第五部 第九章 迎え
それは上空から来た。
「逃げろっ! 」
イエスが叫ぶ。
アルバート達が馬車に慌てて隠れた。
ブーン!
それは上空から一気に降下してきた。
俺が焚火からでかい薪を取ると次々とそれに向かって火のついたまま投げつけた。
それはオニヤンマのようなトンボと腕にはタガメのような腕がついていた。
しかも、サイズがでかくて全長は二十メートル近い。
またしても虫のキメラかよっ!
火のついた薪を目に受けたのに怯むことなく俺をそれは捕まえようとした。
だが、スキル隠ぺいで相手を幻惑させて避けた。
「何よっ! あれっ! ファイヤーボールっ! 」
ダリアがファイヤーボールを高射砲のように発射した。
それは次々と弧を描いて外れて森に着弾した。
「お迎えだな」
「いや、あんなお迎えいらんわっ! 」
イエスの言葉に俺が反論した。
「大丈夫、霧も出てるし、焚火から離れれば相手は認識できないわ! 」
セシリアちゃんがそう叫んだ。
「福音枢機卿たる我らが神聖帝国の偉大なる御方よ。お迎えに上がったのですぞ」
天空からそう言葉が降りてくる。
「喋るトンボかよ」
俺がウンザリして呟いた。
「しっ、黙ってれば分かんないわ」
セシリアが鋭く注意した。
「ババババーン! チャッチャッチャッ! 」
俺の真後ろで打楽器とシンバルのような音がする。
「ば、馬鹿なのっ! こんな緊迫した段階で効果音とかいるかぁぁぁ! 」
俺が叫んだ。
「いや、さっき、やり忘れちゃってたから」
イエスが打楽器とシンバルのようなものを持って、恥ずかしそうに答えた。
「そこですか? 」
天空から言葉が降りて来た。
再度、隠ぺいで避ける。
最初はトンボだったはずなのに、タガメのような腕からタガメの頭の部分が垂れ下がる形で出て来て、何が何だか分かんない生き物になっていた。
「何がなんでも掴もうとしてるじゃん」
ダリアが引き攣っった顔をした。
「待つのであるっ! 」
その時に騎馬の駆けていくる音と昨日まで一緒に居たエドワード・エルガーの声がした。
「おお、援軍だっ! 」
アルバートが叫ぶ。
十騎ほどだが、精兵のような連中を引き連れてエドワードが俺達の所にやってくると馬から降りた。
「ど、どうした? 」
「アーランデル伯から護衛をするように仰せつかったのである。吾輩たちが来たからもう安心である」
エドワードがそう微笑んだ。
が、彼らはいきなり、馬の腹に取り付けてた楽器類を降ろして奏でだした。
「ジャジャジャジャーン! ジャジャジャジャーン! 」
「そっち? 」
俺が彼らの奏でる音楽に呆れる。
「そうだよ。普通、<威風堂々>だよな。ベートーヴェンの<運命>とか弾かないだろ。エドワード・エルガーの意味が無いじゃん」
イエスが突っ込んだ。
「いや、お前はお前でそっちに突っ込むかよ」
俺があまりの緊張感の無さに呆れた。
「意味無いじゃん! 」
セシリアちゃんよりダリアがブチ切れた。
「「福音枢機卿。我らは同志の命を受けてお迎えにあがったのです。お戻りください」」
まるで壊れたレコードのように話す言葉がオニヤンマの部分と別れて出て来たタガメの部分とで双方が同じ事を言っている。
それがさらに不気味さを増していた。




