第七部 第五章 セシリアちゃん
俺が暗い顔でしょげていた。
そうしたら、悩んでいたエイドリアン様が躊躇を何度かした上で咳払いした。
「あ、ああ、しようがないな……そう言う顔をされると、我がハートネット公爵家がお前を命がけで守ってた意味が無くなっちゃうからな。ぶっちゃけ、お前は想像以上にこれからの世界で大事な存在なんだ。それは理解しておいてくれ。お前がこの世界の再編に関わるくらいのな」
小声でエイドリアン様が囁くように俺に話す。
「えええええええええ? 」
俺が驚いてエイドリアン様を見た。
いやいや、方向性が違う。
俺は小銭をため込んで、早めにリタイヤして悠々自適な生活をするつもりだったのに。
そんな、恐ろしい思惑に関わる気は無いのだけど。
ふと、前を見たら、イエスが聞き耳をたててたらしい。
俺を見る目がキラキラになっていた。
『くくくっ。割に合うと今の話で判断したわけか。目が完全に乗ったるでぇぇぇって感じになっている』
「えーと、ポチと呼んでください」
イエスが満面の笑みでそう話す。
「いやいや、勘弁してくれよ」
「いやいや、我々ハートネット公爵家もお前に賭けてるんだ。だから、何としてもお前を守るから」
エイドリアン様がそう優しく微笑むと、俺の肩をポンポンと叩いて酒場の隣りのギルドの方へ向かった。
俺とイエスが黙ってそれを見送った。
「いやいや、俺が思ってるのと違う。俺は安定した職と安定した生活。お金がたまったらアーリーリタイアがしたいのに、こんなもん暗殺エンドじゃ無いか」
俺がイエスに愚痴った。
「良いじゃ無いか。一旗揚げれるかもしれんぞ」
「揚げる前に死ぬ可能性のが高い」
「俺も転生する前には田舎でのスローライフが夢だったが、言った通り羊、羊、羊だぞ。そりゃ、のんびりと暮らせるかもしれんが、これが人生かって言われたら、やはり違うなと思ったから冒険者になりに来たんだ」
「いや、殺されたら、やはり違うなも無いだろうに」
「何を言ってる。俺達は転生者だ。来世があるのは分かっている訳だ。死んでも転生するんだ。死への恐怖はあるにしても、他の奴らとは違うだろうに」
イエスがそう胸を張った。
「いやいや、そんな格好で仏教の輪廻転生の話を言われても困るんだが」
「格好は別に好きでこういう格好に産まれたんじゃ無いんだがな」
「じゃあ、ハゲにして見たら? 」
俺がイエスにほほ笑んだ。
「いやいや、勘弁してくれよ」
イエスが苦笑した。
「何か話でも聞いたの? 」
いきなり、目の前にセシリアちゃんとウェーズリーが居た。
病院から帰って来たようだ。
「どうなったの? 」
「一撃しかして無いから、明日には退院できるって。包帯は巻くかもしれないけど」
俺が恐る恐る聞くと、セシリアちゃんがそう答えた。
「そうか……」
俺が頷いた。
「それよりも、貴方に師匠が会いたいそうなのよ。それで迎えに行ったんだけど」
なるほど。
それで、訪ねに来て、たまたま会話を聞いて一撃したわけか。
恐ろしや。




