13.再び東京駅(馬場と鹿山のざまぁ!!)
軽井沢の旅行から次の週末。つまり、六月最初の週末、僕は、咲姉ちゃんと一緒に、東京駅に来ていた。
東京駅の丸の内の地下改札。奇しくも、ゴールデンウィークの初日、馬場と鹿山にはめられた同じ場所だ。
咲姉ちゃんは、この場所に、馬場と鹿山を呼び出したようだ。
「やっぱりすぐに飛びついてきたわ。私と一緒に、撮影旅行に行けると言うので。」
咲姉ちゃんはにやにやと笑いながら、僕に向かって親指を立てる。
それを踏まえたうえで、咲姉ちゃんは方々に協力を要請したようだ。
先ずは、咲姉ちゃんと僕で、馬場と鹿山に接触する。
丸の内の地下中央改札、その大きな柱の所に、馬場と鹿山は待っていた。
「おはよう。馬場君、鹿山君。」
咲姉ちゃんは、よそよそしい笑顔で声をかける。
「おはようございます。早川先輩。」
「いやぁ~、先輩と撮影旅行へ行けるなんて、嬉しいっすよ。」
馬場と鹿山はにやにやと笑いながら、咲姉ちゃんに声をかける。
「で、私と一緒に行く、条件なんだけど。」
咲姉ちゃんは、こう切り出す。
「おおっ、そうでしたね。条件は何ですかぁ?」
「早川先輩となら、どんな条件でも、ウェルカムですよ。」
馬場と鹿山はうんうんと頷く。
「この子も、一緒に連れてって欲しいのね。」
咲姉ちゃんはそう言って、手招きをする。そうして、僕はその手招きに応じて、馬場と鹿山の元へ。
「よろしくお願いします。野田です。」
僕は馬場と鹿山に頭を下げる。半分は下げたくなかったが。
「えっ、お前、何でここに?」
「えっと、君、確か、写真部以外の部活に入ったんじゃなかったけ?」
馬場と鹿山は表情をすぐに変えて、僕を見る。
「ふふふっ、実は、私の一存で、この子には、二人が課した入部テストの再試験を実施してもらったのよね。その、再テストの写真を二人に渡して、入部をお願いしてみましょう。」
咲姉ちゃんは僕を促す。そうして、写真を撮りだす。
「入部テスト?」
「再試験?」
二人が困惑する。馬場は鹿山の肩を叩き。
「ちょっとすいません。」
と、二人は僕たちに背を向けた。
そして、二人は内緒話をする。
「な、何で早川先輩が、入部テストのことを知ってるんだ?」
馬場は鹿山にそう話す。
「アイツもいるということは、アイツが早川先輩に話した可能性が‥‥。」
鹿山は馬場にそう耳打ちをする。
「どうすんだよ?アイツは早川先輩に連絡できるような心境じゃないだろう。」
「まあ、話だけでも合わせておきましょう。」
馬場と鹿山はうんうんと頷き、僕と咲姉ちゃんの方を向く。
「あのっ。」
僕は二人に声をかける。
「僕、やっぱり、写真部に入るのを諦めきれなくて、その、再試験をしていいということだったので、再試験の写真を持ってきました。見ていただけますか?」
僕は、馬場と鹿山に、写真を渡す。そう。彼らが課した、“人をモデルにした写真”を。
しかし、その写真を見た瞬間。
「えっと、野田君、これだと不合格だねぇ。」
馬場は深呼吸をして、堂々と僕に向かって言う。鹿山も同じくうんうんと頷いている。
「何でですか?人をモデルにした写真ですが。」
僕はそう言うと。
「だってこれ、大人気グラビアアイドル、糸崎あすかちゃんの水着写真じゃん、生写真をコミケかどっかで購入したのかな?それとも、フライデーとか、プレイボーイとかの切り抜きかなぁ?」
鹿山はそう説明する。
「そして、こっちの女の子は、きっと、糸崎あすかちゃんの、事務所の後輩の新人グラドルでしょ。これも、どこで購入したのかな?コミケかな?それとも、アキバかな?」
馬場はうんうんと頷き、僕に問いかける。
「いいえ、本物です。」
「はい。正真正銘、ここに居る、野田真晴さんが撮ったものです。」
僕たちの後ろから声が聞こえる。
そうしてきてくれたのは、あすかさんと、樹里さんだ。
そう、彼らに渡した写真は、先日の箱根旅行の時に撮ったものだ。
「えっ、ほ、本物?」
「そ、そんなバカな。」
馬場と鹿山は、本物の大人気グラドル、糸崎あすかの登場に驚きを隠せない。
「野田君とは、ネトゲのパーティーで知り合いました。この写真はその時のオフ会で撮ったものです。」
あすかさんは二人にそう説明する。樹里さんも大きく頷く。
二人は、相変わらずポカーンとしている。
「そ、そんなことって。」
「あり得ないだろう。何で、こんな陰キャ撮り鉄が、先輩と幼馴染だけでなく、大人気グラドルとも知り合いだなんて、世の中不公平だ!!」
馬場と鹿山は狂ったように叫びをあげる。
「で、もう一つの条件んなんだけど‥‥。」
馬場と鹿山の叫びを制止するかの低いトーンで、咲姉ちゃんが鋭い目つきで、馬場と鹿山を見る。
「二人とも、携帯の写真を見せてくれる?」
咲姉ちゃんは二人に向かってそう言うと、二人はさらに、ヒヤヒヤした顔になる。汗まみれの顔になる、馬場と鹿山。
「い、嫌ですよ。いくら、早川先輩でも‥‥。」
「そ、そうっすね‥‥。」
二人の呼吸はさらに乱れる。
咲姉ちゃんは別の方向を見て頷く。
そして。男性が二人、馬場と鹿山に近づいて来る。
「えっと、そちらの人は。」
馬場が咲姉ちゃんに問いかけてくる。
「すみません、ご挨拶が遅れました。早川咲の父です。」
「野田真晴の父です。よろしくお願いします。」
二人の男性、そう。僕と咲姉ちゃんの父親が馬場と鹿山の元に駆けつけてきた。
そうして、父親二人は、馬場と鹿山の肩を持つ。
「えっと、どういったご用件でしょうか?」
鹿山は二人の父親に問いかけると。
「うん、そうだね。咲と真晴君が幼馴染なのは、実は僕たちのつながりでもあるんだよ。」
咲姉ちゃんの父親が二人に向かって言う。
「そう、僕と、こちらにいる、咲ちゃんのお父さんは、同じ職場の同期でね。今でも、同じ職場で、切磋琢磨しているんだよ。」
僕の父親はうんうんと頷きながら説明する。
馬場と鹿山もその説明に納得する。
「あの、同じ職場というと。どちらの職場で‥‥。」
馬場は二人の父親に聞くと、二人の父親は、ジャケットのポケットからあるものを取り出す。
「僕たちは、警察だよ。さあ、娘のいう通り、携帯を出して。」
そうして、ポケットから取り出した警察手帳を、馬場と鹿山に見せる、二人の父親。
そう、僕の父親は警察官、だから、厳格な父親だったし、勤務時間も複雑なので、家に帰る時間も不規則で、家に居ても、あまり父親に会わないのが常だった。
そして、咲姉ちゃんの父親も、僕の父親と同期の警察官。こちらは、娘が犯罪に巻き込まれたことを知り、二人をとっ捕まえようと熱意がかなりあった。
警察という言葉を聞いて、真っ青になる馬場と鹿山。
「「は、はいっ。」」
二人とも、急に声が裏返る。
そうして、二人の父親に携帯、スマホを渡す。そして、スマホをチェックする父親。
「あったよ。咲。真晴君、君が見た画像はこれだね?」
咲姉ちゃんの父親が、馬場の携帯を僕に渡してくれる。
生まれたままの咲姉ちゃん、おそらく、顔と裸体を巧妙に合成した画像。僕は、はいと頷く。
咲姉ちゃんも覗き込む。そして、意を消したかのように、馬場と鹿山の元へ近づく。
「咲、いったん任せるよ。」
咲姉ちゃんの父親は、そう言って、馬場と鹿山の前に促す。
「どういう事?これ?」
咲姉ちゃんは馬場と鹿山に聞く。
「えっと、何でしょう?」
「わ、わかりません。」
その言葉を聞いた途端、咲姉ちゃんの表情が変わり。
ベシッ、バンッ。
咲姉ちゃんの平手打ちが、馬場と鹿山のそれぞれの頬に、鈍い大きな音を立てて、直撃した。
「いい加減にしなさいっ!!よくも、私の大切な幼馴染を傷つけたわね!!」
咲姉ちゃんの大声。
「「ひゃっい。」」
馬場と鹿山は狂ったような叫び声をあげる。
「そして、私まで利用して、ふざけないで!!」
咲姉ちゃんの叫び声は、馬場と鹿山の全身に強く堪えたようで。口をぽかんと開けながら、意味の分からない声なき声が、二人から出ていた。
そしてさらに、二人の前に、少し年を取った中年の女性が現れる。
「紹介するわね。私のお母さん。」
咲姉ちゃんは、二人に、その女性を紹介する。
「こんにちは、咲の母です。そして、私は、貴方たちの通っている付属高校の母体となる大学で、法学部の教授をしています。あなたたちがやって来たこと、そして、私の立場。これが何を意味しているか分かりますか?」
咲姉ちゃんの母親の言葉に一気に表情を青ざめる馬場と鹿山。
「こんな、恐喝、詐欺まがいのことをするような人は、私たちの組織には必要ありません。付属高校の生徒であってもです。後ほど、付属高校にも報告します。恥を知りなさい!!」
咲姉ちゃんの母親がそう言って、馬場と鹿山に向かって言う。
「「ひ、ひぇぇぇ~。」」
馬場と鹿山は固まってしまう。そして。
「さあ、もう大丈夫よ。咲、真晴君、後は私たち大人で解決するから。」
咲姉ちゃんの母親はそう言って、僕たちに安心させる。
僕と咲姉ちゃんは、僕の父親と、咲姉ちゃんの両親にお礼を言って、頭を下げた。
そうして、それぞれの親たちは、馬場と鹿山を連れて、東京駅をあとにするのだった。
僕は協力してくれた、咲姉ちゃん、そして、あすかさんや樹里さんにお礼を言って、深々と頭を下げた。
みんな全員、笑顔で、良かったねと言ってくれた。僕も本当に良かったと思う。
その日はこれで解散となり、週末が開け、再び、学校へ登校すると、馬場と鹿山の退学処分が言い渡されていた。さらには写真部も活動休止に。
「ごめんね。もっと早く気づいていれば。」
咲姉ちゃんが僕に向かって謝る。
「ううん。大丈夫。誤解も解けたし、こうして、また、仲良くできそうだから。」
僕は咲姉ちゃんに、ニコニコと笑って頷く。
「ねえ。マー君。」
咲姉ちゃんがこう切り出す。
「私も、あすかさんや樹里さんの仲間に入れてもらってもいいかしら。写真部は活動休止だけど、部活に入らなくても、こうして、活動は出来るわけだから。ねっ。」
咲姉ちゃんはニコニコと笑っていた。
「僕は、勿論いいよ。二人にも相談してみる。」
僕はそう言って、咲姉ちゃんの質問に二つ返事で頷いた。
「ありがとう。それじゃ、これからもよろしく。」
咲姉ちゃんがニコニコと笑っていた。
その後、あすかさんと樹里さんも、ネトゲのチャットでOKをもらい、次のオフ会は、咲姉ちゃんを交えて、撮影旅行をすることになった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
今回も無事にざまぁを迎えました。
これ以降は、少しゆっくりめに更新していき、日本の色々な場所へ向かう、ラブコメ作品を目指して行きます。
そして、新たにざまぁ要素が入れられれば、ざまぁの要素も取り入れていきたいと思います。
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それでは。




