第六部 第七章 動揺
「いやいや、そもそもが、福音枢機卿は貴国に居るはずが無い位なんだがな。それはどう思うのかね。君もある意味我ら神聖帝国と関係は深かろうに」
ラウルが呆れたようにエイドリアン様に話す。
「ええ? 」
「ええええ? 」
俺もセシリアちゃんも皆もびっくり。
『こりゃー相当いろいろと根が深そうだ。どうしょうか。何とか、無かったことにならないのだろうか。俺はコツコツお金貯めて、安定した老後があればそれで良いのだ。貴族とか国王とか冒険者として頼まれごとをする程度ならともかく、別に不相応にどえらい秘密結社だの、自分でそう言う泥沼に入りたくない』
「気持ちが駄々洩れだぞ」
「本当である」
イエスとエドワードが突っ込んだ。
「いや、本音の話。そういう重い話は勘弁してください」
俺がきりりと話す。
「いやいや、君自身がそういう重い立場なんだがな。どの道、君が今回に私がわざわざ話し合いに赴いたのに、問答無用で喧嘩を売って来たのは確かなんだがな」
ラウルさんが目を細めた。
「いや、それは泥棒に対してやってたので、ぶっちゃけ貴方方に対して敵意は……」
「ある」
「え? 」
俺が最後まで言う前にエイドリアン様が断言してもーた。
こ、これは困った。
「ほう。断言しましたね」
「この男は私エイドリアン・ハートネットの秘蔵っ子だ。我々の仲間だ」
エイドリアン様が断言した。
仲間だなどと前世は持てはやされて騙された俺だ。
ここで仲間だと言われてほろりと来るはずが無いのに、何故かほろりとしてしまう。
『何故に? 』
俺が動揺してしまう。
「それで福音枢機卿殿は構わないんだな」
ラウルさんが再度俺に念を押した。
「いや……」
「ああ。構わないと言ってる」
俺が一瞬言葉に詰まったらエイドリアン様が返事してしまった。
ああああああ?
何で?
どちらかと言うとはっきりと俺は誰にでも嫌な事は嫌と言う方なのに。
こんなに嫌なのに……。
「エイドリアン様は素晴らしい、最高の上司だとか自分で暗示をかけるから」
他の奴には聞こえないような本当にわずかな囁きでセシリアちゃんが呆れたように囁いた。
『あああああああああああああああああああああああああああああ! こんな所であれが俺の生死を分ける展開になるとは! 』
「ふはははははははははははははははははははははははは! 良いだろう! 福音枢機卿殿とハートネット公爵家……ひいてはケルト王家の考え方は分かった! 我らに弓を引くと言う事だな! 」
「ふん。別に貴様らが神聖帝国を支配している訳ではあるまい」
エイドリアン様が憎々し気に笑う。
『まあ、なんて事! これ、まんま内部の勢力争いかしら! どひー! 』
「あーあーあーあー、思いっきり巻き込まれてんじゃない」
セシリアちゃんの冷ややかな声が悲しい。
「ど、どうしようかな……」
イエスはイエスで逃げるかどうか悩んでいるようだ。
参った。
自分の洗脳で動けなくなる展開が来ると思わなかった。




