84 別行動2
メイメア視点
時刻は永華達がダンジョンに入る少し前、メメはララとカリヤ、ナーズビア、マーマリアと一緒に町に出ていた。
レーピオ達と同じように建前を引き下げて目的のためにあちこちをまわっている。
表向きはショッピング。
もう十一月に突入し防寒具を一新しようとメメがララとカリヤを連れ出し、使用人がこれないからマーマリアを代打にたてた。ナーズビアはたまたまいたので荷物持ちに任命されたという設定なのです。
「さぁ!モコモコあたたか防寒具を買うのです!」
「テンション高くない……?」
「いつもあんなのよ」
後ろからナズちゃんとラーちゃんの呆れた声が聞こえましたけど気にしませんわ!
メメは海で生まれ育ったので寒さには強いのです。
強いのですけれど人の体である以上はある程度の防寒対策をしなけれ体調を崩してしまいかねないと聞き、この設定にした次第です。
「私もコート新調しようかしら……」
「先生もお買い物しますか?マーちゃん先生ならばトレンチコートが似合うと思いますわ」
「先生まで呑気な……」
「お二人とも、恐ろしいぐらいに落ち着いていますわね……」
私とマーちゃん先生は普段通り、いつもと変わらない振る舞いをしているとナズちゃんには呆れられリヤちゃん先輩はビックリしていました。
「危険があるかもしれないのに、なんでそんなに落ち着いてられるんだか」
「私達、貴族が危険な目に遭うかもしれない状態におかれるなんて、いつものことでしょう?」
「いや、そうだけど……。今回は自分達から危険に向かっていってるんだから話は違うでしょ。確かに演技も設定も大事だ。けど、あまりにも二人そろって緊張感が無さすぎる!」
ナズちゃんは私達に近づいて、私達だけに聞こえるような小さい声で言った。
確かにナズちゃんの言うことは正しいですわ。
「言い分はわかりますけれども気がついていないフリをする、処世術の一つですわよ。ナズちゃん」
「それもそうか……。というか、その呼び方やめろ」
「むぅ、えーちゃんの言う通り嫌がる方はいますのね」
えーちゃんと学校で再開したときのことを思い出しますわ。
確か似たようなことをザッ君先生にも言われましたわね。
“嫌がる人もいるかもしれないので、その時はすぐにやめるように”とか、“普段なら別に構わないが正式な場等ではきちんと名前で呼ぶように”とか言われましたわ。
「えーちゃん?」
「永華のとこですわ」
「仲が良いのですね」
「えぇ、とっても!」
そういえばナズチゃ__ナーズビア君は私たちの中で唯一まともに接点があるのはえーちゃんだけでしたわね。
「ふーん?」
「そういえば、ナーズビア様は永華さんと仲が良いのでしたっけ?」
「いつの間にって感じだけど、永華の性格なら変でもないわね」
あら?私えーちゃんの口からナーズビア君の名前を聞いたこと無いのですけれど、最近仲良くなったのかしら?たしか始めてあったのは入学早々でしたわね。
「仲が良いというか、お気に入りなだけですよ。仲良く見えるのは永華が基本的に誰にでも友好的だからでしょう」
永華は基本的に友好的、その言葉にメメは深く頷いた。
何せ二度目ましてでバグもあだ名呼びも許してくれて、陸の文化を教えてくれたので頷くのも妥当なのだ。
「決闘で負けてほしくないから、カリヤ先輩の情報をリークするくらいにはね。さほど役に立たなかったようですけど」
「そんなことしてたんですの?」
「貴女だって似たようなことはしていたでしょう?叱責されるいわれはありません」
「別に不服を言ったわけではありませんわ。私、てっきり八人の中の誰かがやっていることかと思っていたんですの。ナーズビア様だったのですね」
あらま、お気に入りにてを出されたからかナーズビア君がカリちゃん先輩に噛みついてますわ。
「まぁまぁ、ナーズビア君。刺のある言い方はやめましょう?二人の話はすんでいますし、今はやるべきことがあるのですから」
マーマリアがナーズビアをなだめると少しだ待って小さく息を吐いた。
「自分の悪い癖ですね。お気に入りに手を出されると攻撃的になるんですよ。すみませんね」
「構いませんよ。むしろ、あんなにあっさりと許されて協力するなんて言われて困惑してましたし……」
カリヤがそう考えるのも無理はない。
あっさりと許した理由は様々だ。
兄弟姉妹がいる者達は自分が同じ状態になったら似たようなことをするのが目に見えているからだとか、実害は来てないしだとか、理由が理由だしだとか。
それ以上に仲を引き裂こうとしたことや決闘を申し込んだことよりも、今起こっている事件の方を優先すべきだと考えたからだろう。
レーピオやメイメア、ララ、ミュー、ベイノットなんかの貴族や秩序側の者、または憧れを持つものがそうだった。
「事件優先、わかりますけどね」
カリヤがポツリと呟く。
落ち込んで空気を察してメメが話題を変えるために、さっきのことを掘り返すことにした。
「そういえば、何でナーズビア君はえーちゃんがお気に入りなんですか?」
「自分が貴族だって知ってて、媚とかじゃなくて素直に心配してくれたから。ハンカチ汚れるって言うのに普通に止血に使えって言うし……」
ナーズビアが永華を気に入ったことの発端は例の食堂での出来事が原因だった。
「え、チョロくありません?」
「チョロいわね」
思わずメメとララの口から本音が漏れた。
ナーズビアにキッと鋭い目付きで睨まれ慌ててメメは自分の口をふさいだ。
「私もチョロいと思うのですけれど……。変な人についていったりしていません?」
「大丈夫ですか?いい人を装った悪い人に騙されたりしてませんか?」
「別に騙されたりしてません!」
ナーズビアのチョロさ加減に思わずカリヤもマーマリアも思わず心配の声をこぼす。
二人の言葉にイラッときたのか、こめかみがひきつっている。
睨むだけで否定以外の言葉を何も言わないのは自分でチョロいのを自覚しているからかもしれない。
「ふふ、冗談ですよ」
「マーマリア先生ってまともだけどお茶目ですわ……」
「わかりますわ」
「おちゃめっていうか、からかってるっていうか……」
ザッ君先生は真面目でお茶目なところなんて見たことありませんし、他の先生は悪戯好きだったりネジが外れてたりジェネレーションギャップがあったりでマーちゃん先生は貴重な感じがしますわ。
「あ、カリヤさん、なるべく側にいてくださいね」
「あ、はい。すみません、ボーッとしてました」
「いいんですよ」
町に出て歩いていると、カリヤはいつのまにかメメ達とは一歩下がったところを歩いている。
普段は気丈に振る舞い、使用人を侍らせている貴族らしからぬ行動だ。
そうなっている理由は、四人ともわかっていた。元々巻き込みたくないと言っていたララだけでなく、メメ達や教師たちを巻き込んだ罪悪感からのこうどうだろう。
気がついたら一歩下がっていて、誰かが呼び戻し、また気がついたら__というループが発生していた。
「カリヤ先輩が、自分達の中一番狙われやすいのが貴女なんですから後ろにいかないでください」
「守れなくなっちゃいますからね」
「あらあら、頼もしいですね」
何度も繰り返した末に、四人で囲って中央にいてもらうことになった。
それからショップをまわり、防寒具を買って行く。
「重い……」
ナーズビアは本当に荷物持ちをしていた。
「このコート、とても肌触りが良いですわ!先生、これが良いのでは?」
「えぇ、ちょっと可愛すぎやしませんかね?」
「いいえ、とても似合うと思いますわ」
「先生見た目若いんですからいけますよ」
なんならショッピング中の女性陣の勢いについていけず、無言で振り回される側に徹していた。
下手に発言したら“どれがいい?”だとか“似合うかしら?”だとか修羅場の種になりかねない質問をされるかもしれないと今までお見合いであった令嬢達で学んでいたからだ。
「ナーズビア君は何か見たいものはありますか?」
「ペンのインク欲しい」
ナーズビアの用事は一瞬ですむことなので先に片付けられることとなった。
面倒になっていたし、インクの色とかわりとどうでも良かったナーズビアは手近な黒いインクを選んだ。
もちろん、お高い奴。
「私、次はマフラーとやらを見てみたいのです!」
「では、先生のオススメのショップにいって見ますか?」
「先生のオススメ!?気になりますわ!」
「アタシも!」
「元気だな……」
女性陣かパワフルだと男は振り回されやすいものだ。
時計を見ると、そろそろ良い具合だと言うのがわかった。一度ショッピングはやめにして、荷物を宅配サービスで各々の部屋に送る手続きをする。
「さて、本命いきますわよ!」
「メイメア、声がでかいぞ」
「う~ん……お婆様がいるはずですから、大丈夫かしら」
「心配することはないですよ。先生や頼れる後輩たちがついてるではありませんか」
「何かあったら兄さんの友達が飛んでくるしね」
さぁ、私もやること、しっかりしなくては。
向かう先はカリヤの生家、ベイベルツ邸。




