第八部 第五章 問題
俺が近衛の騎士団と揉めた話は次々と話が大きくなって広がった。
寝返りの話をしていたので、エドウィンが動くときは仲間に裏切り者がいるという話が盛大にされて、近衛の騎士団に裏切りものがいるのだとささやかれ始めた。
マジで俺は今回は騒いでないんだが、あっという間に尾ひれがついて広がっていった。
おかげで近衛の騎士団は街をこそこそ歩くようになったし、俺達の姿を見たら走って逃げるようになった。
「何で、こんな事に……」
俺がイエスとハリーと一緒に街を歩きながら思わず呟いた。
『これだと、全然、裏切り者探しのとっかかりが無い。どうしたらいいんだか』
「いや、それはしょうがないわ。実際にお前さんが動くときは相手に裏切り者か不正があるって有名だからな。そりゃ、話しかけられただけで仲間にすら疑われるだろ。実際に、こないだの揉めた連中は近衛の監査部に呼ばれて取り調べをずっと受けてるらしい」
イエスが思わぬ話を教えてくれた。
「マジかよ」
「ああ、それで、おびえてんだと。酒場なんかで愚痴ってたらしい」
イエスが苦笑した。
「まずいな。これだと相手を見つけることすら無理じゃないか」
「しょうがないさ」
俺ががっくりとうなだれた。
「私がおかしな気配があれば調べてみましょうか? 」
ハリーが心配してくれた。
「いやいや、でも、見つかって攻撃されたりしたら困るしな。キメラだって周知されてないから、普通に猟師なんかに珍しいハリネズミがいるって捕らえられても困る」
俺がハリーにそう告げた。
サイズも大きいし、喋るだけでも売れそうだ。
「そういうのは考えてませんでしたね」
ハリーが少し驚いている。
「まあ、確かにキメラなんてあまり知られてないから、単なる珍しいハリネズミと思うだろうしな。好事家ってのはどこでもいるし」
イエスも俺の意見に同意した。
「それは困りましたね」
「だから、俺達と一緒にいるときに適当に索敵やってくれ。下手に一人で行動しない方が良いかもしんない。毒針で殺してここに居づらくなっても困るしな」
「分かりました」
ハリーがぺこりと頭を下げた。
こういうとこがセシリアちゃんとかダリアが可愛いと騒ぐ理由だし、そもそも、子供も毒があるから駄目だよと断るようにしているが、皆が触りたがるのは確かだ。
奇襲と考えると容姿が可愛いのは良いけれど、それ以外では困るよな。
「まあ、うちの羊も似たようなもんだ。珍しがって子供が寄ってきたりするからな。おかげで頸動脈を絞めて落とすのが無茶苦茶うまくなったし」
イエスが異様な事を言った。
「え? 子供に絞め技をつかってんの? 」
「仕方なかろう」
「それでトカゲとか絞めるの上手いんだ」
何という事実なんだろうか。




