其の十一 蠢動
職業、墓守。性別、男。名前、ない。種族、屍鬼。年齢、十五。
そう、冗談じゃない。本当に十五歳。君の目の前にいる紫の少女と同じ。人間の基準で言ったら、まだ未成年ということになるし、亡霊の寿命から見たら、まだ幼いと言ってもいい。十五年って、屍鬼の種族にとって、たいしたことない。つまり、目の前のあの老人みたいな姿をした亡霊は、実はショタ?信じられないよね、本当に。
この新しい騒ぎは、普通は有名な『世界紀行』に記録されるべきだ。つまり僕の日記。残念だけど、今はまだ書き終わってない。書き終わったら、この本はめっちゃ売れるに決まっている。そのとき、僕きっと、王国で一番有名な作家になる。でも、やっぱりやめとこうかな。あまりにも対照的で、十五歳の屍鬼ショタが二百歳の人間のおじいさんみたいに見えると考えると、なんだか気持ち悪い。僕みたいな広く知識を持った旅人ですら受け入れられないのだから、将来の読者なんてもっと受け入れられないでしょうか。
十五歳で十三年も墓守をしているって、本当に大変だよな。屍鬼って亡霊の中でも知能があまり高くないけど、彼は人間の言葉を上手に喋る。単語しか話せないけど、僕とコミュニケーションが取れる。それだけでも偉いことだ。外国語を学ぶ鍵はコミュニケーションだから、相手が理解すればいいんだ。アクセントとか全然関係ない。この墓守は亡霊の中でも一際優れた存在だ。
まだ先代の墓守からこの仕事を受け継いだばかり。彼によると、亡者の死体を掘り出し、噛み裂き、その死体を凋零症候群に感染させ、そして埋葬するんだという。ええと…人間の視点から見ると、確かにかなり不名誉なことかもしれない。でも、どうでもいい。墓守君の視点では、これは非常に崇高な仕事なんだ。
凋零症候群に感染した死体は、ごく一部が亡霊に変わる可能性がある。そして、そのごくわずかな亡霊の中でも、さらにごくわずかが屍鬼になれるんだって。先代の墓守は、自分が死の寸前になると、その身分と仕事を若い後継者に譲るんだと言う。墓守君によれば、彼の師匠は十三年前に亡くなり、生涯297歳を生きたって。つまり、約三百年に及ぶ長い歳月の中で、彼はその幸運な者になったってことだ。
「墓守。最後。」
そう、ここの亡霊たちも、白雪村の事情に気づき始めてるみたい。彼はここでの異変、つまり、命の異変を感じ取れるって言ったんだ。村で誰かが亡くなるとき、生命の灯が消えて、魂が天に還るとき、亡霊として彼は、魂が発する「死」の気配を感じ取れるって。
死者はどんなふうに死を迎える?老いすぎて病気もないけど、ただ疲れたと感じて、うっかり目を閉じて、もう目覚めることはない。そんな人にとって、「死」の香りはいい匂いがする。生命は静かに終わりを迎え、亡魂は安らかに去っていく、何の後悔もなく。なんて気持ちいい、なんて幸せなんだ。
彼は、そんな死者が亡霊になるのは最も難しいことだと言った。でも、もしもなってしまったら、その亡霊は屍鬼みたいな存在になるんだって。のろのろしててボケっとしてて、攻撃性もなくて、頭も空っぽ。でも、彼は前世の記憶をもうすっかり忘れちゃってるから、本人自身もそれが本当なのかどうかは証明できないんだ。
「満足。忘れる。」
そうなんだ、大事な人たちとしっかり別れを告げられること、自分の死を受け入れられることができること。魂が軽やかに、お構いなしに極楽の世界へと向かっていける。満足しているからこそ、後悔がないからこそ、そして忘れる。すっかり忘れる。執念を手放せるからこそ、「人として死ぬ」ことができるし、「亡霊として再び戻ってくる」ことを望まない。
人間として楽しく幸せに死ぬことも、亡霊として楽しく幸せに生きることも。そういえば、墓守君って、幸運なのか不運なのか、よく分からない。幸運だと言うなら、彼はまるで宝くじ当たったみたいにこのような亡霊になれた。不運だと言うなら、もしかしたら、前世は元々復活するつもりなんてなかったのかもしれない。
まあ、誰がこんなことができる?誰が執念を捨てられて、彼みたいになれる?人はいつもいろんなことを考えるものだ。よく考えてみればそうだ。「ねえ、風鈴よ、次の瞬間には君はもう死んでる、安心して旅立っていいんだよ」って、それを受け入れられないってことを認める、僕だって。僕もたくさんのことを手放せない、たとえばあの金色の面影のことを。
執念、執念、それが執念。生前に執念が強ければ強いほど、その力が魂を絡みつかせて離れない。どんどんねじ曲がり、どんどん変質していく。未練がましいのか、達成できなかった願いがあるのか、とにかく死ぬつもりがない。魂が安らかに眠ることができず、だからこそ濃厚な「死」の匂いを放つんだ。凋零症候群の影響を受けて、こういう人間が亡霊に変わるチャンスがどんどん増えていくんだ。
墓守君が言うには、ここ数年でこんな強烈な匂いを何度も感じたと。最初は喜んで、仲間がどんどん増えるかと思ったんだが、予想と違って全然だった。匂いは海の中から現れてはまた消えていく。ちょっとも死体が見つからなくて、墓地に「安らかに」埋葬できる人間なんてほとんどいない。白雪村の一連の悲劇があった後、墓地は荒れ果てていった。ここ数年、ここに運ばれるのは高々数人の老人ばかりで、仲間が増えるどころか。今じゃ、仕事もうすぐ終わりそうだ。
「子供。可愛い。」
そう、隣に座っている彼は、ふわりと小さな幽霊を抱いている。その幽霊はまるで赤ちゃんみたいで、彼の腕の中でそっと眠っている。墓守君は愛おしそうに見守りつつ、優しく鈴を揺らしながら、かすれた声で子守唄を歌っている......なんて、まるで心優しいおじいさんみたいだね!君ってまさにショタだよ、ショタだ!墓守君よ!
まるで夫婦のように、僕と彼が幽霊赤ん坊の眠る様子を見ている。他の仲間たちも次々と松林から現れて、僕たちのそばにやってきた。
みんな幽霊だ。これがエミの言う、白雪村を守る霊たちなのか。なかなか想像力が豊かな彼女、なかなか見抜いたじゃない。ええと、これを彼女に伝えるかどうか、迷うな。彼女がこれらの「守護者」が実は幽霊だと知ったら、たぶん一晩中寝られなくなっちゃうでしょうか。まあ、白い小公女の素敵な幻想をぶち壊すのはやめとこう。
外見は触手のない海月が白いテーブルクロスにぶつかったみたい。テーブルクロスには丸い穴が二つ開いていて、それが目。飛ぶと言っても動きが極端に遅いから、むしろ漂う感じで、まるで雲みたい。徐々に透明になることができ、短い距離を瞬時に移動することができるから、機動性の欠点は補われている。体の両側には鉄の鎖がついているが、これは装飾じゃなくて、幽霊の両腕なんだ。外殻はかなり硬いが、本物の鉄鎖と変わらない。でも、傷を負ったら血が出ることもあるんだ。
それが幽霊、あんまり危険じゃない亡霊の一種。墓守君が言ってた通り、確かに可愛い。空に十数匹の饅頭が浮かんで、ウーンと鳴いている。
「仲間。可愛い。」
可愛い、可愛い!みんな可愛いって認めるけど、それが欲しい結果じゃないんだよ!手がかりが途切れた、全部途切れた!探偵団の最強戦力として、今、人生で最大の恥辱に直面しているんだ!
本来、墓守君のあの曲がりくねった鼻を指さして、大声で審判することもできた。そう、セリフまで用意してた。
――エイと篠木兄弟を襲った化け物、それはここから来たんだ!死んだ人を恐ろしい亡霊に変えて、生きてる人間を襲うように仕向けたのは君だ!
ああ......もうそのセリフが出てこないんだ。なんというか、この可愛い饅頭みたいな幽霊たちと、巨大な爪を持つ飛行骸骨ってのは、全然タイプが違うよな。
「悪魂?不明。」
亡霊ってのはあんまり頭がいいわけじゃないから、人間みたいにズル賢くない。普通の亡霊種である屍鬼みたいなやつら、嘘をつく可能性はほとんどない。つまり、墓守君が悪魂を見たことがないと言うなら、それが事実。
悪魂、こいつら、まだその行方がわからない。寒鴉、屍鬼、幽霊......どれも関係ない。二年前、二匹がエイを襲った。エミは現場にいなかったから、詳細は分からなかった。でも仁也はいた、村人たちが二匹の怪物を力を合わせて倒したと、教えてくれた。三ヶ月前、また悪魂が篠木兄弟を襲った、無生が今日のような状態にされた。そいつらは霧のように、また謎の中に潜んで、風花湾全体に厚い暗闇を投げかけてるようだ。
ちくしょう、ほんと悔しいね。事情はそんなに簡単じゃない。答えも真相もまだ見つからないし、逆に新しい謎がどんどん出てくる。真相の朝はまだ遠い。
そういっても、今回の調査も無駄じゃなかった。海に関することについて、墓守君から貴重な情報を手に入れた。
「夜。死ぬ。」
彼は寒鴉たちの故郷が海だとは知らないけど、どこからか広がる黒煙については詳しいんだ。海へ行く人がどうやって死んだのかは知らないけど、彼らの死の匂いを感じることができるんだ。
――ってことは、夜?
「はい。」
――夜の時、死の気配を感じる。じゃあ昼間は?
「ない。」
――つまり、海に向かった人たちはみんな夜中に行ったってこと?
「はい。」
――信じられない。あの黒煙、人間が耐えられるわけがない。夜中でも、彼らがあんな煙の中に無防備に入って死ぬってことはないでしょう。昼と夜、何が違うかな。夜、海上にも黒煙があるの?
「ない。見る。」
墓守君はゆっくりと手を上げ、細くて枯れた黄色い指を海の方向に差し出した。
今日の晴れには感謝しないとな。雪が降らなかったおかげで、視界が良好だ。雪山から海までは遠いが、海の様子は大まかに見える、光があれば。しょうがない、まずは望遠鏡を使ってみるしかない。
そう、これだ。真鍮の外装で、高品質のレンズが付いている。ランプもついて、轟雷果を焼いて粉末を作り、それで電力を供給している。ただし、引き伸ばすことはできない。南からもらった、試作品だ。王国に戻ってきたばかりで、望遠鏡の市場価値はわからないが、南が作ったものなら、きっと売れる。もし彼が最終的なデザインを家族に渡して量産するなら、この古い試作品はかなりの値段で売れる。博物館に売れば、きっと数百の金貨は手に入る。
さて、見てみよう。ランプを点けても、このポケット望遠鏡兼懐中電灯の光は薄暗い。こんな微かな光では、何も見えない。ああ、夜はやっぱり暗すぎる。
まぁ、考えてみると、もし夜中に本当に黒煙がなかったら、あの人たちが海に入るのは夜だけだから、なんとなく納得できるかもしれない。まあ、皆は全部帰ってこなかったけどさ。
可能性はほぼ百パーセントだし、でも慎重に考えなきゃいけない。そういえば、ちょっと面白いでしょうけど、大胆なアイデアが浮かんできたんだ。
エミには悪いけど、今は約束を守るのは違う時だ。はっきりわかるんだ、今が海に入るタイミングだ。
もし黒煙がまだ海を覆っていたら、僕は絶対に安全だ。だって午前中の出来事がそれを証明しているから。午前中はただ毒で気絶しただけで、海岸から黒煙までの間は安全だってこと。だから、黒煙を見つけたら引き返せばいい。
もし夜中に黒煙が消えていたら、少なくとも毒にやられない。つまり、その特定の危険はないってことだ。
だから、肝心なのは未知の危険だ。夜に海に入って行った連中、みんななぜか死んじまったんだ。正直に決断を下す時、僕もかなり怖いし緊張している。今が最良の機会かもしれないけど、それが賢明な選択なのかどうかはわからない。これは賭け、自分の命をかけた賭け。そして、失敗の後果はよくわかってる。
だが、僕は諦められない。もし海にすら近づけないなら、その秘密を探ることなんて絶対にできない。だから、たとえ僅かな希望でも、僅かな幸運でも、僕も勇敢に前進しようとする、真実に一歩でも近づくために。今できることは、神の加護を祈ることだけだ。それから、進むしかない。
もしかしたら、生き残る可能性を高めるためだったり、途中で孤独を感じるのを怖がっていたり、心の安らぎを求めていたのかもしれない。とにかく、墓守君と一緒に行くことに決めた。彼には休暇を取らせて、僕と一緒に旅行に行くと思ってもらえばいいや。彼が何か役に立つことを期待してもいないし、とにかく御守り役として一緒に行こう。
「墓守?」
彼は驚いたように自分を指さしながら言った。
――そう。じゃ、行きましょう。よろしくね、墓守君。




