30.ナイトプールで
ホテルにチェックインする僕たち。『ホテル日航ハウステンボス』というこのホテル。白を基調とした、お城のような、そんな場所だった。
鍵を渡され、部屋へと向かおうとするのだが‥‥。
「なんかすごそうなので、少し見ても良いですか?」
樹里さんは窓の外を指さす。
その指さした方向を見て、僕たちは頷く。
「なんかすごそう。」
あすかさんは目を丸くして、窓の外を見た。
窓の外には豪華な庭園が広がる。
宮殿のように手入れされた庭園がそこにあった。
庭園の中央、白いテラスのようなガーデンルームへ行き、周りを見回す僕たち。
遠くにはハウステンボスの塔が見える。
「すごい。宮殿みたい。」
あすかさんが驚く。
「本当ね。」
咲姉ちゃんも笑っている。
そう、ここはハウステンボス。このテーマパークの周りも、ハウステンボスに合わせて、このように作られているのだろう。
ホテルの庭園を一通り見た後は、それぞれの部屋に荷物を置いて、いよいよ、ハウステンボスの敷地内へと入って行く。
入場券は、今日と明日使えるパスポートだ。
ホテルは明日の宿泊まで予約しているので、明日の夜までハウステンボスに居ることができる。
早速、西洋風の建物、そして、綺麗に手入れされた花々たちが僕たちを出迎える。
ゆっくり撮影したいところだが。
「今日の夜は、グラビア表紙の撮影のために、プールへ行きましょう。ナイトプールということで、楽しめればいいなって、思います。」
僕はそう言って、皆をプールへと案内する。
皆はうんうんと頷いて、ハウステンボスの中のプールへと向かう。
ハウステンボス、夏休み恒例のウォーターガーデンプール。
日本一広いテーマパークだからできる、夏休み最大級のイベントだ。
ハウステンボスのプールに入るなら、まさに夕方からのこの時間帯だ。なぜならば、イルミネーションの演出が自慢のハウステンボス。冬になれば更にライトアップされるのだが、夏でも色々な場所で、沢山のイルミネーションを見ることができる。そして、その幻想的なイルミネーションの中でのナイトプールだ。まさに芸術的だろう。
入国のゲートから少し歩くと、プールの更衣室にたどり着く。
そうして、皆と別れて、男子更衣室へと向かう僕。当然、他のメンバーは女子更衣室で着替えを済ませる。
水着に着替え、プール側の出口で皆を待つ。
待つこと数分。
「「お待たせしました。」」
「お待たせ~。」
三人が声を揃えて僕に声をかける。
そこに現れたのは、ナイトプールということもあり、少し大人っぽいビキニを着た美女たち。
クロスビキニという水着で、胸の上部、もしくは下部をクロスして固定するというもの。
あすかさんの着ているビキニに至っては、胸元に大きめの布があるだけで、固定している素材に関してはほぼ紐だった。
ドキドキが止まらない僕。
着ている色は、あすかさんが赤色、樹里さんが青色。そして、咲姉ちゃんは大人っぽい薄紫のものだった。
ナイトプールということもあってか、目立つ色の水着をそれぞれ着ていた。
「ふふふっ、マー君、顔が赤いぞ。ニヤニヤするのは後で、宮川さんから頼まれた依頼をこなしちゃおうね。」
咲姉ちゃんの言葉に僕は頷く。
そう、あくまでも、今回のナイトプールは、雑誌の掲載にいくつか必要な写真を撮るのが目的だ。
先に目的を済ませて、その後で、このナイトプールを楽しむことにした。
今回の撮影、あすかさんは勿論なのだが、旅行の雑誌のモデルとして、樹里さんと咲姉ちゃんも選ばれている。あすかさんと宮川さんが、二人を旅行の雑誌のモデルに推薦してくれたのだそう。よって、僕は手早く全員分の写真をカメラに収めなくてはいけない。
早速、プールの敷地内に足を踏み入れる僕たち。
先ずは係員の居る建物に行き、レンタルするものの手続きを行う。
事前予約をしているので、手続きはスムーズに進んだ。
このプールでは色々なモノをレンタルしてくれる。なんと、水着もレンタルしてくれるのだそうだ。本当にすごい。
そうして、僕たちが予約でレンタルしたものが登場した。
「か、可愛い。」
樹里さんが思わず見とれる。
「本当。見惚れちゃうわね。」
咲姉ちゃんもうんうんと頷いている。
僕たちがレンタルしたもの、それはペガサスの形をした大きな浮き輪だった。
白い体、七色の一角と毛並色。まさに西洋のおとぎ話に出てくる、角の生えたペガサスをモチーフにした、大きな浮き輪がそこに居た。
そして、予約しておいた、有料のレンタルスペースへと、係の人は案内してくれた。
二人掛けの白いソファーがそこにあった。
「素敵な場所。撮影、頑張れそう。」
あすかさんがうんうんと頷く。
先ずは二人掛けのソファーの周りで、撮影をする僕。
夕方ではあるが、まだ日が出ている。沈む夕日と、ソファーをバックにそれぞれ全員分の写真をカメラに収めて行く。
二人掛けのソファーに座ってくつろぐ写真、あすかさんは一人分をわざと開けて手招きをしている写真を撮った。
隣に座ってみたいと素直に思う僕が居た。
そうして、丘の上、ソファーのレンタルスペースでの撮影を一通り終えた僕たち。
少し休憩を兼ねて、プールへと入る。残りは日が沈んでから、プールでの撮影だ。
円形の大きなプールと、スプラッシュ・フィールドと呼ばれる幻想的な噴水が近くで見られるプール、そして、大きな滑り台がある構成だ。
こういうと、規模としては小さいかもしれないが、ここは日本一広いテーマパーク。それぞれのプールがとても広く、かなりの人数が居ても、混んでいる感じがしない。
先ずは、スプラッシュ・フィールドと呼ばれるプールへ。
噴水が間近で見られる場所。
ここは、日が沈むとショーのために使われるため、利用が出来なくなる。
というわけで、使用できるギリギリの時間帯ではあるが、この場所を少し楽しむことにした。
「噴水が綺麗。」
あすかさんが笑っている。
「はい。ショーが凄く楽しみです。」
樹里さんもうんうんと頷き、これから始まるショーに期待しているようだ。
噴水からの水しぶきを浴び、その水浴びを楽しんだ後は、大きな滑り台へ。
「すごい。」
咲姉ちゃんが滑り台を見て驚く。
滑り台。確かにそうなのだが、滑り台とウォータースライダーを足して二で割ったような、そんな大きな滑り台だった。
早速、登って、流れる水に乗って、一気に滑り降りて行く僕たち。
やはり、ドキドキしてしまう樹里さん。
その樹里さんを真ん中に入れて、左右の滑り台で一緒に滑り降りる僕たち。
「きゃあ。」
樹里さんは最初こそ怖かったようだが、内心すごく楽しそうだった。
そんなことを楽しんでいると、あっという間に日の入りの時間。
夜のハウステンボス。
敷地内のあちこちにイルミネーションが灯り始める。
「うわぁ~。」
「すごい。」
「綺麗。」
ハウステンボスのイルミネーション。無数の色鮮やかな光が僕たちを照らしていた。
そのイルミネーションに照らされ、いちばん大きな円形のプールに、先ほどレンタルしたペガサスの浮き輪を浮かせ、続きの撮影をしていく僕たち。
浮き輪に跨り、大胆なポーズをしていく、ビキニ姿の美少女たち。
背後には、ハウステンボスのイルミネーションが綺麗に映って行く。
これぞナイトプールだ。
「すごい。これがナイトプールだ。」
僕は嬉しそうに笑う。
「そうだね。これを見ちゃうと、他のナイトプールはもういいかなぁって思っちゃうわ。」
咲姉ちゃんはイルミネーションの明かりにうっとりしながら、プールの水面を見る。
「本当に綺麗です。すごい。」
あすかさんもうんうんと頷いている。グラビアの撮影で、こういうナイトプールも行ったことがあるのだろう。しかし、ここのナイトプールは、あすかさんにとって他のどの場所よりも幻想的で素敵なイルミネーションに映ったようだ。
「ナイトプール、初めてきました。本当に綺麗です。他の場所も夜のプールがあれば是非行きたいです。皆さんとなら。」
樹里さんもうんうんと頷き、笑っていた。
そうして、お互いに交互にペガサスの浮き輪に跨り、その写真を撮る僕たち。
楽しそうな写真が何枚もカメラに収まった。
更には、幻想的な噴水をバックに、ショーが始まった。
光り輝く噴水。そして、流れ出る幻想的な音楽。まさにおとぎ話の国に来た感じだ。
「ふふふっ、今日の夜だけで、西洋のテーマパークのほぼすべてを楽しんだ気がするね。」
咲姉ちゃんがニコニコと笑っている。
「そうだね。」
僕もうんうんと頷く。
「はい。素敵な時間です。」
樹里さんもニコニコと笑っていた。
「そうだね。皆、今日も撮影に協力してくれてありがとう。折角なので、最後まで楽しみましょう!!」
あすかさんは皆に向かってそう語り掛ける。
「こちらこそです。本当に、ありがとうございます。」
僕はあすかさんに、頭を下げる。
本当に、あすかさんと出会ってから、貴重な体験をしている僕たち。この幻想的なイルミネーションもまさに貴重な体験だった。
そうして、あっという間に閉演の時間になる。
「ふふふっ、楽しかったわね。」
咲姉ちゃんがニコニコと笑っていた。
僕たちもその言葉に頷く。そうして、着替えを済ませ、出国ゲートからホテルに戻るのだった。




