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15.水族館と江ノ電の旅


 僕たちが、この早朝から江ノ島に来た理由。それは、水族館に立ち寄りたいためだった。

 水族館の開館時間である、九時に合わせて、こうして、早朝から江ノ島に来たのだった。


 「ごめんなさい。朝早くに、でも、おかげで、水族館の鑑賞がゆっくりできるようになったので。」

 僕はそう言って、改めて、早朝から集まってもらったことを詫びる。

 首を横に振る、あすかさん、樹里さん、そして、咲姉ちゃんの三人。


 「別に大丈夫よ。すごく楽しそうな場所がいっぱいだから。」

 あすかさんはそう言って、うんうんと頷いている。

 「はい。江ノ島も鎌倉も、沢山の楽しい場所がいっぱいって、昔から言われていますから。」

 樹里さんはそう言って、うんうんと頷き、先ほどから、海の方へと視線を向け、ニコニコと笑っていた。

 「そうね。私も、皆と一緒に来れて嬉しいわ。」

 咲姉ちゃんもうんうんと笑っている。


 新江ノ島水族館と呼ばれ水族館。様々な海の生き物たちに出会える場所だ。

 早速、チケットを購入して、開館時刻と同時に水族館に入っていく僕たち。


 最初の水槽では季節の展示が行われており、この時期は、初夏の水辺のせせらぎを感じさせる生き物の展示。

 今日はサワガニが展示されており、小川のせせらぎ、そう言ったものが感じさせられる場所になっていた。

 「涼しそう。」

 という樹里さんのつぶやき。

 「そうね。この時期は大体、涼しさを演出してくれるよね。」

 咲姉ちゃんがうんうんと頷く。


 順路通り進むと次は、相模湾ゾーンと呼ばれる場所。

 日本近海に生息する、海の生き物たちの展示だ。


 「すごい。近くの海にこんなにたくさん魚が居るんだ。」

 あすかさんは目を丸くして、いくつもの水槽に興味津々。特に、大きな水槽を目にしたあすかさんの表情は、本当に子供のような幼さが垣間見えて、海の生き物たちに興味津々のようだった。

 不思議な雰囲気、だが、どこか美しく輝きを放って、大量の群れで泳ぐマイワシの群れ。

 雄大に泳ぐサメやマンタたち。


 「すごいですね。これが日本の近海。日本はやっぱり島国ですね。」

 樹里さんもうわぁ、という表情をしながら、うんうんと頷いていた。


 「いいね。何度来ても落ち着くわね。」

 咲姉ちゃんもうんうんと笑っていた。


 相模湾の展示の水槽を過ぎると、次はこの世界各地に生息する生き物たちの展示が続いた。


 ここよりも暑い地域の魚がいる水槽にはディズニーの映画にもなった、カクレクマノミたちの水槽、そして、寒い地域の水槽にはオオカミウオと呼ばれる大きめの魚、そして、ミズダコと呼ばれる大きめのタコたちが展示されていた。そして、クラゲのゆらゆら漂う水槽、

さらには未知との深海魚との出会い、そんな水槽がいくつも展示されていた。


 「海の中で世界旅行ですね。」

 樹里さんがニコニコ笑う。

 「本当、アリエル、人魚姫になったみたい。」

 あすかさんの言葉に思わずドキッとしてしまう。人魚姫姿のあすかさんを思わず想像してしまうのは、僕だけだろうか。いや、樹里さんもその言葉を聞いて顔を赤くする。


 「そ、そうですね。」

 樹里さんはうんうんと頷いていた。

 「良いわね。人魚姫。私もそんなことをしてみたいわ。」

 咲姉ちゃんはうんうんと頷き、僕たちのやり取りをほんわかしながら見ていた。


 そうして、いくつもの水槽を抜けていくと、再び寒い海の水槽になる。

 しかし。

 「うわぁ。可愛い。」

 ニコニコ笑うあすかさんの姿。


 「本当に、可愛いわね。」

 そして、それにつられて、思わず笑顔になる咲姉ちゃん。


 「ホントだ。可愛い。」

 樹里さんもどうやら、そう言ったものに弱いようだ。


 寒い海の水槽に居た生き物。それは、ペンギンとアザラシだった。


 海に入るとすいすい泳ぎ、陸にあがるとよちよち歩きのペンギンはやっぱり可愛さがある。

 そして、アザラシも、可愛らしい目で僕たちを見つめていた。

 その奥にはウミガメの水槽もあり、ウミガメたちも可愛らしく僕たちを迎えてくれる。


 見た目が赤っぽい、アカウミガメ。見た目が青っぽい、アオウミガメが居た。


 「すごい、本当に、赤っぽいし、青っぽい。」

 樹里さんが興味津々で、二匹の、種類の違うウミガメを見ていた。

 「本当ね。名前は知っていたけど。」

 あすかさんもうんうんと頷いて笑っていた。咲姉ちゃんもウミガメたちをのんびり見つめていた。


 そうして、最後にやって来たのがイルカショーが行われている場所で、イルカたちがいる水槽。

 丁度、イルカのショーの時間と重複したので、僕たちは座って、イルカのショーを見ることになった。

 イルカの中でも、大きめで、広く分布して生息しているバンドウイルカたちが華麗にジャンプをしている。そして、一緒にトレーナと泳いでいる所を見ると、先ほどのあすかさんのアリエルの発言が思い起こされる。


 「これは流石に、皆さん、人魚姫とかになって泳ぎたいですよね。」

 僕はそう言って、三人に質問すると、三人とも速攻で、首を縦に振り、大きく頷いた。


 そうして、ショーを終えたイルカたちに盛大な拍手を贈り、僕たちはこの水族館をあとにして、少し早めの昼食を食べる。


 僕の大好きな、海の幸満載の海鮮丼は本当に美味しかった。

 他のメンバーも、海の幸の料理をそれぞれ注文し、美味しく食事をしている。


 こういったところも、絵になるので、僕と咲姉ちゃんは思わず写真を撮る。


 「すごいわね。写真を撮って見返していれば、いつもこんな料理を食べてたなぁって、思い出すわね。」

 咲姉ちゃんがうんうんと頷きながら、出来上がった料理の写真、そして、美味しそうに食べる僕たちの写真を撮っていた。

 勿論、僕だって、咲姉ちゃんに続く感じで、写真を撮るのだった。



 そうして、昼食を済ませると、今度は江ノ島電鉄、通称、江ノ電の乗り場へ向かう。

 江ノ電の江ノ島駅から、鎌倉方面へ。


 江ノ電。鉄道ファンにとっても人気の電車だ。色々な車両の種類があり、今も変わらず、僕たちを楽しませてくれる。

 踏切が鳴り、江ノ電が登場。いちばん在籍編成の多い、1000型の江ノ電がやって来た。

 鎌倉方面へ向けて出発する僕たち。先頭の行き先表示も、アジサイを背景にした『鎌倉』と書かれている行き先が表示されていた。


 江ノ島を出ると、いきなり路面電車区間。次の腰越駅まで車と一緒に並走していく。


 「すごい、いきなり路面電車になりましたね。」

 樹里さんが興味津々で、車窓を見る。

 「そうですね。ここの駅間も、鉄道ファンにとっては人気のスポットですね。」

 路面電車区間を車窓に焼き付けながら、江ノ電は腰越駅へ。ホームが狭いため、前よりの車両だけドアが開く。後ろの方の車両は、まるで路上に立ち往生するかのように停車していた。


 江ノ電は腰越駅を発車。今度は民家の合間を縫うように走り抜けていく。

 「いつ来ても凄いよね。民家のギリギリを走るもの。」

 咲姉ちゃんはどこか緊張している。しかし、その表情もここまで。民家の間を走り抜けると、今度は、一気に開けた場所へ。そして。車窓右側には雄大な海が広がる。


 「すごい。海だ。」

 あすかさんはニコニコと笑って、海側の車窓を眺める。

 車両の移り変わりのギャップ、これも江ノ電の魅力の一つ。しかも、速度もゆっくり走るので、景色の移り変わりのテンポも丁度いい。


 海沿いの鎌倉高校前、七里ガ浜、そして、稲村ケ崎の駅を停車しながら江ノ電は海と別れを告げ鎌倉の市街地へ。


 「なんか寂しい感じがします。」

 樹里さんがそう言うと。

 「まあ、大丈夫、これからその場所に行くし、何なら、コーチの家の関係で、七里ガ浜の方にも戻ってきたりしますので。」

 僕がそう説明すると。


 「そうですね。これから、サーフィンショップに行くんでしたよね。」

 樹里さんがそう言うと、僕たちはそろって頷いた。


 その間に、江ノ電は極楽寺を発車し、トンネルを抜けて、次の停車駅の長谷駅へ。


 「次の駅で降ります。」

 僕は皆にそう声をかけ、皆は一斉に頷いた。


 そうして、江ノ電は大仏寺の最寄、長谷駅に停車。

 ドアが開くと同時に、僕たちも、大仏寺に行く客に交じって車両を降りる。


 「面白かったです。江ノ電の車両。路面電車になったり、海が見えたり。」

 樹里さんはニコニコ笑いながら、僕に向かって行った。


 「興味持ってもらえてよかったです。鉄道ファンにとって江ノ電は人気の電車の一つなので。」

 僕はそう樹里さんに言う。あすかさんも咲姉ちゃんも、江ノ電の車両、そして、江ノ電の車窓に大満足のようだった。


 そうして、僕たちは、大仏寺に向かう、観光客とは逆の方向である由比ヶ浜の方へ向かって歩き出したのだった。

 

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