第一部 第五章 戦闘
さっさとアルバート達を抜き去ると俺は小山に登ってアルバート達を見下ろした。
アルバート達は走っているが、遥かに後方に居た。
俺と身体能力が違い過ぎるのもあるのだが、それ以外にもアルバートもウェーズリーもプレートアーマーを軽量化して着ているとは言え重すぎるのだ。
そして、ダリアも魔術師っぽさを出そうとしてダボダホの服を着ていた。
あれでは走ればすぐにばててしまう。
俺は革と鉄の薄い板を数枚組み合わせた防具で急所だけつけている。
実力だけでなく、甲冑の重さが違えばそれはお話にならない。
『走り続けるアルバート達の背後に銀色の化け物みたいにでかいオオカミ達が幾つも姿を出しては消えていた。ああやって、あいつらは相手にプレッシャーをかけて獲物の呼吸を乱す。サイレンスマーダーとは良く言ったものだ』
「どうするの? 助けないの? 」
セシリアちゃんが悲しそうな目で俺を見た。
俺は黙っていた。
「確かにアルバート達は貴方を殺そうとしたけど、でも、貴方も悪いところがあるわ。元は幼馴染だったのに……」
セシリアちゃんが悲痛な声をあげた。
俺が見捨てると思ったのだろう。
「え? 助けるよ」
俺が笑った。
『当たり前だ。俺を殺そうとしたが、彼らは俺がしがみつくべき大手なのだ』
俺がそう答えたのでセシリアちゃんがほっとしたようだ。
「ここで待っていて」
俺が静かに小山を降りて行く。
アルバート達は俺の本当のスキルを知らない。
そう、俺の特殊スキルは実は暗殺だ。
それを使って王家に食い込んだのだ。
「もう駄目」
ダリアがその場にへたり込んだ。
「馬鹿ッ! 」
アルバートがそれを助けようと立ち止まった。
「馬鹿な事になっちゃった」
ダリアが後悔したような顔をしている。
「ああ、仲間をカッとなったとは言え、殺そうとしたんだ。その罰だろう」
アルバートが剣を抜いて苦笑した。
ウェーズリーが盾を構えた。
「この数だ。やれるだけやってみるさ」
そう呟いて、最初の銀色のオオカミをアルバートが斬り落とした。
ウェーズリーはその隙に襲ってきた銀色のオオカミを盾で叩き落す。
ダリアは息を整えて詠唱に入った。
彼らが囮になってくれている。
俺はオオカミ達の背後から暗殺をやるかのように抹殺を開始した。
真黒く塗った闇に溶けるような猛毒を塗りこめた剣と糸に大量の釣り針が付いていて、それにも一撃必殺で相手を昏倒する毒が塗られていた。
それは俺の索敵で相手が間違いなく通るであろう所にはえ縄漁の如くに散りばめられた。
それらは相手の身体に絡まるように刺さってオオカミ達の命を削いだ。
また、アルバート達の奮戦がまるでオオカミ達が罠に嵌められて、挟み撃ちされているような誤解をさせるように俺が動いた。
アルバート達が奮戦すればするほどオオカミ達は息の根が止まっていく。
ダリアのファイアボールが次々と発射された。
それもまた、索敵で確認してオオカミ達を追い詰める罠として俺が使う。
ウェーズリーが盾で受けながら、下に倒れているオオカミの血だまりで足を滑らせて、もう一頭の狼が死角からアルバートを襲った。
それを俺が剣を投げつけて倒した。
俺が草むらの中から出てくると、アルバート達は息を飲んだ。
草むらの向こうに俺が倒した大量のオオカミ達の死体が見えたからだろう。
「た、助けに来てくれたのか」
「嘘」
アルバートとダリアが驚いた顔をした。
「当たり前だ。幼馴染じゃ無いか」
俺がそう笑った。
アルバート達が俺に済まなさそうな顔をした。
『違うもんねぇぇぇ! お前等は大切な俺の生活の糧なんだよぉぉぉ! 大切なA級冒険者チームの場所を手離すもんかぁぁぁ! お前らを逃がすわけねーじゃん! 』
「違うもんねぇぇぇから喋ってるから」
終わったのを索敵で理解したセシリアちゃんがいつの間にか小山から降りて来て俺の背後に居た。
俺が慌てて、アルバート達を見たら全員が顔面蒼白になっていた。
あのウェーズリーですらだ。
ちょっと本音を言っちゃったのは失敗だった。




