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21.東海道新幹線の旅

 

 期末試験も返却され、そこまで悪くない結果に安堵する僕。

 そうして、しばらくすると夏休みが始まり、最初の補習と、三者面談を終える。

 面談では、部活での一件の謝罪があり、改めて、内部進学等での部活動の内容に関しては考慮してくれる胸が担任の先生から、話があった。

 その他は、問題なく、成績も良いので、このままいけば、内部進学においては、全ての学部学科に、僕が志望すれば、希望通りの進学が出来そうとのことだった。


 そうして、夏休み最初の週末。僕たちは東京駅に集合した。


「おはよう。皆、夏休み、楽しんでる?」

 あすかさんがニコニコ笑う。

「はい。おかげさまで。こうして、皆で出かけることができて嬉しいです。」

 僕はうんうんと頷く。


「こっちも、元気に過ごしてます。夏休みは部活動が無いので、少し余裕があって嬉しいです。」

 樹里さんがニコニコと笑う。


「ふふふっ、みんな楽しそうでよかったわ。私も、大学に内部進学の推薦で行けるとはいえ、提出する課題に集中して取り組んでいるわ。」

 咲姉ちゃんがうんうんと頷いて笑う。しかしながら、こうして、僕たちと一緒に撮影旅行に行くことで少し息抜きができるようだ。


「さてと、みんな揃ったところで、七月後半の撮影旅行へ出発!!」

 僕が元気な声でそう言うと。皆はうんうんと頷き、右手を突き上げるのだった。


 僕たちが今いるのは、東京駅の丸の内側ではなく、八重洲側。

 ここからは新幹線の乗り場が近く、夏休みに入ったばかり、ということで、長距離の旅の始まりとなる。


 事前に購入していた新幹線の切符を渡し、ホームへと向かう。

 東海道新幹線のホームは、JR東海管轄ということもあり、在来線や東北、上越新幹線のホームとは少し違う雰囲気が漂う。

 念のためではあるが、電光掲示板を確認し、乗る電車を確かめる。


「なんか、同じ車両ばっかり来ませんか?」

 樹里さんの言葉に僕は頷く。


「そうなんですよね。東京と大阪間は需要がかなり大きく、同じ車両を使わないと、色々困ることがあるんですよね。速度を一定にして、本数を増やすとか。後は、故障とかで、万が一、車両が使えなくなったとして、代わりに使用する車両も同じ方が良いんですよね。指定席の予約とかの関係で。」


「なるほど。確かに、理由聞いて納得です。」

 樹里さんが、うんうんと頷いている。

「すごいね。流石鉄道ファン。」

 あすかさんがニコニコ笑っている。

「そうね。確かに、この理由なら、同じような車両を統一して、使う方が良いわね。私の論文課題にも、そんな風に調べた結果が書いてあるわ。」

 咲姉ちゃんが、うんうんと頷いている。


 確かに、東海道新幹線のホーム、先ほどから停車している白地に青いラインの新幹線はどれも同じようなものだ。

 N700系と呼ばれる新幹線。正確には、N700系、N700A、N700Sと三つのタイプがあるが、基本的にはどれも変わらない見た目をしている。

 撮り鉄にとっては、前面の凹凸の微妙な違いだったり、車内の微妙な違いに気づくのだが、樹里さんや、あすかさん、そして、咲姉ちゃんにとっては、あまり気付かないだろう。

 因みにだが、僕も、東海道新幹線に乗るときは、車内に入るまで、そこを意識しないようにしている。

 見た目は同じような車両でも、車内の快適性に若干の違いがあるためだ。

 最新型のN700Sというタイプは、やはり、乗り心地も実に良い。基本的に新幹線は長時間の移動なので、鉄道ファンでも乗り心地にこだわる人は一定数いる。

 コンセントの位置だったり、防音性だったり、色々だ。


 万が一、初期のタイプが乗る電車となっても、文句を言わないようにするために、N700のどのタイプかは、あまり意識をしないようにしている。



 そうして、僕たちは、お目当ての電車をその新幹線ホームで待ち、数分後に、ホームにやって来た。

 乗客が降りて、折り返し運転のため、一気に清掃作業をする係員たち。これも始発駅、東京駅の醍醐味だ。


「結構、出発時間ギリギリまで、扉があかないんですね。」

 樹里さんが何だかそわそわしている。

「ハハハッ。まあ、大丈夫だよ。数分あれば、乗り切れるから。」

 僕はそう樹里さんに説明する。


「本当、樹里ちゃんは真面目よね。私なんか、やっぱり仕事で忙しい時もあるから、いつもギリギリに乗り込んでるわ。」

 あすかさんが笑っている。咲姉ちゃんも同じだ。


 そんな会話をしていると、新幹線の扉が開いて、一斉に乗客が乗り込んでいく。

 僕たちもそれに続いて、乗り込む。車内に入ると、どうやら、僕たちが乗っている新幹線は、一番新しい、N700Sというタイプのものだった。

 少し新しそうな、LEDの照明。防音を意識した、車内の壁の造り、そして、各席にひとつずつコンセントが配置されている。


 まあ、乗っている新幹線が、東海道新幹線最速の、のぞみ、という列車なので比較的新しいタイプの車両が割り当てられる確率が必然的に高くなるのだが、心のどこかで、僕は新しい最新型の車両に乗れたことに、安堵と、ガッツポーズをするのだった。


 乗車券を確認して、指定された席に座る僕たち。

 山側の二人掛けの席を前後に確保することができた。


 荷物を網棚の上にあげて、東海道新幹線の旅の始まりである。

 僕たちを乗せた新幹線は東京駅のホームを離れ、西へ、西へと進んでいく。


「結構景色が面白いですよ。見ていて楽しいです。」

 僕の隣には、あすかさんが座っている。

「ふふふっ、よろしくお願いします。ハルさん。」

 あすかさんはそう笑って、ニコニコとした表情でこちらを見る。


 早速東京駅を出ると、品川までは、JRの在来線と並走。山手線、京浜東北線、上野東京ラインの各電車を必ず、一回は見ることになる。

 そうして、品川を出て、少しスピードを上げ、多摩川を渡る。


「ハルさんの家の近くですね。」

 あすかさんはニコニコ笑っている。

「そうですね。もう少し、奥に進んだところに、僕と咲姉ちゃんの家があります。」

 僕はそう答える。咲姉ちゃんも、後ろを振り向いて、家の周りに何があるのか、あすかさんに説明する。


 そんな会話をしながら、新幹線は新横浜へ。この駅を過ぎれば、新幹線は本領を発揮し、一気に加速していく。


 どんどんと、周りの景色の移り変わりが早くなっていく。


「やっぱり新幹線は早いね。」

 あすかさんがニコニコ笑いながら、窓の外を見ている。

「はい。長い間、鉄道ファンやってますが、新幹線は大好きです。」

 僕はあすかさんの言葉にそう答える。


「ふふふっ。マー君はやっぱりこうでなくちゃ。」

 咲姉ちゃんも笑っている。

「はい。私も凄く楽しいです。」

 樹里さんもニコニコと笑っている。


 神奈川県、相模の国を一気に駆け抜ける新幹線。途中には、先日一緒に行った、箱根や鎌倉の場所もある。


「あっという間に通過してしまいますね。箱根も、鎌倉も。鎌倉は見えませんが、小田原を通過して、そこから、箱根に行く道も見えますので。」

 樹里さんのいう通り、あっという間に、新幹線は小田原を抜け、箱根へと向かう道も通過してしまう。


「そうですね。あっという間です。新幹線なら。」

 僕はそう言いながら笑っている。


「そうだね。あっという間だね。」

 あすかさんもうんうんと頷いている。


 そうして、長いトンネルを抜けていく新幹線。ここを抜ければ静岡県。


 熱海を抜けて再び、長いトンネル。その長いトンネルを抜けると、そこは、雪国、ではなく、静岡県の平野が広がっていた。

 三島の駅を通過すると、今日は晴れているのか、富士山の山肌が見える。


「富士山の、山肌かな。流石に、上までは綺麗に見えないかぁ。」

 咲姉ちゃんが上を見上げながら言う。

「本当だね。今日はあんまり見えないね。」

 あすかさんがうんうんと笑っている。


「まあ。夏なのでね。よく見るためには、冬の朝、しかも、かなりの早朝の新幹線に乗らないとですね。かなりの確率で見ることができます。」

 僕が二人に説明する。

「ああ。」

「そっか。」

 あすかさんと、咲姉ちゃんはうんうんと頷く。


「たしかに、冬は少し気温が低いし、空気も乾燥してるから。今、夏の時期ですから。」

 樹里さんはうんうんと頷きながら僕の説明を聞いていた。


「そうだね。でも、午前中の早い方の時間だから、山肌が見えただけでも、良い方ですね。」

 僕はそう言いながら、笑っていた。


 そんな会話をしながら、電車は大きな河川、富士川を渡る。

 川の大きさに、驚きの表情をしている、女性陣達。


「あと、三つ、大きな川を渡ります。静岡の川は、自然体に近い、大きな川で、良いですよね。」

 僕はそう言いながら説明すると、皆はうんうんと、頷いた。


 そうして、新幹線は、安倍川、大井川、そして、天竜川と、大きな川の橋を三つ渡っていく。


「本当だ。三つ川を渡るね。」

 あすかさんがニコニコ笑って頷く。

「天竜川って名前、カッコイイな。」

 あすかさんがさらに続けて、僕に言う。

「そうですね。僕も、なんやかんやで、静岡を流れる川で、いちばん好きかもしれません。長野の方から流れてくるそうです。」

 僕はあすかさんに説明する。

「ふ~ん。流石、詳しいね。」

 あすかさんはニコニコと笑う。


 新幹線はあっという間に静岡の西側の都市、浜松へ。浜松のシティーホールの高い建物。これが、浜松の目印。

 その浜松を過ぎると、山側の車窓にもかかわらず、一気に海のようなものが広がる。


「うわぁ~。海だぁ。」

 あすかさんはうんうんと笑っている。咲姉ちゃんも車窓に広がる海に興奮状態だが。


「これは、浜名湖という、湖ですね。まあ、末端部分は、海と接しているのですが、湖の仲間です。」

 僕がそう説明すると。皆は、ああっ、という顔をする。


「なるほど、湖なのね。」

 あすかさんが、うんうんと笑って、なるほど。という顔をする。


「浜名湖のウナギ、聞いたことあります。」

 樹里さんが笑っている。僕もうんうんと頷きながら、浜名湖の景色を見る。


 その浜名湖の橋を渡り終えると、すぐに電車は愛知県に入る。

 豊橋、三河安城を通過し、徐々に、住宅街が増え、そして、商業地帯に車窓は変わり、そして、オフィスビルが立ち並んでいく光景に車窓は変わっていく。

 そんな風景を見ながら、東海地方の中心都市、名古屋に到着。


「やっぱり名古屋ね。大きな町。」

 咲姉ちゃんが降りて行く人を見て、うんうんと頷く。

「はい。たくさんの人が降りて行きますね。」

 樹里さんもその光景を見てうんうんと頷いている。


 そうして、多くの乗客が降りて行った後、新幹線は名古屋駅を出発し、次の目的地へ向かうために、東海道を西へ、西へと向かっていく。


 名古屋の街を抜け、濃尾平野の田畑を抜け、木曽川、長良川、揖斐川を相次いで渡り、岐阜県へ。そこから再び山の中に入っていく新幹線。


「また山の中に入ったね。」

 あすかさんが窓の外を見ながら僕に言う。

「ここが、天下分け目の関ケ原という場所ですね。」

 僕がそう説明すると、皆はああっという顔をして、うんうんと頷いていた。


 その関ヶ原を抜けると、車窓はしばらく平野が続く。本格的に滋賀県に入った証拠だ。


 新幹線の車窓からは、なかなか琵琶湖は見ることができない。少し離れた場所を新幹線は走行しているためだ。

 そして、ようやく、瀬田川という川を渡り、遥か向こうに琵琶湖の風景を捉えると、新幹線はすぐにトンネルへ。かなり長いトンネルである。

 このトンネルに入ったことを確認して、僕は皆に、降りる準備を指示する。


「さあ、降りる準備をしましょう。えっと、網棚の荷物を下ろしてもらって。扉の方へ。」

 僕は皆にそう指示する。


 皆は、網棚から荷物を下ろす。そうして、車両の両端の扉へと向かう。

 そして。それと同時に、『会いに行こう』という曲の新幹線の車内チャイム。


 スピーカーの方を指さし、僕はウィンクする。


「すごい。」

「流石、タイミングバッチリ。」

 樹里さんと咲姉ちゃんはうんうんと頷いて目を丸くして言った。


「まあ、分かってる人は、このトンネルで、いろいろ準備しますね。」

 僕はそう言って、うんうんと頷く。そうして、新幹線は、スピードを落とし、千年の都、京都の町へ。


 京都駅に停車し、扉が開いたと同時に、電車を降りる僕たち。


「ついた。京都だ。」

 あすかさんはニコニコ笑っている。

「本当。京都だ。いつ来ても良いわね。」

 咲姉ちゃんもうんうんと、頷いていた。

「私は初めてきました。実際の歴史が見れるかな。」

 樹里さんは瞳の色をキラキラ輝かせながら、笑っていた。


 そうして、僕たちは京都駅の中央口へ。

「やっぱり大きな駅。」

 僕はそう呟きながら、辺りを見回す。


「すごいね。流石、観光地の駅ね。」

「はい。活気があります。」

 咲姉ちゃんと樹里さんはニコニコと笑いながら、僕に続くように辺りを見回した。


「ふふふっ、やっぱり、この光景を見ると、京都に来たという感じだね。」

 あすかさんはうんうんと頷きながら、笑っていた。


 そうして、僕たちは京都駅を出て、宿泊するホテルへと向かう。

 チェックインの時間はまだだが、荷物はいつでも預けられるので、一度フロントで荷物を預けてもらうことにした。


 そうして、予約をしていた、宿泊するホテルに到着。

 色々と、移動が激しいので、駅前のホテルを予約していた。


「うわぁ、すごく素敵。」

 あすかさんがニコニコ笑いながら、ホテルの外観を確かめる。

 京都の夏を演出する、風流な小さな中庭に出迎えられながら、ホテルへと入っていく。


 フロントで、宿泊者の名前を確認してもらい、今日必要な荷物を大きな荷物から取り出して、改めて、フロントに荷物を預ける僕たち。


「さてと、夏休みの京都へ行きますか。」

 僕の言葉に、皆は頷く。


 こうして、ホテルを出て、京都の町へ向かう僕たちだった。


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