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俺、サイキョーじゃん! 〜スキル無限蘇生を手に入れたけど、何かがおかしい〜

作者: 砂之寒天
掲載日:2026/08/10

 辺境の遺跡の中に、そのダンジョンはあった。


 曰く、攻略不可能。ここから生きて帰った攻略者は一人としていないらしい。


「はーっはっは! この俺が、こんなダンジョン、ちゃちゃっと攻略してやるぜ!!」


 愚かにも、剣一本だけを持ってここにやってきた男が、一人。


 結果は明白。


「あ、あ……」


 垂れる小便。手から滑り落ちる剣。目の前にいる、腕が100本生えた白い化け物。


「あ゙ーーーっ!!! 死にたくない───────」


 グチャリ、と押しつぶされ、彼は死んだ。


『新スキル:無限蘇生』


 潰れた血肉が集まり、メキメキと人の形を作っていく。骨が立ち、筋肉がまとわりつき、最後に皮が張られる。


「あ、あれ……?」


 彼は、人の形をしてもう一度そこに生まれた。


「し、新スキル!? よっしゃー!!! これでもうモンスターなんて怖くねぇぜ!!」


 彼は特攻を続けた。


 何度も死んで、何度も生き返って。


 食事がいらなくなって、睡眠がいらなくなって、痛みが無くなる。


「ははは! これならいくらでも攻略できるぜ!!」


 ある日、気づいた。


「あれ……俺の体、ポリゴンになってる」


 体の端っこが、ブロックになっていた。それは空間に溶けるように小さくなって行って、俺が空間と同化したみたいだ。


 それをマジマジと見ているせいで、モンスターがこちらに突進してくるのに気づかなかった。


 ドン!!


「うわぁ!?」


 バタリ。


「……あ?」


 ぶつかったモンスターが、急死した。


「……え?」


 彼とぶつかった部分が、ポリゴンになって砕けている。


「え……俺、モンスターが触ると死ぬようになった!? やったー!!!」


 彼は喜んだ。


「俺、サイキョーじゃん!」


 ある日、壁をすり抜けた。体が粒子となっては、元の形に戻る。


「んだこれ、すげー!!」


 地下の方が強いモンスターがいるから、俺はダンジョンの床を抜けて地下に潜って行った。


 モンスターをぶつかるだけで倒していく。


 ヤツらは総じて、病的に白い肌をしていた。まるで、日を全く浴びない人間みたいに。


 どんどん深く潜っていくうちに、彼は自分の挙動に違和感を覚え始めた。


「か、体が思ったように動かねぇ……!」


 勝手に動く。バグったカーソルみたいに。


「あっ」


 たまたま動いた腕が、近くにいたベテランの冒険者に当たった。


「……」


 冒険者は死んだ。


「……俺、バグってる?」


 そこでようやく、異常に気が付いた。


 思考が、おかしい。何がって、ずっと異常に気づかなかったことだ。そして、それを当然として受け入れつつある自分にも。


 ずっとダンジョンに籠っていたから、肌が白くなってきた。


 いつしか俺は、死ねないまま、誰にも触れられないまま。


 孤独を抱えた、ダンジョン最下層の主になっていた。


『新規冒険者』


 新たに部屋に入ってきた人間の頭に、そんな表示が出る。


「お前が、最下層の主!!」


 そいつも、すっかり肌が白くなっていて。


「攻略不可能、って、そういうことかよ……」


 最後に残った自我が零した言葉は、誰の耳にも届かずに消えた。


「お、オレ、さい、キョー!!」


 やがて、意味をなさなくなった言葉が、陽の射さないダンジョンの地下深くで木霊するのだった。




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