第八部 第三章 索敵
「で、どのようになさるのですか? 」
ハリーが俺とイエスに聞いてきた。
次の日の朝、俺とイエスがやっと大体の包帯が取れたところで、街に出た。
どこもかしこも、ケルト王国の近衛の騎士団がピリピリとしていて、街に一般の人はあまりいなかった。
「いや、正直、なんの材料も無いからな。忍び込んで来て何かしてるのなら取りおさえれるが、街中を歩いてたって何も無いよな」
「それは言えてるよな。何か相手の特徴とかあるならともかく、これでどう見つけたらいいんだ」
「多分、ケルト王国の騎士団として入ってるとは思うわ」
俺がイエスにそう話すと、イエスはなるほどと言う顔をした。
セシリアちゃんにも化けられる連中だし。
「派閥同士で戦い合っているとは言え元は同じ神聖帝国なんだ。別に派閥にどっちつかずの奴がいても不思議ではない。美味しい方につくというのは基本だからな」
「非常に説得力があるな」
「まあ、実際にそういう軽い奴だけでもなく、何十年もスリーパーとして溶け込んでる奴もいるだろうし」
俺が近衛の騎士団達を見て呟いた。
「なるほど、接触して双方の派閥の出してくる条件を比較すると言う事か? 」
イエスがにやりと笑って囁いた。
こ、こいつ!
黒田官兵衛か?
かって秀吉が毛利攻めで戦っているときに、主君の信長公が謀反で討ち取られたと聞いて呆然自失だった時に、「これで殿(秀吉)のご運が開けましたな」と耳に囁いたと。
これは秀吉の心の底を見抜いていたというエピソードだ。
「ふふふふふふふ、ご安心を。私は貴方様のポチでございますゆえ」
そうイエスが微笑んだ。
『くくくくっ。俺が犯人捜しの名目で敵に寝返るふりして、相手側のこちらに出せる待遇を探るつもりだと気が付くとは。恐ろしい奴。味方には相手を探るために寝返るんだと言えるしな』
「いやいや、安易にそういうのはよろしくないと思いますよ。主」
ハリーが俺の話を呆れて聞いて止めてきた。
どうも、やはり呟いていたようだ。
「その理由は? 」
イエスが興味深そうに聞いた。
「いやいや、裏切りとかそういう事を考えてはいけません。信頼とか信用というのは無くしたら戻らないものですし」
なんてこった。
『ハリーさん、神様のように素晴らしい性格をしていなさる。まさか、こんな聖人みたいなキメラがいるなんて』
「本当だ。驚いたな。こんな凄い立派な奴って実際にいるんだな」
イエスが感心していた。
「いやいや、お前の格好でそういう事言われると俺もどう言って良いのかよく分からんが」
俺がマジで呆れて突っ込んだ。
「俺はたまたまだからな」
「いやいや、格好が全く一緒やんけ」
「それを俺のせいにされても困るんだがな」
「格好と言ってることが違うだろうに」
「現実はシビアなものだ。そうだろう? 」
イエスがそう笑った。
そうしたら、いつの間にか近衛の騎士団に俺たちは取り囲まれていた。
「面白い話をしているな」
近衛の騎士団の一際位が高そうな奴が俺達を見下ろしていた。




