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「愛するつもりはない」と書面で宣言される

「これは、あくまでも契約結婚だ。きみを愛するつもりはないからそのつもりでいてくれ。当然、きみを抱くようなこともない」

「当然です。そうでなければ困ります」


 婚儀を挙げたばかり。


 つい先程、神の前で愛を確かめ合い将来ともにあゆむことを誓い合った。


 その後、ふたりの寝室でふたりきりになった。


 付き合いは長いが、これだけの近距離で会ったのは初めてである。

 いままでは、わたしたちの間に物理的に距離があったから。


 そして、書面を突きつけられた。


 そこに記されていたのだ。


『愛するつもりも抱くつもりもない』


 簡略すると、そのようなことが。


 そもそも、この結婚の申し込みでさえ書面だった。


 ふたりきりで対面してさえ、「きみを愛することも抱くつもりもないからそのつもりで」と書面を突きつけてきたのには、さすがのわたしも面食らった。


 もちろん、そんなことはおくびにも出さないけれど。


 告げ方はともかく、その内容に関してはそんなこと当然である。


 当然すぎる。


 彼自身が言った通り、この結婚はあくまでも契約上だから。偽装だから。


 そんなことは重々承知している。だから、わたしはここにいるのである。


 というわけで、即座に答えた。


 もちろん、書面で。彼の真似をしたわけ。


「当然。そうでないと困る」


 そのように記した書面を突き返してやった。


 見上げる彼のいかつい顔に、そうとはわからないほどの感情が走った気がした。


 が、わたしの目を以てしても、その感情がなにかまでは分からなかった。


「それならいい」


 彼は、たったひと言だけ発した。それからおおきな背を向け、長椅子へと歩いて行った。


 彼は長椅子で、わたしはひとりで眠るには寂しすぎるほどの大きな寝台で眠るのである。



 とにかく、わたしは今日婚儀を迎えた。


 相手は、ブラッドリー・レドモンド。


 このアルドリッジ帝国の侯爵にして帝国軍の将軍。


「冷血将軍」


 冷酷非情で有名な将軍に嫁いだのである。


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