怪人チョーウンの裏切りだ! 後編
怪人ケンブンは、怪人トクゲンの突き出す剣を、体をひねってかわした。
「舐めるなっ! 怪人トクゲン、元のお前は、怪人チョーウンに前で戦わせておいて、自分はボーッとしているだけの総帥だっただろう! いくら俺でも、お前ごときには負けん! それ、『超風剣』!」
怪人ケンブンは得意の風の能力を使って怪人トクゲンを攻撃した。
「うわーっ!」
怪人トクゲンはいとも簡単に吹っ飛ばされた。だが、彼は空中ですぐに体の向きを上向きにし、着地する前に怪人ケンブンに向けて、その伸縮自在の剣の切っ先を伸ばしてきた。
「やるな! だが、まだまだだ!」
とはいえ、怪人ケンブンはこれしきの攻撃でやられるような怪人ではない。もともと彼は風系の能力を使うこともあり、俊敏な反応で怪人トクゲンの攻撃を回避した。
「ほらほら、遅いぞ!」
怪人ケンブンはどんどん前に出ながら、怪人トクゲンを文字通り突風で吹っ飛ばしていく。反対に怪人トクゲンはどんどん後ろに下がっていく。
「うわあ、やめてくれ!」
怪人トクゲンは必死に後退した挙句、ついにたまたま自分の後ろにあった建物の中に逃げ込んだ。
「待て!」
怪人ケンブンは後を追いかけようとしたが、その建物はすでに鍵が閉まっていた。
「しまった! どうする?」
怪人ケンブンは一瞬その場に立ち尽くした。そのとき、向こうから大声が聞こえてきた。
「待て、怪人チョーウン!」
怪人ケンブンがちらりと振り向くと、怪人チョーウンに戦隊たちがーーその中にはランチャーだけではなく、有名なレッドをはじめとするポンジャーもいたーー向かっていこうとしているところだった。怪人エンブンと『ギョール』の怪人たちはいつのまにかいなくなっていた。
「いや、今はそんな場合じゃない! 考えろ!」
怪人ケンブンは再び前に向くと、どのように建物に侵入するか考え始めた。怪人ケンブンは扉をぶん殴ったが、扉はうまく壊れたものの、その後ろには机やら何やらが積み重なっていて、怪人ケンブンはすぐには建物の中に入れそうになかった。
「うーん、面倒だ!」
怪人ケンブンは手作業に風の能力を加えながら、全力でバリケードを取り外した。だが、いざ建物の中に躍り込んでみると、問題の怪人トクゲンはどこにもいない。
「しまった、逃げられたか!」
屋上までやってきて、怪人ケンブンはやっとそう気づいた。
「はあ、今日も役立たずに終わってしまったな……」
怪人ケンブンはぼんやりと下の公園を見下ろした。公園の中では、怪人チョーウンと戦隊たちの戦いが続いていた。
すると、戦隊の誰かが撃ったビームが怪人チョーウンに当たり、怪人チョーウンの動きが止まった。
(怪人チョーウンが危ない!)
怪人ケンブンは身を乗り出したが、ここからどうすれば怪人チョーウンを助けるようなことをすることができるのか見当がつかなかった。
そのとき、突然公園の中が霧で覆われ、何も見えなくなった。霧はすぐに晴れたが、怪人チョーウンはその間に消えてしまっていた。
(あれは怪人チョーウンの能力か?)
怪人ケンブンは不思議に思ったが、とにかく怪人チョーウンは危機を脱したようだった。『ギール』の本部に帰ってどんな風に叱られるかは考えたくもなかったが、とりあえずは怪人ケンブンも帰るしかなかった。ところが、怪人ケンブンが今にも転移しようとしたとき、背後から「あっ、しまった!」という声が聞こえた。
怪人ケンブンが振り向くと、そこに怪人チョーウンがいた。ところが、驚くべきことに、怪人チョーウンの後ろに、なぜか怪人トクゲンが立っていた。
(えっ!? 怪人チョーウンと怪人トクゲンが一緒にいるぞ?)
怪人ケンブンが驚いていると、怪人チョーウンが「おい、怪人ケンブン、お前に伝えておきたいことがある」と言ってきた。
「どういうことだ? それより怪人チョーウン、なぜ怪人トクゲンの味方のようにしているんだ? 『ギール』を裏切ったのか?」
怪人ケンブンが反問すると、怪人チョーウンは「怪人ケンブン、それは単純というものだよ」と一笑に付した。
「よく考えてみろ。俺はもともと怪人トクゲン氏のーーいや、トクゲン総帥のもとで働いていたのだ。『ナンジョ』が崩壊したため、しょうがなく『ギール』に入ったものの、俺はトクゲン総帥と連絡を保っていた。そっちのトクモー総帥が、俺を信用したのか連絡先のチェックをしなかったのは幸運だったよ。何も小細工をせず、毎日のように連絡を取ることができたからな」
さらにトクゲン氏も続けた。
「まあ、作戦はだいたいうまくいったよ。うまく『ギール』と『ギョール』を戦わせるように仕向けることができたし、『ギョール』の幹部の怪人リョウガンと怪人シュウブンを消すことができた。怪人エンブンがまだ生きているのは誤算だったけど、これでどちらの結社も大きく力が削がれるはずだ。おっと、それからこれを」
トクゲン氏は怪人ケンブンの足元に紙切れを投げてよこした。
「そこには『ギョール』の機密情報が入っている。まあ好きに使ってくれ」
さらに怪人チョーウンも紙切れを投げた。
「これは俺からだ。トクモー総帥に渡してくれ。じゃあ、俺たちはこれで失礼する」
「おい、思いとどまれ! とにかく裏切るな!」
「うるさい!」
怪人ケンブンはできる限りの攻撃を怪人チョーウンに行ったが、怪人チョーウンが魔剣ミカヅキを振ると、その全ては無効化された。トクゲン氏と怪人チョーウンは、何もできない怪人ケンブンを残して、どこかへと転移してしまった。




