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これは、人と人では無いモノの恋物語。

はじまりの物語



【この世界では人間に差別はありませんでした。

王様が差別を嫌っていたからです。


ある日、頭から動物の耳が生えた

種族が現れました


人々は動揺してなりません

種族は耳や尻尾なあるものの


それ以外の容姿は全く人間と代わりありませんでした

ただその新しい種族は身体能力が高く少し特殊な能力が使えたのです。


だが、人々はその種族やその能力を嫌い、差別し。

奴隷と扱い。中には殺す者まで居ました。

王様は穏平な方で争いが嫌いです。】



【どうしても、差別を止めて欲しかった王様は

奴隷と扱っていた人間を罪としました。

だからと言って、その種族達の差別がなくなる事はありませんでした


それから王様は考えました

ある日、自分の娘が抱いていた

ぬいぐるみを見たのです。


王様は気づきました。

彼らは『人形』なのだと。


王様はその真実を人間達にお話ししました。

王様の話をにっこりと笑顔で聞いた人間と人形


そして、人々はDOLLと名付け

とてもとても可愛がりました。】


「そして……いつからか、

DOLLはその国だけではなく。


世界中に広まりました。」




――――――――――――――パタンッ


そう言って静かに本をたたむと

今まで黙って聞いていた子供たちが騒ぎ始めた


「ねぇ~!お姉ちゃん!!

その話、この世界で誰でも知ってるよ!」


「そーだよ!もっと違うやつ読んでよ!

白雪姫とか~シンデレラとか~」


どうやら、みんなこの絵本は読んだことがあったらしい。


それもそうだ


母親や学校の先生に

散々読み聞かされたのであろう。


この話はこの世界の歴史で御伽話ではなく

本当の話なのだから


「あら…、そうなの?

ふふ、じゃあ聞いてみましょうか…………。」


女性は小さく笑うと子供たちに質問してみた。


「この王様はどう思う?」


答えなんて随分前から

決まっている分かりきった質問だ。


「「…」」


「…弱い王様かしら?」



「「優しい王様!!」」



そう、この王様は優しいのだと。



その言葉を聞くと不満なのか女性は考えるように黙りこむが、まだ純粋さが残っている子供たちは気づきもしない。



「……………」


そして子供たちは続けて、それは楽しそうにこう言った。


「もぉ、お姉ちゃん!それも皆知ってるよ!」

「王様は誰より優しいんだ!」


その答えは正解だ。


その答えを言えば母親には褒められ、

テストに出てその答えを書けば満点だろう。


例え異常が紛れていてもそれは、

王様が日常へと変えてしまったのだ。


この狂ってしまった世界でこれから


何十年も生きなければならない

彼らや彼女らにとってはこれが日常でしかない。


「………そうね。」


女性はやっと口を開いたかと思えば

否定するでもましてや褒めるわけでもなく


ただただ、悲しげに細く笑った。



いつもは誰かしら褒めてくれる【答え】


に普段は優しい彼女が褒めてくれないのを

少し不思議に思ったがそれを問う程

この子供達は利口ではない。


彼女の少しの変化にも気付かず

子供達は自分の話を進める。


「うん!!お姉ちゃん!!早く次の絵本読んでよー!」「早く早くー!!」


だけど、そんな子供達を可愛らしく思っている

彼女は眉毛を垂らし少し残念そうに笑った

「ふふ…残念だけど、今日はおしまい」


「ええぇぇぇぇ〜!!!!」

当然のように不満を漏らす子供達。


今日はほとんど例の授業のような

絵本を聞かされただけなのだ。


「ごめんね?貴女達の怪我も治療したことだし、

そろそろ薬の準備もしないといけなくて…」


そう、彼女は学校の先生でも

この子達の母親でもない。


ただの薬師の旅人だ。


彼女はたまたまこの街に来て、

ここの病院で助手を頼み働いていた所

この子供達がやってきたのだ。


(あの頃は、まだ慣れない環境や

少々意地悪な医師との業務中に子供が

大怪我をしたっておお騒ぎになって大変だったなぁ)


っと思い出にひたっていると子供たちの中の

一人の女の子がさっきまでとは打って変わって

不安そうな声をだした。


「ねぇお姉ちゃん…。

もう、つぎの街に行っちゃうの?」

隠していた事を知られていて動揺してしまう。


この子はあの時の大怪我事件で

私の所まで走ってきてくれた子だ。


鋭い子だから、私の言葉でバレたのかと

考えていたら隣から大きな声が聞こえてきた。


「えええええ!!!!なんで?!

どっか行っちゃうの?!」


「お姉ちゃんずっとここに居ればいいのに!」

もったいねぇよ!!


何が勿体無いのかわからないが

この馬鹿でかい声で話し続けている二人の少年こそ


あの大事件の加害者と被害者だ。


どっちが加害者で被害者だとかでお互いの母親同士がモメたが怪我の治療をした彼女がどちらも大怪我ですしお互いに被害者なのでしょうと言った所無事丸く収まる事ができた。



いつかは言おうと思っていた事。

所詮私は、この街の人じゃない、、、


ただ気がついたらこの街にいただけの

旅人でしかない。



でも、この子達を傷つけたくない。

言葉選びは慎重にしよう。


「そうねぇ、もうここに居るのも半年だから、そろそろ旅の準備も始めないとね?」


その言葉は、子供たちに大丈夫だという事が

届いたのだろうか?


「やだぁー!」

「お姉ちゃん…」


…残念だが届かなかったみたいだ。


あまりに子供達が捨てられた子犬のような顔を

していて、いつもの元気はどこなの?

と思うとくすっと笑みが漏れる


そして、わたしはまだ不安気な子供たちに

安心のできる約束をする。


「約束するわ。貴方達に連絡も何もなしで

急に行ったりしない。

まだここにいると思うし…ほらだから、

またいつでもおいで?」


するとさっきまで、捨てられた子犬のような顔を

してた子供達が満面の笑みで頷いてくれる。


「「…うん!!!!」」


やはり、可愛らしく素直な子達だ。



子供たちが帰った後仕事も一段落つけ

休憩に入りかかった。


あともう一段落の仕事とこの街を出ていくための

荷造りをしなくてはと思うと気持ちが重い。


「…」ふぅ…


つい出てしまったため息に幸せが

逃げちゃうなあとぼーっと考えていると

今まで一人だった職場からわりと近くで声がした。



「やっと、帰ったんですか?子供達。」


「!!!!!………………」

ビックリしすぎて声が出なかった。


急に出てきた、若い男はイヤらしい笑みで笑い

近づきながらこう言った。


「…………大変ですねぇ」


「……アルフォンスさん…」



そう、この男こそ

慣れない職場環境の原因を作った。


意地悪な医師だ。


「まぁ、僕も君にはここにいて

もらいたんですけどね?」


顔はこの街で有名になるくらい整っており。

まだ20代前半だというのに

この医師の職につけるキャリアと頭脳。


私は薬師になるのにも血を見るほどの

苦労に苦労したのに自分とほぼ同世代の人が医師なのを知ってこの人はどんなに天才なんだと驚き


この人の下で働く事に初めは

尊敬や緊張でいっこうに慣れなかった。


――――――――――――――――が、


この人のある一言で

その尊敬も緊張もなくなってしまった。

そんな医師の彼は笑みを絶やさず

いつものように悪い冗談を言う


「また、遊びに来ます」


尊敬できなくなった今でも彼は上司で

この街一番の腕を持つ医師なのだ。


気分を害さないよう

当たり障りのないように笑って断る。


「あ、この話ですか」


すると医師はついさっきまで子供たちに

読み聞かせていた本を手に取り


「……」


「昔にくらべて随分DOLLの待遇も

まともになりましたね」


そして


「……」

「優しい王様が居て良かった」


お決まりのセリフを口にする。


―――――――ああ


私はなんでこんなに腑に落ちないんだろう

差別がなくなって良かったじゃない

争いがなくなって良かったじゃない

殺されなくて良かったじゃない


でも王様、今の世界の状況は正解なのかしら?


【ねぇ優しい王様?】


「―――そうですね」


【彼らを真剣に人形だと思った

あなたはやっぱり優しくなんかない】


「――――」


【誰よりも醜く】


【残酷な人間よ――――――】



―――――――――――――――――――――



パタンッ…………


「結局はDOLLと言う名の奴隷なんだよ…」


男が畳んだそれは有名な本で

誰もが一度は読んだことがあるだろう。


ヒゲを伸ばしっぱなしで気怠げな

その男は今年25歳なのだが

お世辞でも若いとは見られない。


「今や、DOLLは貴族の間だけではなく、

全世界で―――」


「食料なしでも簡単に飼えちゃいますよ

必要なのは少量の水だけで大丈夫です!」


「価格!!この値段で今日は6時間!!

DOLLに好きなこと出来るよ!!」


街中に鳴り響く声は昼夜、

子供がいようと止むことがない。


世界はこんなにも歪だ。


ギロッ

「…………」


ヒゲの男を座っていた隣で

小柄な青年が男を睨みつける


「はぁ、睨まないでください」

「――今日は?」

「ロランス嬢、今から6時間」にっこり


嫌味ったらしく笑った男のだした名前にちっ、

と舌打ちをする。


(ちっ、あのセールか…)


パラパラッ…


「―――――お、雨ですね。

奏斗【カナト】気をつけて帰ってくださいね」


男は全く心配そうじゃない声で言った。


「分かってるよ」


青年に成りきれない少年は

ただただ事務的な返事をする。


神様は残酷だ―――――


だからあの日のあの時


「……DOLL?」


【私と君は出会ってしまったんだろう】



それは、長い長い旅の始まりの合図だった。


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