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鉄樹開花

雨霞

作者: 人格破綻者

久々に書いたので読みづらかったら申し訳ないです

そのうち書き直すかも


その日〇〇が亡くなったことを知った



雨が…多分雨が降っていた日のことです

その日は久しぶりの休みで図書館に行きました

調べ物に夢中で全然外に出てなかったので天気はよく覚えてなくて

でも帰りがけ濡れていて視界が悪かったので多分雨が降っていたと思います



司法解剖医として毎日毎日何度も見た

見慣れてるはずのご遺体

忙しさにかまけてここ数ヶ月ぶりに会った彼はいつものように笑わず

暖かった手も冷たかった

どこか現実味のない彼の姿に私は近寄るのを躊躇した


様子のおかしな私に同僚が聞く

「お知り合いですか?」

「…友人です」

それ以外の関係を表す言葉など私たちの間にはなかった


学生時代からの友人で、穏やかで優しい彼と無愛想で優しさに欠ける私は凸凹コンビとして有名だった

それでもウマがあったのか長々と付き合う内に恋を知った

彼の側は居心地が良く、温かった

彼の事は愛してはいたが、彼とどうこうなる気はなかった

彼には私のような冷血な女ではなく、彼と同じように温かい人と寄り添って欲しかった

けれど彼はそれなりにモテていたとは思うが、女性絡みのことはついぞ聞いたことはなかった

そうしてダラダラと友人関係を貫いた果てが今のこの状況だった

人の死は突然だと知っていた筈なのに結局は他人事だったのだ


彼は窒息死だった

水濡れもない、絞痕もない

それどころが首を掻きむしった跡もない

薬物所見もない

不思議なご遺体に事件性があるのかないのか

それを調べるためにここに運ばれてきた


目の前に彼のご遺体があるのに彼が亡くなったというその事実がうまく処理できない

夢のような感覚であった

なのに本能では彼のご遺体に近づく忌避感がある

不思議な感覚だった


それでも同僚に声をかけられれば足はいつも通り歩きご遺体の前に立ち

口はいつも通り処置開始の言葉を紡ぎ

手はいつも通りの処置をする


体と心がちぐはぐで気持ち悪かった


「うわっ!」

喉を開いたとき同僚の驚く声が響いた

声に出さないまでも私も驚いた

彼の窒息の原因は花だった


花吐き病という病が最近散見されるのは知っていた

片想いを拗らせると口から花を吐き出すようになる

病気を治すためには相手に想いを告げて両想いなり、振られるなりして恋に決着をつけなければならない

珍しい病だが酷くなると死に至るいうので職業上、知識としては仕入れていた

まさかその知識が自分の想い人に役立つとは微塵も思っていなかったが


花は喉だけに留まらず、肺や胃にまで未消化の物が詰まっていた

口から吐き出すのが間に合わないほど末期だったということは恐らくない

彼のご遺体の周りに吐き出された花はなかったから

恐らく彼は花を吐き出さなかったのだろう

苦しかっただろう彼の最期を思い同情した

と同時にまるでその想いを誰にもあげたくないと言わんばかりに、自分の体にしまってしまったような有様に人生で初めて嫉妬した


花を全て取り除き一種類ずつ写真を撮り、記録していく

種類の多さが相手への思いの丈を表してるようで嫌気がさしそうだった

「何種類あるんすかねぇ、これ…」

純粋に嫌気がさしていたのだろう 

辟易とした声で告げた同僚に苦笑して告げた

「彼は生前、花屋だったから花には拘りがあるんだと思う」

それに納得した顔をしてまた無言で仕事を続けていく

そうして手分けして記録して行くうちに気づいた

彼の体に詰まっていた花達はまるで場所ごとにブーケを作ったかのような統一感があった


それを見て以前彼が言っていたことを思い出した

花束を作るときに花言葉を使って、手紙のように意味を持たせることがあると

渡される事もなく日の目も見なかった想いは誰に宛てた手紙だったのだろう

それが無性に気になった


ご遺体の処置を終え、花の記録も終わった

事件性はなしと伝えて彼のご遺体はご家族の元に返された

先ほどまで彼のご遺体の処置をしていたというのにやはり現実感はわかなかった

自分はこんなに現実を見るのが下手だったのだと知った


彼が亡くなっても変わらない日常

その筈なのに何故か最近集中力が続かない

眠りも浅い

疲れも取れない

上司は叱りつつも同僚に何か聞いたのか、心配して休みをくれた

日の高い内に外を歩くのは久しぶりだ

何気なく見上げた太陽の眩しさに視線をおろしたら花屋があった

ふと彼の中に詰まっていた花達を思い出した

あれらは誰に宛てられた物だったのか

どんな意味だったのか

意識したら矢も盾もたまらず調べてみる事にした


職場に一度戻り彼の資料を引っ張り出す

良くないとは知りつつ花の名前と確か色や本数も関係があったと思い出し、それらをこっそりメモする

そのまま図書館に行き分厚い植物図鑑を数冊積み上げた

積み上げた中から一冊ずつ彼の想いを巡る

彼の体に詰まっていた花達

それらは花屋の彼に相応しく多種多様で、それでいて彼の作るブーケのように沢山の想いで纏まっていた


紫蘭、スイートピー、アイビー、ポリンシャス


ピンクのカラー、赤いバラ4本、ピンクのチューリップ、白のトルコキキョウ、オオデマリ、ユーカリ


桜、ピンポンマム、赤いラナンキュラス、赤いゼラニウム、ローズリーフ


青バラ5本、かすみ草、バーデンベルギア、クチナシ、ユーカリ、ダスティミラー



花の意味を知れば知るほどページをめくる手が重くなっていく

彼の体に詰まっていたのは全て熱烈な愛の花言葉だった

彼はあんなになるまで誰かを愛していたのだろう

知識としては知っていたその現実が今更やってきて重くのしかかってきた

苦しくて苦しんでそれでも捨てられない恋に身を焦がして焼かれてしまったのだ


恋焦がれた彼が愛に身をやつして亡くなった

この花達の意味を知りようやく彼の死を実感して泣き崩れた


彼の死因は恋なのだと知ったとき私の恋も死んだ



その日恋心が亡くなったことを知った



花詰まってた場所はキスする場所の意味も絡めてあります

喉は執着(永遠に忘れないで)、腹は安らぎ(幸せな思い出)、胸は欲望(愛)


ネットで画像検索して一応見たけど花束として成立するかはわからない

微妙だったらすみません

出来れば葉っぱとかにも意味持たせたかった人生でした


食道

紫蘭+スイートピー+アイビー+ポリンシャス

死んでも離れない、忘れられない大切な思い出、それがほのかな喜び→死んでも一生忘れないでね、ずっとそばにいるよ


右肺

ピンクのカラー+赤バラ4本

情熱的に一生愛し続ける


白のトルコキキョウ+オオデマリ+ピンクのチューリップ

可愛らしいあなたに永遠の愛を誓います


左肺

桜+ピンポンマム+赤ラナンキュラス

あなたの魅力に満ちた微笑みを愛してます


赤ゼラニウム+ローズリーフ

君がいた幸福に身を焦がす→恋に死ぬ



バーデンベルギア+クチナシ

あなたに出会えてわたしは幸せでした


青バラ5本+かすみ草

あなたに出会えた幸福な奇跡


ダスティミラー+ユーカリ

幸せな記憶があなたを支えます→一生忘れないでね念押し


彼女への恋を拗らせてまずこのまま忘れられてたまるかとまずユーカリとダスティミラー

この二つは胃液で若干溶けてる


内臓の積載量とか分からんからこんな量入るかよとかあったらすみません

逆にもっと入るよとかあったらまだ詰め詰めしたい

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