第六部 第十三章 <国境の惨劇>
「なあ、エドウィン。いい加減に戻せよ」
「そうよ。怖くて近寄れないでしょうが」
アルバートとダリアが俺にそう話す。
「おおおおぉぉおおぅうううぅううぉぉおおおおおおおお! 」
目の前には手を突き上げて雄たけびを上げ続けるセシリアちゃんキメラが居た。
「いやいや、元に戻すと俺が殺されると思う」
俺が震えながら首を振った。
「そりゃ、そうだろうけどさ」
アルバートが呆れたように話す。
「いやいや、認めんなやっ! 」
俺が泣きそうになりながら叫んだ。
「しかし、いつまでも、このままではまずいである」
エドワードが苦笑した。
「いや、笑えんと思うぞ。俺達が一斉に見てたのはセシリアちゃんが理解してるから、一緒にやられるんじゃ無いか? 」
イエスの冷静な話で、アルバートやエドワードやダリアちゃんだけでなくウェーズリーですらぞっとしていた。
「いや、お前等はそうかもしれんが、うちの兵士達が皆怯えてるし、いい加減にしてくれ。どの道、あのままでは駄目だろうし」
エイドリアン様が冷やかに駄目だしをして来た。
「どうする? 」
俺が震えて聞いた。
「とりあえずだな。馬に乗って逃げる段取りだけはしてから解除だな」
イエスが冷静にそう話す。
「それしか無いか」
俺達がエイドリアン様に頼み込んで、馬を借りた。
「これなら大丈夫か」
『そう思いながら、恐らくイエス達の考えは俺を別方向に逃がして反対方向に自分は逃げる気だろう。だが、そうは行くか。死なば諸共だ』
「いやいや、喋ってるである」
「なるほど、その手があったか」
エドワードとアルバートの呆れた突っ込みが続いた。
またしても喋って居たらしい。
「いやいや、マジで勘弁してくれ。エドワードの所に行ってくれよ」
「何で私のとこに来るであるか。こう言うのはリーダーのとこであろう」
「いやいや、俺は形だけのリーダーだし」
皆がそれぞれ逃げに入っている。
「何だか、醜い仲間内のやりとりを見せるなよ。一応、うちのA級冒険者チームでしかもS級間近って言われる存在なんだから、もう少し、外から見られる事に気を使えよ。そもそも、彼女のお陰で勝ったんだから、仲間なんだから祝福するべきだろうが」
そう、エイドリアン様が微笑んだ。
『エイドリアン様はまだセシリアちゃんのキメラの姿の恐ろしさしか見て無いからそう思うのだろう。だが、セシリアちゃんに戻ったとしても、現実はあまり変わらない。攻撃力は同じと見て良いのに』
「え? 」
エイドリアン様の顔が驚いている。
どうやら、又、喋っていたようだ。
「解除っ! 」
間髪いれずに、俺がそう叫んだ。
これは逃げるなら今しかないと言う俺の心が発露したものだ。
そしたら、現金な俺の胸の紋章も光った。
いやぁ、笑えねぇ。
そして、恐怖の惨劇が始まった。
セシリアちゃんとハリーが分離した。
そして、セシリアちゃんの革の鎧と服はオーガが巻いていた腰巻みたいになっていた部分だけしか残っていなかったのだ。
「きゃああああああああああああ! 」
セシリアちゃんがその腰巻を身体にまとって半裸になっていた。
そうして、のちに<国境の惨劇>と呼ばれる悪夢の悲劇が始まった。
セシリアちゃんのまわりから風が吹いたようになって、次々と血しぶきをあげて何かが飛んでいく。
見なくてもそれが何かは俺達は分かっていた。
<チームジャスティス>とエドワードの皆で一斉に馬を思い思いの方向に走らせた。
生きる為に。




