59 試験対策ってめんどくさい
入学から一ヶ月が立とうとしていた頃、担任であるザベル先生に近々筆記だけではあるものの中間テストがあると告げられた。
「中間テストか~。俺自信無いわ」
「……ちょっと、私もないわね」
「俺も……」
最後の授業が終わって放課後、使っていたものを片付けつつこれからやってくる中間テストについて話していた。
「……魔法学校にも中間テストってあるんだな」
「学校だからそりゃあるだろう」
一年しかたってなのに高校生活が懐かしいものだ。
「でも俺一人で勉強しても途中で投げ出す気がする。ってことでいつメンで勉強会しね?」
いつメン、試験の時の六人と同室になった二人のことである。
試験のことや同室になったことから随分と仲良くなり魔法学校ではもっぱら彼らと一緒にいる。
「勉強会?いいですねえ。僕、それやりますう」
「メメもでますわ」
「私も出るわ。自信無いもの」
「俺も自信ねえから行くわ」
次から次に勉強会の参加者が決まっていく。
「べんきょうかい?」
「おっと、ララちゃんが“なにそれ?”って顔してる」
「だって、いつも一人で勉強していたから……」
「勉強会っつたらいろんなやつが集まって互いに得意なところ教えあったりすんだよ」
「皆で?……面白そうね。私も行こうかしら」
誘われたのが嬉しいのか、ララのまわりに花が待っているのが見える。
貴族に支援されてこの学校にきてるララは支援を打ち切られるまいと必死だったのもあり友人と遊ぶということをあまりしたことがない。勉強会だってそう。
とても喜んでいるのだ。
「私も行こっかなあ。篠野部に精進しろっていわれたし」
なにも好成績で悪いことはない。むしろ成績がいい方が目的に近づけるのだからやらないわけにはいかない。
次々と参加者が決まっていくなか、篠野部はだんまりを決め込んで荷物を片付けていた。
まあ、らしいといえばらしい話だ。
「篠野部はしないの?」
「テストなんて授業聞いてしっかり復習してれば問題ない話だろ」
「正論パンチ!」
「皆揃ってそれができてればローレスはこんな提案してないし、私達ものかってないわ」
「そうだ!そうだ!」
さすが座学の入試学年一位ですこと……。
でも、ここで私が引き下がるかといえば否である。
「篠野部もいこうよ〜」
「めんどくさい」
「行くのが?教えるのが?」
「僕が教える側なのは決定事項なのか……」
「座学の入試一位に成績平凡が教えることなんて無くない?」
「……両方めんどくさい」
あんまり表情が変わらないのに醸し出している雰囲気のせいか、全力でめんどくさがっているのが見て取れた。
「むう……」
どうにかして篠野部を参加させたい。
正直、異世界人の中に私一人だけと言うのも、どこか疎外感を感じて嫌なので唯一同郷だと言える篠野部に来てほしいのだ。
「しーのーのーべー」
「……」
「学生らしく勉強会しよ〜よ。青春!青春!」
「はぁ……」
立ち上がって今にも教室を出ていこうとしている篠野部の袖を軽く引っ張る。
「駄々のこね方が子供……」
「誰が子供だ」
「事実だろう?」
……袖を引っ張って駄々をこねるなんて早々しないからよくわかんないんだけど、これって結構子供みたいなことしてる?
「……」
「……?」
そう思うと急に恥ずかしくなって掴んでいた袖を離した。
「仲良いわよね。あの二人」
「わかる」
ミューとベイノットの小さな声は聞こえなかった。
「篠野部も一緒に遊ぼうぜ!」
「そうだぞ。篠野部!」
「いや、勉強するんじゃないのかい……?」
「あ、そだった」
「ローレス……」
「お調子者共め……」
「私も呆れられてる……?」
恥ずかしさで袖を離したことで途切れた絡みを、ローレスが篠野部にからみだすのに乗っかって再開する。
__が、なんか巻き込み事故くらった。
「いいじゃない。貴方、あんまりしゃべろうとしないし、アタシ達にも関わろうとしてこないし、ちょうど良い機会よ。勉強ついでに少しだけ話しましょ?」
「……」
カルタはララを見て、永華とローレスを見てまたララを見る。
ララと見比べられたローレスと永華はなんだなんだと首をかしげている。
「精神年齢の違いが堅調……」
「おい」
「おい」
「事実だろ」
全く、いつもいつも子供っぽいとか言って失礼すぎる。
「ララもこう言ってんだよ?ちょっとで良いから交流しようよ」
「あ〜、もう!わかった、いけば良いんだろ?」
私達が粘ったすえに篠野部が折れて、勉強会に参加することになった。
「粘り勝ち!」
「イエイ!」
パチンッ!__
篠野部に粘り勝ちしたローレスと永華は笑顔でハイタッチする。
「はぁ……」
その二人の様子を呆れた雰囲気で見ており、ミューやベイノットも呆れた表情だ。
反対にララとメメ、レーピオはカルタが勉強会に参加することになったのを嬉しそうにしていた。
「んじゃ!図書館行って、勉強部屋いこうぜ!」
「おー!」
決まったのならと席から立ち上がり、目的地である図書館に向かう。
この学校の図書館は集団で勉強会をするものが多いからか、そういう生徒達ようの部屋がいくつかあって司書に言うことで使用が可能なのだ。
「勉強部屋使うって言ってたけど、空いてるのかしら?」
「あ、どうなんだろ?もうすぐテストだし、どの部屋も使われてそう……」
「使えなかったら教室を使えば良いわ。先生に頼めば閉めるのを遅らせてくれるでしょ」
「それもそっか!」
広い廊下をならんであるく。
チラリと静かな篠野部の方を見てみると“勉強会に誘われたの、満更でもなさそうだ”と、なんでかそう思った。
前なら多分わからなかっただろうけど一年間も同じ家に住んで生活していたからか本当に何となく、篠野部の雰囲気で思っていることがわかるようになった……気がする。
今だって満更でもなさそうだと思ったけど全く表情は変わっていないし、本当に気のせいかもしれないけど。
「……篠野部」
「なに?」
「勉強会、誘われたの嬉しい?」
私の質問にさっきまで正面を向いていた視線をこっちに向ける。その瞳は驚いていたように少しだけ目を見開いていたように思えた。
驚きで足を止めそうになる。
「……」
「篠野部?」
「……ふん」
「あ……」
図星だったのか、それとも私の見当違いの言葉に苛立ったのからなのか。篠野部は早足で先頭にいるレーピオやローレス達も追い越して図書館に向かっていく。
「あ、篠野部?どうしたんだ、あいつ?」
「さあ?それはどうでも良いですわ。早く追いかけましょ?」
「そうですねえ」
次々に篠野部の後を追って早足で図書館に向かっていく。
皆の後ろ姿を見て、私はポツリと言葉をこぼした。
「……嬉しかったのなら、いいな」
いつも篠野部は輪から外れようとする。
でも、もしかするとそれは本心ではないのかもしれない。
まあ、そうなると何でわざと輪から外れようとしてるんだって話しになるんだけど……。
「う~ん……」
私達のことを完全に拒絶しないってことは人間が嫌って訳じゃないと思うんだけど、なんなら私達が嫌って訳でもないだろう。
人といることに慣れていないから、人に慣れてないから離れようとするのだろうか?
それとも、人との接し方がわからないから……。
なんて、流石に考えすぎか。
「永華〜、遅いぞ〜」
ベイノットに名前を呼ばれて気がつく。
「あ、やっば大分離れちゃった。待って〜」
考え事をしていたら皆と大分離れていた。
これ以上、置いていかれないように慌てて駆け出す。




