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90 お礼

さて、事件から六日が経過した。


 六日間あったことをはなそう。


 心配していたカリヤ先輩だけど三日目にはケロッとしていた。


 まだ少し悲しそうにしているときはあるものの、凹んでいたときに比べるとすんごい元気になっている。


 多分、お兄さんであるネレーオさんが何かいったんだろう。


 あとネレーオさんの見舞いに行ったら歓迎された。足も時間をかければ問題ないらしく、治ったら仕事に戻って普通にダンジョン攻略したといってた。


 あんな目にあってるのに、またダンジョン行きたいとか心臓に毛が生えてるとしたか思えない。メンタル

鋼できてるんじゃないの?って思ってたりする。なんか謎のメンタルの強さはカリヤ先輩と似てる気がする……。


 ビーグル先輩の方は自分か妹ちゃんにいいことがあったのか上機嫌だ。鼻唄歌って回りから怖がられてた。強面だし、この前食堂でチンピラみたいな絡み方してたからだろうね。本人全く気にしてなかったけど。


 ナーズビアとも、ちょっと話した。家から手紙が届いたとかで今回の件で手を組んだ貴族メンバーと仲良くしとけとかそんなのだったらしい。


 手紙の内容とあまり関係にない私にわざわざこれを言ってるあたり不服があったんだろう。多分誉めてほしかったんだろうなって言うのは何となく分かった。下の子の拗ねかたに似てたからね。


 だからつい癖で頭撫でたけど、とても驚かれた。頭撫でられたことが無いんだとか。頭を撫でる手にすり寄ってくるのは猫みたいで可愛かった。


 あと、例の背徳行為をしていた女軍人や他の裏切り者だがきっちり処罰された。王家の求心力だとか、軍人への懐疑心だとかが出かねないから表沙汰にはしていない。


 それからリンデヒル商会だが被害者として扱われることになる。軍人に脅されたのでネレーオの情報を売った件は情緒酌量の余地ありと見なされたらしく、慰謝料とか払って信頼回復に勤めているんだとか。


 ネレーオは家族や商会が人質にとられていたのならば仕方ないと許していたけど、それではいけないと商会の長が自主的にやってるんだって。


 表にでなかった話しはこの二つだったかな。


 あと事件から三日くらいは目のことを言われ続けていた。


「永華、目は大丈夫?」


「あれから三日たってるのに……大丈夫だよ。心配してくれるの?」


「そ、そうよ!わるい?」


「いや全然、ありがとう」


「ふん!……あ、髪染めは大丈夫なの?」


「バッチリ、手伝ってくれてありがとうね。元の色はあまり人に見せたくなくてさ」


「別に良いわよ。その代わり、今度打ち合いしましょう?」


「ショッピングとかじゃないあたり、とてもミューらしい」


 あの時、外に出たとき襲撃犯の姿が見えなかったからてっきり罠だけ仕掛けて帰ったのかと思ったが騎士曰く気配がするのだと。


 と言うわけで魔眼の再現を使って探してみると、それっぽいのがいた。透明化してる人間とか怪しすぎるので適当にかまをかけて篠野部に色水をぶっかけてもらったらビンゴ。


 そんな感じで魔眼の再現を使ったからかとても心配されてる。この三日間、一日に一回聞かれている。


 篠野部にはジッと見られることが増えた。


「心配性だな〜」


 とか思うが言わないでおくことにした。凄い言い返される気がしたからだ。


 ……いや、うん。まぁ、わかるんだけどさ。


 魔力不足は二日で治ったし、出血のしすぎは輸血で治ったので心配しなくてもいいんだけどね。今は全快したし。


 それが六日間の間に起こったことだ。


 そして休み明けの今日。私たちは集まって戦闘訓練をしていた。


 理由は、前と変わらず。カリヤ先輩対策がなくなったってだけ。


 相変わらず黒いドラゴンはトラウマ気味だし、試験で事件を起こした“誰か”対策でもある。


「炎よ、彼の者を燃やし邪なる者を焼き払え!ファイアボール!」


「あぁ!また燃えた!」


 現在、私たちは魔法有の鬼ごっこをしている。


 そして現在進行形で私が逃げてであるベイノットに追いかけ回され、逃げるために砂を舞い上がらせようと作った魔方陣を発動させて直ぐに燃やされてしまった。


 今は持ち前の人体能力で木から木に飛びうつったり、糸を使って逃げ回っている。


「なんで追い付けないんだよ!身体能力おかしくないか!?」


 加速の魔方陣を服の下に隠してるからです!


 何て言えるわけもなく必死で飛び回る。


 次に煙幕をはるための魔方陣を作って発動させる。


「鎌鼬、風切り音色をこの者に!ウィンドカッター!」


 永華が張った煙幕は風の刃で多少霧散するが、隠れてしまった魔方陣に当てるのは難しかったのか再度魔方陣が壊されることはなかった。


 後ろから悔しそうなベイノットの声が聞こえてくる。


 煙幕の発動が間に合ったことに安堵しつつ、急いでその場からはなれていく。


 進行方向ではなく、左側に曲がっていき近場の木に登って隠れる。


 少しして煙幕の中をベイノットがつっきてきて、永華がどこに消えたのか悩んだ末にまっすぐに進んでいった。


 ベイノットを見送った永華は戻ってこないことを確認してから元々進んでいた方向を逆走していく。


 これなら早々、鬼であるベイノットに遭遇しないはずだ。多分。


 ベイノットが進んでいった方向から木が倒れていく音が聞こえた。誰かが見つかって、さっきまでの永華のように逃げ回っているんだろうな。


 それか十数分後、永華はベイノットに捕まり、時間ギリギリまで残っていたのはミューとメメ、カルタの三人だけだった。


「うわ〜、悔しい〜!せっかく逃げきれたと思ったのに〜!」


 しかも残り時間、あと数分だったのに!


 そう言って走り回った疲れから地面に座り込んでいると、少し離れたところで地面に寝転がって喋ることすらままならなくなっているレーピオがいた。


「……つ、つかあ……れたあ」


「レーピオ、お前ほんとに体力ねえな」


 ローレスが呆れた様子でレーピオを見る。


 レーピオ、私達の中で一番体力が少ない。次は篠野部、そんでララ。


 ちなみに一番体力があるのは海出身で泳いでる影響か体のあちこちが鍛えられてるメメ、次点で私達の中で一番体格の良いベイノット。


「うぅ……これでも最初の時よりも成長したんですけどねえ」


 まぁ、確かに参加した当初のレーピオは普段から外に出ず勉強していることから体力があまりなく直ぐにバテていた。


「みっなさ〜ん、飲み物いります?」


 そう言ってコップをお盆に乗せてやってきたのは今日の監視役のニーナ先生だ。


「先生が持ってきた水とか何かしら仕込まれてそうで嫌よ」


「酷くない?」


 ニーナ先生、たまに生徒や先生、教員にいたずらを仕掛けて驚かせているという前科がいくつもある。


「アタシ、髪が七色になるなんてごめんよ」


「それ、この前ザベル先生がなってたやつではありませんか」


 ローレスが思い出したからか小さく吹き出す。


「んふっ……」


 今から思い出しても笑えてくる光景だ。


 だって普段から真面目て表情が早々変わらないザベル先生の髪がゲーミングカラーになってたんだよ?色取り取りに変わっていってたからね。


「いや、お疲れの君たちにイタズラ仕掛けるほど子供じゃないですから〜」


 そういってコップを配っていく。飲んでみるも誰にも何も起こらないところを見るに本当に何も入れていなかったらしい。


 言い方が子供っぽい。


 ニーナ先生はイタズラっ子なのと、たまの言動で子供のような人に思える。


 たまにザベル先生やマーマリア先生に怒られてたりしてるし。


「そういえばお客さんきてますよ」


 そういったニーナの後ろから出てきたのはカリヤだった。


「ごきげんよう、皆さん」


 綺麗なカーテシーだ。流石、令嬢。


「カリヤ先輩だ!お美しい!」


「ローレス、お前元気だな……」


「カリヤ先輩ではありませんか。話しは聞いてたけど元気そうで嬉しいですわ」


「あら、また兄さんに用事かしら?」


「……」


「こんな格好ですみませんねえ……」


「起き上がれすらしないのね……」


「例の事件で何かありました?」


 返す反応は各々違う。


 カリヤは動けないほど疲弊したレーピオやララ、ローレスの言葉に苦笑いを返しながら質問に答えた。


「事件の話し、になるのでしょうか?本日はお礼をしたく、参りました」


 そういったカリヤが取り出したのはチケットのようなものだった。


 近くにいたミューが受け取ると目を見開いた。


「こ、これ、チケットの倍率も値段も高いけど、その分満足感半端ないって噂のテーマパークのチケットじゃない!」


「あらあ?久しぶりに見ましたねえ。貴族もよく利用するから警備ハンパないんですよお」


 テーマパーク?


 この国に、っていうか、この世界にテーマパークなんてものあったんだ。てっきりその手の類いは存在していないと思ってた。


「それは巻き込んでしまったお詫びと、協力してくれたお礼ですわ。私のお小遣いから支払いましたので、どうぞ受け取ってくださいまし。楽しさはつい先日、友人と仲直りするためにいった私が保証しますわ」


 カリヤはニッコニコの笑顔だ。


 多分、友人ってビーグル先輩の妹なんだろうな。だからビーグル先輩ご機嫌だったのか……。


 ミューの話から察するに高いものだと思うんだが良いんだろうか。


 貴族の金銭感覚はよくわからない。


「い、いいの?」


「一回行ってみたかったところだ!」


「なんですの、それ?」


 困惑するミューに目を輝かせるローレス、よくわかってなくて首をかしげるメメ。


 カリヤは笑顔で、そのチケットは好きにしてくれて良いといった。


 テーマパーク、久しく行っていないな。


 永華達は娯楽施設のチケットを手に入れたことに喜び、目を輝かせる。カルタもテーマパークに興味があるのか、チケットが気になっているらしい。


 わいわい騒いでいると何を思ったのかカリヤがもう一つ提案をしてきた。


「私も訓練に混ぜていただきませんか?」


「へ?」


「うふふ、体調不良とはいえ一年生に負けてしまったことが許せなくて再戦を申し入れたいんです」


「さ、再戦?」


 決闘後のビーグル先輩の言葉を思い出す。万全の状態だったら最後の飽和攻撃も耐えていたかもしれないと言っていた。


 今の状態で勝てるかはわからないが、チケットを貰ったし受けてしまおうか。


 一度戦っているし、善戦できれば良いな。


 なんて半ば敗けを覚悟して勝負を受ける。


 結果は案の定、永華の敗け。


 負けず嫌いに火が付いたのか、永華の当分の目標は打倒カリヤになった。


 テーマパークに関してだが、今週の休み頭に全員で行く事になった。

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