表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/27

7.芦ノ湖にて

 

 箱根湯本に到着した僕たち。

 しかし、お目当ての宿は芦ノ湖の湖畔にある。


 箱根湯本から芦ノ湖まではかなりの距離があり、ここから小一時間ほど、山を登っていく。


 山を登る手段はいくつかある。有名なのが登山電車、ケーブルカー、さらにはロープウェイを乗り継いで、芦ノ湖を目指すもの。

 鉄道ファンとしてはこちらのルートで行きたいが、今回は、あすかさんと樹里さんの二人を連れているので、鉄道ファンじゃなくても楽しめる、もっと馴染みのあるルートで

 芦ノ湖へ行くことにした。


「さてと、ここから山を登って、芦ノ湖を目指しますね。」

 僕は二人に向かってそう言うと、二人は大きく頷く。そして、駅の改札口を出る。

 改札口を出る行為を見て、案の定、二人がこう尋ねてくる。


「あれ?登山電車じゃなくていいの?撮り鉄さんだから、そっちで行くのかなと」

 あすかさんがそう言ってくるが。


「まあ、一人だったらそうしてたかもしれないですが、それは、明日、帰りにしましょう。今日は、もっと馴染みのある、有名なルートで、芦ノ湖を目指しますね。」

 僕はそう言って、改札を出て、箱根湯本駅のバス停へ向かう。


 そうして、バスが何台かやって来る。僕はバスの行き先表示板に掲示されてある、経由地と記載されている項目を確認して、バスに乗る。


「へえ。バスで行くんだ。」

 あすかさんは興味津々に僕を見ている。


「はい。ここから先、箱根駅伝と同じルートで、芦ノ湖へ向かいます。丁度、ゴールする場所の傍のバス停で降りますので、往路のゴール地点、そして、復路のスタート地点へ行きましょう。」


「「ああっ!!」」

 あすかさんと樹里さんの二人は、箱根駅伝と同じルートということで、さらに興味津々な表情になる。


「箱根駅伝。すごく知ってるわ。」

 あすかさんはニコニコと笑い、大きく頷いている。

 樹里さんも、うんうんと、頷き、これから、全く同じルートで、ゴールまで向かうことを考えると、ワクワクするようだ。


「良かったです。そっちの方が、正月もやってますし、馴染みがあるかなあ、と思って、往路は、駅伝と同じく、バスのルートで。」

 僕はそう言いながら、バスに乗り込む。


 バスの運転手のアナウンスも、出発と同時にその旨を、バスの乗客に告げる。


「この先、芦ノ湖まで、大学駅伝と同じルートで向かいます。」

 と。


 バスは走り出し、正月に映し出される全く同じ場所を、正確に通っていく。


「湯元のお土産屋の並びですね。明日また行こうと思います。」

 僕は二人にそう言うと、二人はニコニコ笑う。


「ここら辺も、お正月は、色々な大学の旗でいっぱいだね。」

 あすかさんが辺りを見回しながら、バスの車窓を見ていく。


「ハルさんの、通っている学校は、箱根駅伝にも出ている、付属校ですよね。今から、応援行くのかな?」

 樹里さんは僕の方を見てそう言うが。


「まあ。行けたら行くかなぁって言う感じかな。それに行けたとしても、家から近い、一区や、二区の所で応援してそう。」

 僕がそう応えると、二人は笑っていた。そうだよね。と言いながら。


 箱根湯本のお土産物屋や温泉街を過ぎていくと、バスは一気に山の中という雰囲気の場所に進んでいく。

 函嶺洞門を横目に見て、小川に沿って、バスは坂道を上がって行く。

 昔は、この函嶺洞門のトンネルの方の道を通っていたのだが、今は付け替えられて、横に迂回するような道を通っていく。


 そして、勿論だが、箱根湯本駅から、バスはずっと上り坂を上がっている。平坦な道は限りなくゼロに近い。


 そうして、上り坂を登り続けること、十分ほど経過したところで、箱根駅伝の有名な箇所でもあり、給水ポイント。大平台のヘアピンカーブを曲がっていく。


「ここも、テレビで、正月映りますよね。」

 僕はそう言いながら、二人に説明する。


「本当だね。実際に見るとこんな感じなんだ。」

「うんうん。テレビでしか私も、今まで見たことが無かった。」

 あすかさんと樹里さんは興味津々で、先ほどから、大学駅伝のコースである、バスの車窓を見ている。


 そこからもバスは、宮ノ下の温泉街、小涌園と続いて行くが、ずっとずっと上り坂。

 平坦な場所はいつ通ったのだろうかと思わせるくらい、感覚がなくなって行く。


 流石は、天下の剣とも呼ばれた山々を抜けていくルートだ。


「ずっと上り。」

 樹里さんは、車窓を見ながら、僕に向かってそういう。


「そうね。こうしてみると、箱根駅伝でここを走る人達のことを、山の神とか、山の何々、っていう人いるけど、本当にそうだと言いたくなるわね。」

 あすかさんの言葉は最もだ。


 僕もここまで登りが続くと、ここを登っていくランナーのことをそう思わざるを得ない。


「本当ですね。ここまで登り坂が続くとなると。」

 僕は素直にあすかさんに言う。樹里さんもうんうんと笑っている。


 バスはこのまま登りが続く道を走り続け、芦之湯と呼ばれる場所を抜け、国道一号の最高地点へたどり着く。

 ここからは芦ノ湖まで緩やかに下っていく。


「やっと下りに入ったわね。」

 あすかさんの言葉に、僕も樹里さんも大きく頷いた。


 そうして、下りに入ってしばらくしたところで。

「うぁ~。きれい!!」

 あすかさんが思わず声を上げる。


 僕たちの視界に、芦ノ湖が見えてきた。手前の木々の奥に映る、大きな青い湖の姿。

 それを目に焼き付ける僕たち。


 そうして、芦ノ湖沿いの道に入り、箱根の大鳥居をバスは抜け、箱根駅伝のゴール地点のすぐ傍のバス停で降りる僕たち。


 箱根駅伝のゴール地点へとそのまま向かう。

 すぐ傍には芦ノ湖が広がっており本当に絶景が広がる。


「すごく綺麗。」

 樹里さんは思わずうっとりしている。

「本当ね。」

 あすかさんもうんうんと笑っている。


 広く青々と澄み渡る、芦ノ湖の湖。何かが満たされていく、そんな気がする。


 僕たちは、そのまま、箱根駅伝と同じルートを来たということもあり、そのまま芦ノ湖の湖畔に併設されている、箱根駅伝ミュージアムへ。

 箱根駅伝の歴史それを見ることができるわけだが、本当に、ランナーと言い、昔の人は、この東海道の最大の難所を歩いてきたのだ。本当に頭が上がらない。


 箱根駅伝ミュージアムを出て、そのまま僕たちは芦ノ湖の湖畔を散策しながら、今日の宿屋へ向かう。


 途中には箱根の関所跡があり、それも見学する。

「すごいわね。関所跡だ。歴史の教科書でしか見たことないけど。」

 あすかさんが目を丸くして関所跡を見る。


「はい。こうしてみると、本当にあるんだなと。」

 樹里さんも同じく、目を丸くして関所跡を見る。


 そうして、芦ノ湖付近を散策すると、お腹がすくころ。丁度、お昼のピーク時間を過ぎ、少し遅めの昼食を取れば、宿屋のチェックインの時刻になるという、そんな時間だ。


「どこか、お昼を食べる場所はないかしら?」

 あすかさんが僕に向かって聞いてくる。

「そうですね。すみません、そこまでは僕はリサーチしてなくて。」

 そんな会話をしていると。


「あのっ。」

 樹里さんが僕たちに向かって声をかける。


「い、一応、私、高校で、料理部やってるので、皆さんの分、作って来たんですけど。その、皆さん、予約とか、お金とか、色々していただいているので、私だけ、何もしないのはと思いまして。」

 樹里さんのこの言葉に目の色が変わる僕たち。


「すごい!!」

 僕は両手を叩き樹里さんに拍手をする。


「すごいね。勿論、遠慮なくいただくわ。」

 あすかさんもうんうんと頷く。


 僕たちは、芦ノ湖が見渡せる広場へ行き、そこで樹里さんのお弁当の包みを開ける。

 そこには、量は少し少なめだが、皆で食べれるように色々な料理が並んでいた。


 樹里さんの料理はどれも美味しく、あっという間にすべてを平らげてしまった。


「す、すみません。量、少なくて足りなかったかもしれません。」

 樹里さんは申し訳なさそうに言うが。


「ううん。とてもおいしかったよ。」

 と僕は樹里さんに向かって言う。


「そうね。それに、この時間帯だから、後は宿屋に行って、温泉楽しむだけだから、宿屋で夕食も出るし、量が少なかった分は、それで補えばね。」

 あすかさんは樹里さんに向かってウィンクして、樹里さんを安心させていた。

 勿論、僕だって、同じだ。


 そうして、僕たちは、芦ノ湖を見ながら、今日の宿屋へ向かって行った。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ