攻めの前傾姿勢
9/17追記
ここ最近、ロドくんは何人もの女の子と会っていたらしい。
あたしの知らない間に。あたしの知らない人と。あちこちで。
いやいいけど。ロドくんはあくまでししょーの知り合いであって、
あたしは、そのししょーの教え子というだけだし。
ししょーの口利きで、少し一緒に冒険者活動をしているだけだし。
同い年の知り合いってだけだし。…なんかちょっと悔しい。
色々考えながら、定期的な薬草納品で冒険者組合の建物へ入る。
あ。
あの子達は確かロドくんと同じ孤児院の妹分だっけ?
ハーフエルフの女の子達がいる。冒険者もやってるんだったっけ。
向こうもこっちに気づいて寄ってきた。
「こんにちはです、ラーモさん」
「こんにちは、えーと…マヘンタちゃんとアズールちゃん?」
「あはは、残念。アマリリオとヴェルデでした」
やっぱり全然区別がつかない。ロドくんはなんで区別が付くの?
彼女達、ロドくんの妹分のハーフエルフはなんと十二人もいる。
年齢は全員、あたしやロドくんより半年下の十一歳のはず。
みんな王立中央学院の学生で、一代騎士になっているらしい。
体内魔素の多いハーフエルフらしく、戦闘は魔術中心みたい。
あたしには、いや他の人達にもらしいけど全く区別がつかない。
背丈も顔つきも表情も同じに見えるし、声も同じに聞こえる。
せめて髪型が違えばまだ助かるんだけど、みんな揃えている。
でも十二つ子?というのかな、でもないのだそうな。
彼女達いわく合わせているのは「わざと」やっているらしい。
ロドくん以外に誰が誰なのかを見分けられても嫌だし、と。
この子達も絶対ロドくん大好きなんだろうなあ。
そう言えば知ってるのかな?女の子達と会っていたのは。
「折角なので、ちょっとお話しませんか?」
あ、話を聞きたいと思っていたら先に言われてしまった。
◆
薬草を納品したあと、冒険者組合の食堂へ彼女達と一緒に入る。
早速女の子達と会っていた事を知っているか確認してみたら、
「ああ、王国から頼まれたっていうアレですよね…」
との答えが返ってきた。二人とも諦めたような顔をしている。
会っていたのは知ってたみたいだけど、不満ではあるんだなあ。
「まあ依頼元考えたら仕方ないのは分かるんですけどね。
何せ王国内務局と財務局の合同特別調査依頼らしいので。
ただ、なんでよりによって若い女の子ばっかりなのかなあと。
そこはこちらでも問い詰めたんですけど、偶然だとか」
すごく不満だったみたいだ。そうだよ、なんで女の子だけなの。
「ロド兄は学院でも妙に女の子達と縁があるんです。
なのでどうも気が気じゃなくてですね。
あたし達みんな、卒業したらロド兄と結婚するじゃないですか?
これだけ未来の奥さんいて、まだ足りないのかよーって」
うんうん。うん?みんな結婚?あたし達?十二人と?
「え、結婚?」
思わず声に出てしまった。
「ああ、ロド兄はまだこれ知らないんですけどね。
あたし達十二人と、同期の先輩方二人と、卒業生二人と、
今のところその十六人で奥さん未来会議してるんです。
王国って貴族の一夫多妻が普通な国じゃないですか。
で、ロド兄も男爵だから奥さん大勢いてもおかしくないし。
だったら割り切ってみんなで結婚しちゃおうよ、って話で。
それで新居どこにしようかとか、子供何人作ろうかとか、
将来について語り合っているんですよ。
で、ラーモさんも仲良いし多分加入するのかなーと思って。
それを確認したかったんですよ」
なんだかすごい話が持ち上がっているんだけど。
ロドくん本当に学院内で女の子達となにやってるの?
確かに上位貴族の人は一夫多妻とかその逆とかも多いと聞いた。
ロドくんは男爵だけど上位貴族と同じぐらいのお金持ちらしいし。
だから奥さんが多くても暮らしは別に大丈夫なんだろうけど、
でも政略結婚でなくて恋愛寄りみたいなんだけど。
というか、もうそれでいいの?いいのかな?いいかも?
◆
この時あたしは雰囲気に呑まれて考えが麻痺していたんだと思う。
話はどんどん進んでなし崩しに奥さん未来会議に加入していた。
集まった中には上級貴族のお嬢様達もいて、御自身達も爵位持ち。
表向きは将来有望なので政略結婚、という形で縁を結ぶそうだ。
全員凄い美人だけど「何言ってるの、貴女は綺麗よ」と言われる。
敵視されるかと思ったら皆さんに自然に受け入れられてしまった。
奪い合いをするよりも中に取り込んで収めるのが上級貴族、とか。
ただし王国で愛人はダメ、全員婚姻まで結ばないとと力説され、
「閨教育」という夜の生活の作法とかもあれこれ教えてもらう。
奥さん目指すなら、今後ロドくんにもっと接近しておくようにと、
彼女達からたくさん助言を受けて、籠絡作戦も色々授けられた。
折角の強力な武器があるんだから徹底的に活用しなさい、とも。
よし、ここからは攻めの姿勢だ!卒業までにロドくん陥落させる!
「むきむきの不向き」と「もっとかまえの構え」の行間。
打って出始めたのはこのせい。本人不在で全方位作戦が進行中。
言い出しっぺは大公令嬢。推進したのは公爵家令嬢。
色恋で争い合う位なら一夫多妻容認、が上級貴族の考え方。
ラーモは都市国家同盟出身なので、学院編入は出来ません。




