第六部 第九章 躊躇
「しかし、何で、ゾンビなんだ? 別に単なるロックワームでも良いと思うのだが」
イエスが不思議そうに聞いた。
「ほほう、何か前世の神の子とそっくりな奴が何か抜かしているな」
ラウルさんの怒りにさらに火に油を注いだようだ。
「私の姿が誰か知っているのか? 」
「前世があればみんな知ってるだろうがぁぁぁ! 」
「まあ、そうだよな」
「本当である」
俺とエドワードが冷やかに答えた。
「神の子って? 」
ダリアが聞いて来た。
「そういう御方そっくりなの」
俺が冷やかに答える。
「何て罰当たりな」
ダリアが眉を顰める。
「いやいや、好きでこんな姿に産まれたんじゃ無いから! 」
イエスがそう叫んだ。
「来ますよっ! 」
ハリーが叫んだ。
「そこをどけっ! 」
エイドリアン様が叫んだ。
ハートネット公爵家の兵士が俊敏に飛びのいた。
じつはケルト王国で一番戦が強いのはハートネット公爵家だと言われている。
ぶっちゃけ、練度が半端ない。
いきなり、道がぶち抜けた感じで、ロックワームの直径五メートルはある超巨大な頭が突き出た。
まあ、岩で出来たミミズみたいなもんで、口がヤツメウナギみたいになってる。
その頭には三十センチくらいの直系のロックワームが大量にまるでメドゥーサの蛇の頭の髪のように出ている。
「どこがロックワームなのよ」
セシリアちゃんが呆れたように呟いた。
「噛まれるなよっ! あのロックワームに噛まれるとゾンビになるぞっ! 」
エイドリアン様が叫びながら、剣でメドゥーサの頭の髪のようになった細いロックワームを斬り伏せていく。
「いやいや、ゾンビなら剣で斬り落とされても生きてるんじゃ? 」
アルバートが剣を構えながら警戒している。
確かにゾンビならそういう問題がある。
「いや、あいつのはなりそこないのゾンビだから」
エイドリアン様がそう貶す。
「やかましいわっ! 奇跡のゾンビキメラを何だと思うのだっ! 」
「キメラとゾンビと全然関連性が無いくせに! たまたまゾンビになっちゃっただけだろうが! 」
「貴様はいつもいつも馬鹿にしやがって! キメラも作れない無能の癖にっ! 」
激しく怒鳴り合いながらエイドリアン様が剣でロックワームの小さい奴を綺麗に斬り落としていく。
でも、数が多くて厄介だ。
「お前が本体のロックワームにキメラ化で一杯くっつけた変なミニロックワームを全部斬り落としてやる! 」
「き、貴様ぁぁぁぁ! 」
正直、ラウルさんは何もしないで後ろで騒いでるだけだが、エイドリアン様は仲間とともに斬り込みながらラウルさんを貶している。
いやいや、エイドリアン様は相当強いとは聞いてたが、想定以上だ。
「ちょっと、本気でどうすんの? 戦うの? 戦わないの? 」
セシリアちゃんが俺に鋭く聞いた。
「え? 」
ウェーズリーとともにすでに斬り込んでたアルバートが困った顔で固まった。
「どの道、ハートネット公爵家のギルドの冒険者だし、戦わざるを得ないでしょう」
ダリアがそう言うと、ファイヤーボールを本体のゾンビロックワームにぶちかます。
「ええと、しょうが無いよな」
「所属を言われると当たり前だしなぁ」
俺とイエスがひそひそと話す。
「何か、こう関わりたくない感が凄いであるな」
エドワードが呆れたように呟いた。
「いやいや、秘密結社とか出て来る展開は考えてなかった」
「秘密結社とか言われるとあまりたいしたこと無い様に見えるけども、神聖帝国は相当にやばいんだよな」
俺とイエスがセシリアちゃんに聞くと深く頷かれた。
ああ、何と言う展開なんだか。




