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24.浴衣と祇園

 

 翌日は、京都観光ができるということもあり、早めに目が覚める僕たち。

「おはよう。よく眠れました?なんか、まだ、朝早い時間帯なのですが。」

 僕は目を覚ました皆に聞いてみる。


「大丈夫。すっかり元気。」

 あすかさんはニコニコ笑って、両腕を高く上げる。

「ありがとう。私も大丈夫よ。」

 咲姉ちゃんはうんうんと頷きながら、こちらを見ている。

「はい。京都という町を色々巡れて、すごく嬉しいので、早く起きました。」

 樹里さんは今日も様々な場所を見学できるということもあり、すごく楽しみな表情をしている。


 そうして、僕たちはホテルの朝食会場へと向かう。

 朝早い時間帯だが、朝食会場は空いているようで、各々、食事を取る。


 朝食はバイキング形式。色々と好きなものを取って食事をしていいということで、各々好きなものを取って食事をする僕たちだが。

 やはり、ここは京都、考えることは、皆、同じのようで。京都の漬物のコーナーに僕たちは並んでいた。

「ふふふっ、みんな同じね。」

 咲姉ちゃんがニコニコ笑う。

「そうだね。やっぱり、京都の漬物は美味しいね。」

 僕がニコニコ笑いながら、そう答える。

 樹里さんと、あすかさんも頷いている。


 そうして、各々、京都の漬物を取っていくと、次は、京都の湯葉、更には、京都の白みそを使った味噌汁とここまでは全員が共通して、同じものを取っていく。

 その後は、各々、好きなものをバイキングで取っていき、僕は、カツオのたたきに、焼き魚、だし巻き卵を取り、食事を始めるのだった。


 どの料理もとても美味しく、素晴らしい朝食の時。

「すごく美味しい。」

 あすかさんがニコニコと笑っている。

「はい。また食べたくなります。」

 樹里さんもうんうんと頷き、頬を赤く染めている。

「うん。今日も一日、頑張れそうね。」

 咲姉ちゃんがニコニコと笑っていた。


 京都のおばんざいの朝食。それを楽しみ、部屋に戻って支度をする僕たち。

 僕も居るので、トイレや洗面所を利用しながら、着替えを済ませる。そして。


「お待たせ。」

 先に着替えを終えた、あすかさんが出てくる。

 着替えたのは、先日、彼女のマネージャーの宮川さんから渡された、今日着て欲しいという衣装。

 それは、浴衣だった。


「すごい。とても似合ってます。」

 僕がそう声をかけると。

「ふふふっ、ありがとう。」

 あすかさんが、ニコニコと笑っていた。


「さあ。二人の分もあるから、着替えて来て。」

 あすかさんがニコニコ笑って、樹里さんと咲姉ちゃんに、浴衣を手渡す。


 そうして、樹里さんと、咲姉ちゃんも着替えを済ませ、浴衣姿で出てくる。

 三人が浴衣姿で揃ったところで、僕は、カメラのシャッターを押す。


 今日の浴衣は、全員が紺色の生地。しかし、それぞれ、花柄の模様が異なり、ヒマワリ、ピンクのボタン、そして、朝顔がプリントされていた。

 ヒマワリが咲姉ちゃん、ボタンがプリントされているものをあすかさん、そして、朝顔の浴衣を樹里さんが、それぞれ着ていた。


 浴衣で、京都観光の旅。なんだか、すごく風情があって、それだけで楽しくなる。


 早い時間帯にホテルを出て、先ずは、京都の風景をバックに、浴衣の写真を撮ることにする。

 というわけで、駅前のホテルから、先ず向かった先は、京都駅から近い東寺。

 五重塔の拝観開始時間と同時に、拝観券を購入し、五重塔へと進んでいく僕たち。


 東寺の五重塔を背景に浴衣の写真を撮る僕たち。

 この五重塔は、日本一高い木造建築と呼ばれている。近くで見ると、それは圧巻だ。


「すごい。五重塔。」

 上を見上げる、あすかさん。

「一、ニ、三、四、五、本当だ、屋根が五重に重なっている。」

 咲姉ちゃんは、屋根の数を数え、五重に重なっているかを確認していた。

「うわぁ。初めて見ました。五重塔。」

 樹里さんも天を仰ぎ、その壮大さをよく見ている。


 僕は、五重塔、そして、その塔を囲むかのように綺麗にされている庭園を背景に、それぞれの浴衣姿の写真を撮っていく。

「庭園も奇麗。いい写真が撮れたかな?」

 あすかさんが僕の瞳と、カメラのレンズを覗き込みながら、僕に聞く。


「はい。いい写真ができました。」

 僕はそう言って、撮った写真をあすかさんに見せて行く。


「うん。いい出来。宮川さんも喜びそう。」

 あすかさんはうんうんと頷き、笑っていた。


 樹里さんと、咲姉ちゃんの写真も順番に撮っていき、そして、最後は、三人全員で写真を撮る。


 そうして、時間の許す限り、東寺の五重塔を見て、再び京都駅へ。

 ここからは地下鉄に乗って、四条駅へ。


 京都四条。京都の一番の繁華街の一つ。地元の人は勿論、観光客も多く立ち寄る場所。


 そして、今日は特に人がいっぱいだ。


「すごい。迷子にならないかしら。」

 あすかさんが凄く不安そうな顔をしている。

「はい。私も。やっぱり有名な観光地ですし、ここまで人が多いと。」

 樹里さんもどこか心細そうな顔をしている。


「ふふふっ、はぐれないように、気を付けましょうね。マー君も、ゆっくり歩こうね。」

 咲姉ちゃんがニコニコと笑って、僕に問いかける。僕も、うんうんと頷く。


 多くの人でにぎわっている場所。そして、今日は特に沢山。その理由は他でもない。今は七月の下旬。祇園祭のシーズン。そして、まさにこの日が、丁度、祇園際の後祭にあたり、山鉾巡業が行われる日でもあった。


 そういうわけで、今日は特に人がいっぱいだった。

 僕たちは、はぐれないように注意しながら、四条通を東に進み、河原町通り方面へ。


 祇園祭の後祭ということで、山鉾は河原町通りを南下して四条通に入る。

 因みに、祇園祭の、前祭が一週間前くらいにあり、この時も山鉾巡業があったのだが、こちらに関しては、逆のルートを取り、四条通から、河原町通りを北上していくルートとなる。


 というわけで、後祭であるこの日は、四条通に山鉾が到着するのは、昼近くの時間帯になるのだが、既に多くの人だかりができていた。


「ここら辺が限界かな。これ以上行くと、かなり混雑しますので。」

 僕はそう言って、立ち止まり、皆にそう問いかける。

 皆も同じようなリアクションをして、うんうんと頷く。


 四条通と河原町通りが交わる場所。文字通り、四条河原町の交差点から少し離れたところに陣取る僕たち。

 それでも、河原町通りから曲がって来る山鉾を写真に収めることができるような場所だった。

「これが先週の山鉾巡業の時だったら、もっと混雑してましたね。先週の方がメインで、出てくる山鉾の数も確か多いはずです。」

 僕がそう説明すると、まさに、うんうんと頷く、三人。


 そうして、しばらく待っていると、山鉾が通過する予定時間となる。

「そろそろ来ますかね。」

 僕がそう皆に問いかけると、どこからか聞こえる、太鼓や笛のお囃子の音。


 そのお囃子の音が大きくなり、最初の山鉾が河原町通を曲がって、こちらの四条通に入ってきた。

「すごい、豪華。」

 咲姉ちゃんは思わず言葉を漏らして、僕と同じでカメラを構える。

「本当ね。しかも、すごく大きい。」

 あすかさんは豪華に装飾された山鉾を見て、その華やかさに圧倒される。


「すごい。噂では聞いていたけど。」

 樹里さんも思わず天を仰ぎながら、山鉾のいちばん上の部分を見ている。


 その山鉾、一台、一台を写真に収めて行く僕と咲姉ちゃん。

 どの山鉾のデザインも、華やかさが出ていて、面白い。

 これが、千年の都、京都、遥か昔から続く、お祭りだ。


 そうして、全ての山鉾が、僕たちの目の前を通過したのを見届け、四条河原町の通行が許可される。

 京都で一番の繁華街。山鉾巡業の後なので人通りが多い。その流れについて行くように、僕たちも続いていく。


 河原町通りを横切り、すぐに鴨川を渡る。

「すごく。綺麗。」

 あすかさんがニコニコと笑っている。

「本当ね。」

 咲姉ちゃんは鴨川の北の方を見て、写真を撮る。京都の山々がとても綺麗だ。

「写真で見たことありますけど、とても綺麗ですね。」

 樹里さんはニコニコと笑って、その風景をのんびりと見ている。人混みの中から一気に解放された、そんな感じだ。


 昔から、この地を流れる鴨川。その川の流れを目に焼き付けながら、川を渡る。

 川を渡るとすぐに表れるのが、京阪の祇園四条駅。

「とりあえず、残りの時間は京都の東側、東山の方の観光をしましょう。ああ、この場所はお土産屋さんも多いので、後で戻ってきますので。」

 僕はそう言うと、皆は大きく頷き、そのまま、祇園四条の駅から、改札を通って、京阪電車の乗り場へ。


「京都のスポットを巡るなら、北側から巡った方が良いんですよね。京都駅からバスに乗ると、色々な所で渋滞にハマりますので。特に、先ほど、山鉾巡業で通った、四条通は、いつも混んでますから。そこから、北へは電車で移動する形でね。」

 僕はそう言いうと、皆は頷く。

「確かにね。京都は人混みが多すぎるから、すいている所に出来るだけ行きたいわね。」

 咲姉ちゃんがニコニコと笑う。

「はい。そう思います。人混み苦手です。」

 樹里さんも大きく頷く。元々は陰キャの部類に入る彼女だ。気持ちはよくわかる。そして。

「そうだね。バレてないかしら。」

 グラドルのあすかさん。人混みは、色々とプライベートの観点から、避けたいのだろう。


「だけど、案外、バレないわね。」

 咲姉ちゃんが僕たちの耳元で囁くように言う。

「そうですね。」

 樹里さんもうんうんと頷く。


「意外と、プライベートはバレないです。少しすれ違ったくらいなら。でも、長い時間とどまっていると、声を掛けられることもありますが。皆さんと一緒なので、ファンの方もわかってくれているんだと思います。それに、あまりにもしつこければ、連絡するように宮川さんにも言われてますから。」

 あすかさんは丁寧に説明する。そして、後半の言葉はとても頷ける。


「なるほど。やっぱり、そういうの、厳しいですからね。」

 僕はそう言うと。

「はい。」

 と、あすかさんは頷く。


「そして、今声をかけられても、ごめんなさい、こちらの方々は、撮影スタッフの方でもあるので、この後色々ありますので、と、丁重にお断りしますので。」

 あすかさんはニコニコ笑って、僕たちを見て言った。それだけ、僕たちのことを信用してもらえているということで良いのだろう。


「その、もったいない、お言葉、ありがとうございます。」

 僕はあすかさんに、頭を下げると。


「いえいえ。とても楽しいですから。皆さんと一緒に居ること。」

 あすかさんはニコニコと笑っていた。

 その言葉に、僕だけでなく、咲姉ちゃんと、樹里さんも、顔を赤くして、照れながら笑っていた。


 そんな会話をしていると、京阪電車がやって来る。

 緑と、白に塗装された、各駅停車に乗り込み、京都側の終点の出町柳へ向かう僕たち。


 時刻は、正午を少し過ぎたあたり。午前中は祇園祭を楽しみ、改めて、京都の様々な場所に向かう僕たちの姿があった。


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