第9話 運命の日‐Ⅰ
其処は白と黒しかない世界だった。
その世界のある森に一人の少女がいた。
その少女は異質だった。
身なりが森に入るのには軽装だったがそれが原因ではない。
その少女は普通ではなかった。
何故なら獣の耳を持っていたから。
何故ならその髪の色と同じ尻尾を持っていたから。
故に少女は「人間」とは呼ばれず、
「魔人」と呼ばれた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ハァ…ハァ…ハァ…」
はしる、はしる、はしる。
この白と黒の世界を終わらせるために、あの人に勝つために、わたしは走る。どこにいるかは臭いでもう分かってる。けどその思いを笑うかのように
「ッ!」
風が吹き、わたしのカラダをきずつける。だけど動くことだけはやめない。やめたら最後
「フッ!」
ドコンッ!!!
一気にしとめられる。今回は火球だったみたいだけどわたしが負けることに変わりはない。
わたしは急いで走る。もうすぐたどりつくから。あの人はあせってるようで火球の雨をふらせる。………けど。
「………これぐらいよけれる」
走りながらぜんぶかわす。そしてあの人をみつけた。わたしは右手をオオカミのツメに変える。そして
「ヤァ!!」
あの人を右手でつらぬいた。
「…これでわたしの、勝ち」
「…甘いな」
その一言で気がついた。わたしがつらぬいたのは
「…木の、みき」
「やけにこーゆー手に引っかかるよな。『我が求めるは黒が混ざりし停滞する青き力』」
いやな予感がしてにげようとするけどつらぬいた右手をしっかりはまってしまっていて無理だった。
「『時をも縛る鎖を我が敵に与えよ』―――停滞スル世界―――」
魔法が発動してわたしはカラダもココロも全て止まってしまった。このとき分かったことはたった一つ。
わたしは負けてしまったことだけだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「おーい!起きろー!」
………ダメだこりゃ。もうしばらく待つか。「あそこ」で死ぬとこっちで起きるのに時間かかるからな。
俺とミーシャはついさっき模擬戦をしていた。今回で4勝6敗ってところだ。ミーシャはすばしっこいから魔法を当てんのが難しい。策謀とか苦手だから真正面から行きたいんだけどな…。
「………る?」
「おはよう」
「…おはよ」
ミーシャがまだ寝ぼけてるようだから俺の一人語りでも聞いてくれ。
魔法を始めて使ってからだいたい1ヶ月。ようやくある程度魔法を使えるようになった。そこで出された課題はミーシャとの実戦だった。なんでも互いに苦手とするタイプだから良い訓練になるとか。向こうは知らんけど俺は良い訓練になってる。
他には………そうだ、文字については及第点をもらった。とりあえず名前は書けるから大丈夫だろう、とのこと。
最後に瞳に付いてだな。普段はメガネを掛けて分析・解析能力だけ封をしてある。集中して見ようとすると勝手に使っちまうんだよ。ちなみに今現在だったら例の禁書、ある程度だったら理解出来るようになった。比較としてレアンやミーシャのような人?の能力や今までの人生を知れる。………と言っても俺と会うまでのことしか視てないからそれ以上知らないけど。
「ふぁ……。ユート!」
「何だよ?」
さて完全に起きたようだからここで一人語りはおしまいだな。
「アレはずるい、ぜんぜん分からなかった」
「そりゃそうだろう。あれは戦いなんだから」
ちなみにいつ仕掛けたかと言うと火球の雨を降らしたときにちょちょっと細工したのだ。何をしたかは企業秘密なので教えない。
「……でも『あそこ』なら、死ぬことがないから本気で戦える」
「その代わり死が遠いものになりかねないけどな」
「るぅ…」
そんなカワイイ顔されてもなぁ…。
そうそうさっきから言ってる「あそこ」とは………なんて言えばいいんだろ?えーっとアレだ!ゲームって言えばいいのか?とにかくそんな感じ。
………え?テキトー過ぎるからちゃんと説明しろ?しゃねぇなぁ…。
あの世界は俺が創った特殊な世界で魔法名「白黒ワールド」ってモノだ。例えとしてゲームと言ったのはあの世界の最大の特徴が「死が存在しない」からだ。そのおかげで実戦と言っても要所要所で手を抜く必要が無い。………まぁ反対に命の見方を軽くしかねないって欠点があるけど。
ちなみに白と黒しか色が無いのは「非現実である」と言った意識が必要だったから。一度カラーでやってみたけど現実なのか、自分が創った世界なのか分からなくなったからなぁ…。
「……る?」
「どうした?」
「また、だれか森に入って来た」
ミーシャはレアンからこの森を任される立場にある。だからある程度だけど森の変化に気付くことが出来る。
…ってまた!?
「数日前も入ってこなかったっけ?」
「母さんが相手したから、何も知らないけど…」
「まぁ例の如く様子を見に行ってみようぜ」
「うん」
そして俺たちはある場所に向かうことにした。
そして俺は知ることになる。人間の傲慢さと自分の野望に。
この話はⅠ・Ⅱ・Ⅲで繋がっています。




