俺、サイキョーじゃん! 〜スキル無限蘇生を手に入れたけど、何かがおかしい〜
辺境の遺跡の中に、そのダンジョンはあった。
曰く、攻略不可能。ここから生きて帰った攻略者は一人としていないらしい。
「はーっはっは! この俺が、こんなダンジョン、ちゃちゃっと攻略してやるぜ!!」
愚かにも、剣一本だけを持ってここにやってきた男が、一人。
結果は明白。
「あ、あ……」
垂れる小便。手から滑り落ちる剣。目の前にいる、腕が100本生えた白い化け物。
「あ゙ーーーっ!!! 死にたくない───────」
グチャリ、と押しつぶされ、彼は死んだ。
『新スキル:無限蘇生』
潰れた血肉が集まり、メキメキと人の形を作っていく。骨が立ち、筋肉がまとわりつき、最後に皮が張られる。
「あ、あれ……?」
彼は、人の形をしてもう一度そこに生まれた。
「し、新スキル!? よっしゃー!!! これでもうモンスターなんて怖くねぇぜ!!」
彼は特攻を続けた。
何度も死んで、何度も生き返って。
食事がいらなくなって、睡眠がいらなくなって、痛みが無くなる。
「ははは! これならいくらでも攻略できるぜ!!」
ある日、気づいた。
「あれ……俺の体、ポリゴンになってる」
体の端っこが、ブロックになっていた。それは空間に溶けるように小さくなって行って、俺が空間と同化したみたいだ。
それをマジマジと見ているせいで、モンスターがこちらに突進してくるのに気づかなかった。
ドン!!
「うわぁ!?」
バタリ。
「……あ?」
ぶつかったモンスターが、急死した。
「……え?」
彼とぶつかった部分が、ポリゴンになって砕けている。
「え……俺、モンスターが触ると死ぬようになった!? やったー!!!」
彼は喜んだ。
「俺、サイキョーじゃん!」
ある日、壁をすり抜けた。体が粒子となっては、元の形に戻る。
「んだこれ、すげー!!」
地下の方が強いモンスターがいるから、俺はダンジョンの床を抜けて地下に潜って行った。
モンスターをぶつかるだけで倒していく。
ヤツらは総じて、病的に白い肌をしていた。まるで、日を全く浴びない人間みたいに。
どんどん深く潜っていくうちに、彼は自分の挙動に違和感を覚え始めた。
「か、体が思ったように動かねぇ……!」
勝手に動く。バグったカーソルみたいに。
「あっ」
たまたま動いた腕が、近くにいたベテランの冒険者に当たった。
「……」
冒険者は死んだ。
「……俺、バグってる?」
そこでようやく、異常に気が付いた。
思考が、おかしい。何がって、ずっと異常に気づかなかったことだ。そして、それを当然として受け入れつつある自分にも。
ずっとダンジョンに籠っていたから、肌が白くなってきた。
いつしか俺は、死ねないまま、誰にも触れられないまま。
孤独を抱えた、ダンジョン最下層の主になっていた。
『新規冒険者』
新たに部屋に入ってきた人間の頭に、そんな表示が出る。
「お前が、最下層の主!!」
そいつも、すっかり肌が白くなっていて。
「攻略不可能、って、そういうことかよ……」
最後に残った自我が零した言葉は、誰の耳にも届かずに消えた。
「お、オレ、さい、キョー!!」
やがて、意味をなさなくなった言葉が、陽の射さないダンジョンの地下深くで木霊するのだった。
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