第19話 魔人問答
「……なるほどな」
「と、言ってもまだ始めたばかりだけど」
場所変わってここは「死屍累々の廃村」のとある家の一室。俺たちは結界「黄泉平坂」を突破して地上に戻ってきた。どうやったか?まぁ、俺の最大の切り札の正体に関係するからノーコメントで。強いて言えば「情報操作」とだけ言っておく。
「で、どうする?俺は封印をどうにかすればそれで満足なんだけど」
「……………」
「ここで静かに暮らすって言うなら何もしないし」
俺はそう言って返事を待った。
はっきり言って俺は本人が納得しているならそのままでも良いと思ってる。その時は静かに去るだけだ。まぁテキトーに遊びには来るだろうけど。
「…優人。何故君は魔人と係わる?」
「は?何故と言われても」
「人間の敵になるような行動をする理由が知りたいんだ」
それを聞いて少し考える。はっきりと私怨に駆られた、と言いかけたが今考えるとただ後押ししただけに感じた。そこであの時に感じたことを思い出しゆっくりを話し始めた。
「んー…。まずミーシャを救いたかった。何で関係のないこの子まで封印されなきゃいけないんだ、って思ったんだ。それにレアンに会って魔人なんて人間と何も変わらないと思ったんだ。…それでだな。魔人と係わるって決めたのは」
「…もし、だ。魔人が裏切ったら?恩を仇で返されたら?そして」
ミーシャが魔人に殺されたら?と、雨宮は聞いてきた。
つまり先のことを考えて行動しているのか?ってことを聞きたいのか。
俺はそう推測して返答する。
「裏切ったり、恩を仇で返されたらもう敵だから容赦しない。………だけどミーシャが同じ魔人に殺されたら、って質問は答えられない」
「…何故?」
「そんなん決まってる」
そう言って俺は答えを示す。
「俺が必ず守るからな」
はっきり言って魔人のことを甘く見ていた。その結果がミーシャの怪我だ。今度また同じことを繰り返さないための誓いだ。………まぁ正確には暁の光の副作用だけど。
詳しく言うと副作用は人により様々だからはっきりと「コレ」と言ったものは言えない。何日も眠る場合もあれば、しばらくの間何も口にしたくない―――出来ないとも言うけど―――と言ったものまで千差万別だ。副作用がないことが副作用だったりすることもあるぐらいだし。で、俺の副作用だがたぶん「内臓にダメージ」と言ったところだ。まだ治ってないから、せきすると血が出て来るし…。
しばらく固形食はダメだなー、と考えていると雨宮がとんでもないことを言った。
「わっちも同じように守ってくれるのか?」
「……………」
え?守るって言った方が、良いんだよな?でも俺より強いよな?あと下手な答え方をしたら(現代的日本人として)ヤバイことになる気がする…。
無言の間に(この間約1.5秒)そう思った俺はこう返事をした。
「当然だ。………仲間としてな」
「最後の一言が物凄く無粋だと思うぞ」
俺は明後日の方向を見て聞かなかったことにした。ウン、ボクナニモキイテナイ。
まぁとにかくこの分だと
「俺と一緒に来るってことで良いんだな?」
「当然だ、受けた恩は返さないとな。それに…」
「それに?」
俺は雨宮に言葉の続きを聞いた。
「他の魔人のことも気掛かりだからな」
「…なるほどな~」
雨宮は仮面を着けている間のことを覚えていなかった。もし他の魔人も同じ状態だとしたら封印以前に何とかしなくちゃいけない。それにレアンのこともある。一度戻るのだし墓参りもしたいだろう。
「じゃあ呪いをかけるから証はどこが良い?」
「そうだな…。右肩に頼む」
「了解。袖をまくって」
「ん…」
雨宮は袖を肩までまくった。俺は病的に白い肩に触れた。
「……………」
「あの、まだか?」
「あ、ゴメン。肌がきれいだったから」
「………ありが、とう」
あらあら照れちゃって、かわ………ちょっ!?
「にらむなよ!」
「なら早くしてくれ!」
「あいさー(棒読み)」
今度は手が出そうなので俺は詠唱を始めた。
「『右手に集うは黒の力。我と此の者に久遠の契りを此処に示す』」
「ッ!?」
雨宮が急に震え出した。…でも詠唱を続ける。止めたらやり直しだからな。
「『我と此の者を幾千と別つとも必ず巡り会うことを我が魂に誓う』」
「~~~~~~~ッ!!!」
詠唱を終えて手を放すと黒色の桜の花の紋章があった。
「おっし、できた!………んで、何でそんな震えてんだ?」
「……………」
返事が無い。う~ん、何かデジャヴ?
そんなことを思っていると雨宮は俺に抱き着いてきた。
「おい、どうした?あと顔があか…おぉう…」
全身チキン肌になった。何でかって?舐められたからだよ…。首筋を…。
今度は俺が震えていると急に首に痛みが走った。って!?
「ちょ!何してんの!?」
「ゴクッゴクッゴクッ!」
「こらこらこら!!!」
飲んでやがる!俺の血を飲んでやがる!吸血鬼かよ!?
俺は急いで引き離した。そして詠唱も無しに治療を始めた(始めてしまったとも言う)。どうやってやったかは一切分からなかった。俺自身の七不思議の一つである。
とにかく無くなった血は戻らないがさらに血が流れることは済んだ。…がまだ終わってなかった。いやこっからが始まりだったとも言えるが。
「おい、その手は一体なんだ?」
「……………」
「あとどうして俺を押し倒してる?」
「……………」
「おい、マテ!その手を離せ!!ちょ、ホントに待って!!」
「……………」
「お願いだから!!ちょ!やめ…!!」
アッーーーーーーーーーー!!!!!!




