第七部 第一章 プロローグ
信じられるだろうか。
あの時の酒場で包帯グルグル巻きでいた段階で俺達は一日に許されるポーションの回数を全部使ってあそこまで戻っていたと言う事実を。
そして、それを続けてやっと10日で包帯が取れた。
高いポーションのせいで、今回の儲けの半分くらい吹っ飛んでしまった。
家も破壊されてしまったし、俺は羊の草刈りの手伝いもしやすいのでイエスの家に居候していた。
その牧場の家は結構大きくて部屋が多く、自宅に爆薬を仕掛けていた俺は先回りしてイエスに頼んでいたのだ。
「やっとお互い包帯が取れたな」
イエスが右手の包帯だけ残して全部取れたらしくて、顔がやれやれと言う顔をしていた。
イエスの右手の手のひらはセシリアちゃんの馬乗りパンチ数撃で穴が開いていたのだ。
まさしく聖痕などと冗談いう元気も無かったけど。
「これでやっと肉とか食べれそうだ」
俺もそう綻んで答えた。
何しろ、顎がカクカク言ってたから、肉とかとても食べれなかったのだ。
「それにしても、何であんなに強いんだ? 」
「知らん。昔からだ」
「賢者だろ? 」
「パーサーカーの方が合ってるよな」
俺が苦笑した。
「普通の人間では無いのかもしんないですね。私がキメラ化した時の感覚では」
「いや、そりゃまあ、そうだろ」
ハリーの言葉に俺がそう答える。
あんな人間が居てたまるか。
ハリーもポーションのお陰でやっと針が元に戻った。
『皆が一斉にポーションを使ったせいで、ハートネット公爵領のポーションは全部売り切れてしまった。どっかに買い出しに行かないといけないかもしれない』
「アーランデル伯領に帰ったエドワードに頼んでおけば良かったな」
イエスがそう苦笑した。
同じようにボコボコだったエドワードは報告の為に包帯巻いたまま、馬車でアーランデル伯の元に戻った。
まあ、とんだ厄介ごとに巻き込まれたもんだと、今では思っているが……。
「草刈りの仕事も増やさないとな。流石に包帯巻いたまま草刈りにあちこち行くのは無理だったし」
イエスがそう呟いた。
「だいぶポーションで金を使ったしなぁ」
「何だか、冒険者って出費が多いな」
イエスが目論見と違ったって感じの苦い顔をしていた。
「いやいや、ここんとこのは殆どセシリアちゃん絡みだし」
俺がそう突っ込んだ。
今頃、セシリアちゃんは師匠と家族の元に居るのだろうが、しばらくは怖いので会いたくないな。
「でも、あの方とのキメラ化は一大戦力ですよ。あれほど強い人間型のキメラ化したものは、まず他には無いと思います」
ハリーがそう答える。
そんなもん一杯あったら困るわ。
命が幾つあっても足りない。
「もう、やんないと思うぞ」
イエスがハリーに苦笑した。
「でも、これから神聖帝国と戦う上で、あのキメラ化の戦力は得難いものですよ」
ハリーが熱心に勧めて来る。
「いやいや、キメラ化させたら、俺達殺されるだろ。流石に今度は……」
俺がハリーに真顔で話す。
『戦いに勝っても、その後に死んでは意味が無い』
「リスクあり過ぎだよな」
イエスがため息をついた。
「では、何らかの手を別に準備しておくべきです」
ハリーが熱心にそう話す。
これからの泥沼の戦いを想定しているのだろう。
確かに、何か考えないといけないかもしれない。




