第六部 第十一章 新たなキメラ
ハリーが再度連弩のように針を飛ばした。
確かにゾンビ化して無い細いロックワームはそれで死ぬが、ゾンビ化しているロックワームは死なない。
そして、ハリーの針も有限だ。
「どうするの? ハリーが針を全部無くしてしまうわ? 」
セシリアちゃんがそう話す。
「一か八か、別のモンスターと私がキメラ化しますか? 」
ハリーがそう話す。
「え? そんな事出来んの? 」
「当たり前です。キメラですし」
ハリーが笑った。
「えええええ? もうハリネズミの愛らしい姿は見れなくなるの? 」
「嘘っ! せっかく可愛いのに! 」
セシリアちゃんとダリアが無茶苦茶悲しい顔をした。
「いやいや、そう言う場合じゃ無いし」
「そうである」
イエスとエドワードがそう話した途端、セシリアちゃんとダリアの二人に睨まれて黙った。
「いやいや、他に方法が無……」
アルバートも途中で言葉を飲み込んだ。
「それは安心してください。福音枢機卿のキメラは合体を解除すれば元に戻れます。だから、特別製なのです」
ハリーが笑ってそう答えた。
「なるほどな」
俺が頷いて納得した。
それで、セシリアちゃんと不滅のキメラ化を防いだのか。
「他人のキメラを解除できるなら、あのゾンビロックワームのキメラの解除をすれば良いのでは無いのか? 」
「いや、あれを解除してもゾンビの細いロックファームをばら撒くだけになってしまうのである」
イエスの提案をすぐさまエドワードが否定した。
それは確かに正しい。
「とりあえず、羊と合わせるか」
俺がそう話すとイエスが首を左右に振った。
「は? 」
「すでに安全圏に逃げたからいないぞ」
「何で逃がしたの? 」
「いや、あんなモンスターに勝てるわけ無いじゃ無いか。うちは基本ヒットアンドウェイの奇襲戦だし、堅い岩で出来てるゾンビロックワームなんか羊達に攻撃できるわけ無い」
イエスがそう冷静に答えた。
「いや、しかし、合体出来るモンスターが居ないじゃん。どうやってキメラ化しろってのよ」
「確かに、まわりにそんな都合がいいモンスターはいないである」
俺達が議論している間に、エイドリアン様側が押されて戦線は相当厳しくなって来た。
やはり、この手のワームに面で攻撃されると厳しいのだろう。
さらにゾンビ化された仲間の始末も、ハートネット公爵家の兵士達が疲弊する原因でもあった。
「このままだと全滅だ」
「エドウィン何とかしてくれ! 」
エイドリアン様が弱気の発言をした後、アルバートが俺に叫ぶ。
「し、しかし、モンスターはいないし、そもそもあのロックファームを破壊する力と俊敏性を兼ね添えたモンスターなんて……」
と言いながら俺がふとセシリアちゃんを見た。
イエスとエドワードもセシリアちゃんをじっと見ていた。
ダリアとアルバートとウェーズリーもだ。
「「「「「居たっ! 」」」」」」
<チームジャスティス>の皆が一斉に叫んだ。
「ちょっ! 何で皆は私を見てるの? 」
セシリアちゃんが動揺して叫んだ。
だが、俺の気持ちがはっきりと現れてしまったのだろう。
俺の胸の紋章が光り出した。
紋章魔術が始まったのだ。
「ちょっと! ちょっと待てぇぇぇい! 」
セシリアちゃんが動揺しながら、ハリーと身体が溶けあっていく。
「あーあーあーあーあー」
もう唖然と喚くしか俺には出来なかった。
不可抗力だよね。
うん。
やってもーた。




