃、つまり魔人が封印される時期と重なるのだ。さらにある罪人が閉じ込められていた。その罪人の罪は「人々を惑わし魔物を操り襲わせた」とあった。………異議ありと言いたい。はっきり言って魔物が操れたらあの人魔大戦―――魔物の大量発生事件のことだ。世間ではそう言うらしい―――はもっと被害を抑えられたはずだ。そしてそんなことはすでに刀華に聞いている。答えは
「そんなことが出来たらあの戦いでわっちらは苦労しなかったよ」
とのこと。つまり魔人にも出来ないことが、たかが人間に出来るのかと言うことだ。俺の答えはNOだ。ありえない、なら何でありえない罪を着せられているのか。俺の推測は罪人は魔人で恐れられていたから関わらないように、そしてたぶん人の上に立たせないために。何で魔人って分かるか?実はもう一つ気になる情報があったのだ。それはその魔人(仮)を断罪するために数人の信者がこの地下に入って行った。……………え、どうなったか?
カエッテコナカッタトシカカカレテナカッタナ。
このことも一応予想があってたぶんその罪人が関係してるんじゃないかと思ったのだ。
「っと着いたな」
いつの間にか階段を降り切り目の前には木製の扉があった。そして何か書かれており読んでみると
この扉の奥に進む者に告げる。日の光を浴びることは叶わぬ。故に全ての希望を捨てよ。
…と書いてあった。………怖いです、ものすごく。
俺は多少腰が引けながらも扉を開け、中に入る。
「………真っ暗だな」
恐る恐る先に進む。その時!
ギイイィィ……バタンッ!
「は?」
扉が一人でに閉まってしまった。……って、はぁ!?
俺は急いで扉の前まで戻り開けようとするが
ガチャガチャ!ガチャガチャガチャ!!
扉は開かなかった。次の策として魔法を使って開けるため呪文を唱えるが
「………アレ?何でだ」
意味がなかった。最後の手段として状況を理解するためにメガネを取る。しかし
「……………」
何も反応しなかった。絶体絶命である。
「………あ、まさか」
この状況を俺は知っていた。まぁ知ってるだけだが。たぶんだがこの辺りは「封魔域」なんだろう。
「封魔域」とは簡単に言えば「魔法の使えない地域」のことだ。俺が最も近づくべきではない場所である。………なのに。
「やっちまった…」
まともに戦えなくなってしまった。………まぁ一応他の手段のあるにはあるが心細いのは事実だ。そんな事を考えているとどこからか何か甘い香りがしてきた。それに気が付くと
「うっ…ねむ……なん、で………」
急に眠気に襲われ、いつの間にか夢に堕ちて行った。
人を堕落させる大罪の夢に




