桃と羅漢果
「突然で、ごめんね」
うるさかった喧噪が、なぜか遠い世界のように感じた月曜の午後
「らしくないよね、うん、わかってる。。。」
寂しい? 違う、これはそんな殊勝なもんじゃない。うつむきながら、一歩を踏みだした君は、
「んぅっ! 痛っ」 足元の小石に躓いて
でも、とっさに伸ばしたぼくの手は、むなしく空を切ったまま。。。
ありていな言葉で言うなら、それはあまりにもチープ過ぎて
拙すぎる表現すら出来ない自分のもどかしさに
手の平をじっと見つめることしか出来ない。。。
紅に染まる校舎
煉瓦の壁に伸びる、二つの影の距離は、たったの50センチで
手を取りあうにはあまりにも近すぎて、でも突き放すには
あまりにも遠すぎる、そんな二人だけの空間
理解し合うには、きっと、お互い、あまりにも似すぎていたのかもしれない
街灯が、ひとつ、またひとつと命芽吹く黄昏の闇に
とってつけたような、映画の主役になりそびれた二人の、照れ笑い
「うそ、だよ?」そんな君の頬を伝った一粒の涙と、泣きそうに笑った顔の男がひとり
「桃が羅漢果に恋をした時、君は何を心に抱くのかな?」