第六部 第六章 ラウル
「やはり、エドウィンが神聖帝国と関係しているのをご存じだったのですね」
セシリアちゃんがさらに追撃した。
いやいや、それをズバリと聞くのもどうかと思うのだけど。
「ああ、その話は一度、帰ってから内々で話した方が良いな」
エイドリアン様がまわりの兵士を見てそう話す。
ああ、やっぱり知ってたんだ。
さらに、その言葉は俺の確信を呼んだ。
「やれやれ、今頃お帰りですか? 福音枢機卿殿は? 」
いきなり、俺達に誰かが話しかけて来た。
『その男は相当身分の高い仕立ての服を着ていた。そして、その雰囲気から高貴な身分だと分かる。そして、金髪碧眼の端正な顔付きとその立ち居振る舞いから、ただならぬ身分である事が分かった。しかも、金糸を贅沢に使い、黄金の宝飾品を品の悪くない程度で縫い込んだ服だ。こんな場所にこんな高貴な御方がいらっしゃるとは』
「いやいや、褒めたって、どう見たってあの人はキレてるよ」
「それだけ高貴な方の服がボロボロで血もついてるである」
「現実を見ろよ。あの人は怒りで肩が震えてるやん」
セシリアちゃんとエドワードとイエスが必死に突っ込んで来る。
「いやいや、そんな高貴な方が俺のような身分の低いものに声をかけて来るなんて……」
「ブチ切れてるだけだと思うぞ」
必死になって現実を直視しない俺をイエスが呆れたように話した。
「いやいや、このラウル・ド・ヴェルジーがグルナディエ帝国の公爵家を拝命してから、このような事は初めてだ。わざわざ面会しに行ったのに随分と舐めた真似をしてくれたものだ」
その金髪碧眼のボロボロの高貴な服を着た男……ラウルさんは額にピキッて感じの引き攣りを出しながら俺を見た。
「ま、待って欲しい。入り口に仕掛けてはいなかったはずだし、家の中に入らないと爆発はしないはずなんだが」
「私が食らったのは、家のまわりに少し離して設定してたベトコンとかが使ってた、竹を使った弓形式のスパイクなんだが」
ラウルさんがベトコンとか言った。
間違いなく前世持ちだ。
「そんなもんを仕掛けてたのか? 」
「やり過ぎでは無いか? 家のまわりであろうに」
イエスとエドワードが呆れた顔で見た。
「しかも、ご丁寧にあちこちに落とし穴を仕掛けていて、それがあちこちに連動して矢だの、何だの降ってくる」
「お前は自分を尋ねに来た人を殺す気か? 」
エイドリアン様が苦笑していなさる。
「いや、嫌われ者だから、まっすぐ道なりに来るセシリアちゃんくらいしか訪ねて来ないし」
俺が悲しそうに答えた。
「いやいや、だからと言って、あれは無いだろう。挙句に家が何かの連動で爆発して、おかげでこのザマだ」
ラウルさんが自分の服の焦げたあたりをピラピラと触って、俺を冷ややかに見た。
『まずいな完全に敵に回してしまったのだろうか? どうする? とりあえず、土下座してみるか? 』
「そう言うのは逡巡したら駄目だろう。思いついたら即実行だぞ? 」
「申し訳ありませんでした」
イエスの言葉を即座になるほどと思い、ラウルさんに土下座した。
「いやいや、そもそもグルナディエ帝国はケルト王国の敵なんだがな」
エイドリアン様が困ったように俺に言った。
「いやいや、休戦協定は結ばれているだろうに」
ラウルさんがそう声を荒げた。
「それなら、公爵たるもの、彼らのギルドはハートネット公爵家のギルドなのだ。我がハートネット公爵家にまず話をしてから来るのが筋だろうに。」
エイドリアン様の目つきが鋭くなった。




