第10話 運命の日‐Ⅱ
「ウソだろ…」
「……………」
この森を見渡せる高所が一ヶ所あり、俺たちはそこにいた。そして俺たちは見てしまった。
レアンが侵入者によって殺された瞬間を。
「おいおい…。どーするよ、ミーシャ?………ミーシャ?」
不審に思い隣を見る。…いねぇ。
急いで瞳の封をしてるメガネを取る。そしてもう一度見下ろすと………いた。
レアンの元の向かっているようだ。……気持ちは分からんでもないけど
「突っ走って暴走しないでくれよ…」
そう思った。俺はどうなのか?ちょっとだけやることアリなのでここに留まってます。
せっかく封を解いたんだ。奴らの情報を、何をするためにここに来たのか、調べる。
…………………………。(解析中)
………なるほどな~。人間らしい理由だな。………けど。
「だからって、しゃしゃり出られてもな…」
しかもこいつら、最低最悪の手段を使ってきたぞ。こればっかりは許すことは出来ない。
だから俺は
「ミーシャ、返り討ちにされんなよ」
戦場跡に向かうことにした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ゴキリッ! ドサッ
「…何者だ」
「……………」
その戦場には一人の少女と五人の騎士らしき者がいた。
「少女よ、何をしたか分かっているのか?」
「……………」
少女、ミーシャは答えない。
「おい、聞いて…」
「………イ」
「…少女よ、今何と言った?」
ミーシャは狂ったようにもう一度言う
―――ウルサイ、シネ―――
と。その言葉に対し騎士の一人は
「騎士を殺したのだ。安らかに死ねると思うなよ」
その言葉を最後に、「氷狼」の愛娘の初陣が
敵討ちと言う名の、初陣が始まった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
だ~!あのアホ!やっぱ暴走してる!!
近くに着いたときその凄惨な戦場を見てそう思った。理性で抑え付けなければ絶叫してたところだ。
死屍累々、その言葉が頭に浮かんだ。実際にそうだったからだ。
地に伏している者は死んで―――断定できるのは首が無かったり、物理的に不可能な方向に曲がっているからだ。それに加え瞳で調べた情報は虚偽出来ないから間違い無い。―――いる。今立っているのはミーシャと騎士二人の、計三人だ。ここまで一人で殺したのだろう。けどここまでだ。何故なら
「それだけ血が流れればこちらの勝ちだ」
………そう言うことだ。傷自体は全部浅いけどその数が問題だった。
俺と戦ってたとは思えないほど怪我しているのだ。攻撃に特化した影響だろう。
「全く…。狂戦士か、アイツは…」
そうつぶやいた。このまま死なれてたら困る、と言うより俺が狂戦士になりかねないのでちょっかいを出すことにした。
「さて切り札を使うのは気が引けるから普通にやるか『我が求めしは赤と青を内包する力』」
俺は手の平を合わせそのまま詠唱を続ける。
「『姿を変えし青は全てを隠す』」
詠唱が終わった瞬間、辺りに霧が立ち込めた。俺を除いた全員が動きを止めたことを確認すると俺はミーシャに近づき
「このバカッ!」
気付けの一発を与えた。具体的には拳骨だ。女子だからとか関係ない。
「………ユート、何で…」
「『怒るの』か?だからバカって言ったんだ!とりあえずレアン連れて下がるぞ」
「でも!」
「さ が る ぞ !」
「…はい」
ミーシャを無理矢理黙らせたあと俺たちは下がることにした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「この辺まで来れば大丈夫だろ。ミーシャ、怪我は大丈夫か?」
「…ユートが手当てしたからだいじょうぶ。それより頭がクラクラする」
「貧血だな、それ」
ミーシャにそう言い、俺はレアンの遺体を降ろし座った。ミーシャも腰を下ろす。
「ユート、どうするの?」
「どうするって何が?」
「あいつら」
「あいつら」ってたぶんあの騎士のことだろう。そう予想して答える。
「俺が何とかするしかないだろう。霧はまだ晴れてないから手はある」
「…わたしは、ゆるせない」
「だからまた戦わせろって?ふざけんなよ」
俺は自分の思いをそのままミーシャにぶつける。
「レアンが殺された。それでお前が怒る、憎むは何も言わない。けどそれで捨て身の攻撃を仕掛けるのは違うぞ」
「……………」
「残された俺の気持ちを考えてくれ」
「………ごめん」
どうやら俺の思いは届いたようだった。これで今は動かないでくれるだろう。あとは
「決着を、つけるか」
俺が出向くだけだ。だけどそれはミーシャに引き止められる。
「ユートまって」
「?」
「なら、ユートが死んだら、残されるわたしはどうすればいいの?」
「……………」
予想通り言われた。この答えを返すことは出来ない。返したらミーシャを戦わせない理由が無くなるからだ。
だから俺は
「ごめん、そろそろ時間だ」
「時間?何をい、って…」
ドサッ…
手当の際に遅行性の麻痺毒を仕込んだ。こうなることは予想していたからだ。…と言っても最終手段だったんだけど。
「引き止めなかったら解毒してた。……まぁ言い訳なんだけどさ、あいつらを野放しにしたら大変なことになるんだ。だから、行かなくちゃいけない」
そう言って俺は立ち上がった。そしてもう一度
「ごめん」
謝った。それが自己満足だと分かっていても、しなくちゃいけないと思ったから。




