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99 お飾り

当たる、そう思ったとき突風が吹いた。


「ぐっ!」


 風にあおられ飛んでこようとしていた矢は哀れにも、どこかに吹き飛んでいき、箒に乗っている僕達は風に背を押されるようにして上空に出た。


「……何かするのなら一言くれてもいいと思うんだけど?」


「ごめん、なにかくると思ってたけど咄嗟で……」


 突風の正体は戌井の魔方陣から生み出された風だ。


 判断はいいがせめて一言欲しいものだ。魔導師の追撃がきたのかと内心肝が冷えた……。


 弓を構えていた襲撃犯の方に目をやると次の弓を用意しているところだった。近くに鉄パイプが転がっていることを考えると、戌井の言っていた鉄パイプのやつか。


 弓を構えている襲撃犯の近くには血の滴る剣を持った者もいる。なにか懐を漁っているところを見ると何かしら仕掛けてくるかもしれない。


 早く移動しないと。


 トップスピードを維持しつつ、魔法学校に向かって行く。


 後ろから魔法や弓矢が飛んでくるが戌井が魔方陣や僕の魔法で打ち落とし、かわしていく。


 いつの間にか魔導師の後ろには剣をもっている襲撃犯が乗っていた。


 剣を持っていた襲撃犯はなにかを懐から取り出した。黒い、丸い物体だ。


「あれは……」


 何かしたかと思えば僕達の方に投げてきた。


 向かってくる黒い物体、それは見た目からして爆弾だった。


「はぁ!?」


 思わず声をあげる。頭のなかがパニックだ。


「篠野部、避けなきゃ!」


 戌井の声で冷静になる。


 咄嗟に高度を思いっきり落としてなんとか爆発県外まで行こうとする。


 遅れて爆発音と爆風が僕達を襲った。


「いっ……」


 爆風に揺られたことで怪我に触ったらしい、戌井は痛みに顔を歪め怪我した箇所を押さえた。


 出血はさほどないだろう。だが腕を伝って血が滴っているのを見ると長い間、この状態が続くのはよろしくない。


「戌井、そのままなにもするな」


「は?」


「切りつけられた傷が痛いんだろ」


「い、いや、動かなきゃ大丈夫だから……」


「うるさい。それで狙いが外れて民間人が巻き込まれたらどうする」


「うぇ……わ、わかった」


 戌井は的に当てるのが苦手だ。最近はましになってきたとはいえ、今は怪我をしてしまっている。


 そんな状態で下手に魔法使われて何かあれば僕が困る。


 ……痛いって言うまで、逃げることと攻撃を避けることに夢中で気がつかなかった僕の言えたことじゃないかもしれないけど……。


「にしても騒がしいな」


「これだけ派手にやってるんだから騒がしくもなるよ」


「それもそうか」


 下の方が妙に騒がしいと思ったら僕達がドンパチしていることに気がついた街の人達が騒いでいるようだった。


 これなら時期に魔導警察や軍隊、もしかしたら教師達も出てくるのは早いかもしれない。


 魔法や弓矢、爆弾を避けつつ逃げていると後ろから飛んでくる攻撃が止んだのがわかった。


 振り替えれば魔導師は追いかけてくることもなく、箒の上でじっと僕達の方をみてた。


 それが不気味で、何かあるんじゃないかと思った僕は襲撃犯の回りに視線をさ迷わせる。


 ……魔導師以外の襲撃犯の姿が見えない。


 ポタリ。


 雨が降りだした。


 すぐに本降りになり、僕達をじっと見ていた魔導師は追ってくるでもなく、少ししてからどこかに飛んでいった。


 ……不気味だ。


 警戒しつつも魔法学校の方に視線を向けると箒に乗った教師達がこちらに向かってきているのが見えた。


「先生達だ」


「僕達は制服を着たままだし、誰かが通報でもしたんだろう」


 教師達がやってきて、怪我をしていた戌井が回収されていった。


 戌井の奴、最近怪我してばっかりな気がする。


 教師陣が来たのは思った通り街の住人が学校に知らせたことが理由だったかな。


 教師達は最初は軍学校の学生とトラブルを起こしたのかと疑っていたが、僕が知る限りの情報を話すと認識を改め、首をかしげた。


 治療が終わった戌井の事情聴取、とでも言おうか。同席して、話を聞いても新しい情報はでなかった。


 帰り道にいきなり襲ってきた三人組、木彫りの面とフードで顔を隠し、ローブで体格を隠し、黒ずくめの怪しい集団。


 獲物は剣と鉄パイプと魔法、それから弓と爆弾と言うラインナップ。


 正体を突き止める証拠になり得るものと言えば、黒いローブに刺繍されていた、どこかの貴族か組織の紋だけだ。


 僕も戌井も、あのとき逃げることと攻撃を避けることに集中していたから詳しい模様は覚えていない。


 事情聴取を終え、渡されたタオルで髪の雨水を拭いているとファーレンテインがやってきた。


「やっぱり、胸騒ぎはあったていましたのね」


「ファーレンテイン……」


「メメと呼んでくださいまし。それはそうと、襲われたとお聞きしましたが、お怪我の方は?」


「僕は無傷、戌井は肩口を切られているが魔法で治してもらったから気にすることはないだろう」


「そうですか。ならばよいのですが……」


 ファーレンテインの少し後からやってきたのはレイスだった。


 レイスの顔色は手紙を渡されたときほどではないが悪くなっており、焦りが読み取れる表情で走りよってきた。


「え、永華ちゃん怪我したってほんと!?」


「あぁ、本当だ。でも保険医曰く酷い傷でもないし何かしこまれていたって訳でもない。魔法で怪我も治っているからきにするな」


「そ、そっか。……誰に、襲われたんだ?」


「わからない、黒ずくめで木彫りの面をつけていたからな。戌井から聞いた話し、一度も喋らなかったらしいし」


「黒ずくめ?ない、よな……?」


 レイスは顎に手を当てて考え出す。


 ブレイブ家のことで過敏になっているのか、襲撃犯がブレイブ家の差し金ではないかと疑っているようだ。


 戌井が図書館と先輩達、ナーズビアから情報を集めただけでブレイブ家にばれそうなことはしていないと言っていた。


 それは僕もそうだ。僕の場合は図書館で調べただけだし。


 そもそも僕達が得た情報は噂程度のもの、手紙の件もあるから僕達が調べるのは向こうも想定しているだろう。


 そんな僕達に調べられてとして、あんな襲撃者を送るだろうか?何かしら調べられると不都合なことがありますって言ってるようなものだろう。


 情報源はカリヤ先輩、ビーグル先輩、ナーズビア、それから……よくわからないがマッドサイエンティストの四人。


 マッドサイエンティストは戌井曰く“実験しか興味のない倫理観が欠如していて、勘で私たちの正体を把握してる魔族”と言っていた。


 ……まぁ、そのマッドサイエンティストがブレイブ家に報告する意味はない。他の三人も反応を見る限り、そんなことする理由はないだろう、と言っていた。あの時はビーグル先輩が人避け防音魔法を使っていたらしいし。


 仮にブレイブ家が犯人だとして、何で最後まで追わなかったのか疑問だ。いや、それはどんな相手でも疑問い思うが。


「人身売買事件の報復じゃないかって話だ」


「カリヤ先輩のときの奴か」


「あり得なくもない話ですが、それにしてはおかしくありませんか?私やレーピオは無理でしたが、あの時の参加メンバーのほとんどが何度も一人になるタイミングはあったはずですわ」


 そう、それだ。


 戌井もそう言っていた。


「可能性が高いのは私やレーピオに対する人質、いえ餌にするための誘拐なのですが……」


「誘拐犯が爆弾使うか?」


「ば、爆弾……」


「音を聴いてまさかと思っていましたが、やはり……。誘拐の線は薄そうですわね」


 それから少ししてララ達と先輩達がやってきて、色々聴かれることになった。


 街の人達から集めた情報にも目新しものはなく、魔導警察や軍による見回りの強化と僕達の証言を書き出した紙を掲示板いはると言う対応しか取れなかった。














 薄暗い部屋、その中に置かれた大きなソファに寝転がるアラビアンな雰囲気の女性__いや、女性の姿をした魔族の青年の前に黒ずくめの木彫り面が跪いていた。


「片方だけではありますが目当てのものは入手しました」


「ふ〜ん。そう」


 虚飾の幹部、キャシー・ミシー。


「作戦開始いかほどで?」


「あのお方から指示くるまで待機〜。また勝手に動いて起こられるのいやだし〜?まぁ、いつでも動けるようにしといて?」


「承知しました」


 キャシーはシーシャをふかし、辺りに煙を漂わせる。


「あとね〜、そろそろアイツ切ろっか」


「アイツ……偏執狂ですね」


「そ〜、もういらないでしょ?」


「えぇ、実験も終了で良いとお達しが出ております」


「なら切りで〜。あと報告よろ〜。下がって良いよ」


 キャシーがそう言うと黒ずくめは返事を返して、静かに部屋から出ていった。


 キャシーは黒ずくめが部屋から出ていったあと寝返りを打つ、動く度キャシーの身に付けている装飾品の数々がジャラジャラと音を立てた。


「これが成功すれば、僕はこの世で一番美しい生き物になれるんだ〜。キヒヒ」


 キャシーは心底楽しそうに笑っていた。

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