第五部 第六章 針
朝もやの中で俺がアルバートと見張りを交代した後にトイレに行く振りして昨日の気配が消えたあたりに行く。
緩い丘の上で横に小川が流れている。
そこを警戒しながら歩く。
とは言え、昨日の奴の気配も敵の気配もしない。
俺がそばの木の枝を掴んで一回転すると枝の上に乗った。
勿論、棒手裏剣を抜いている。
「いやいや、様子を見に来たんだろ。俺もだよ」
そう、イエスが俺に話す。
「どうも、お前が気になるな」
俺が真顔で警戒感を丸出しにした。
「いやいや、別に俺はに気配丸出しで追いかけてただろうに」
イエスが苦笑した。
「その辺りが逆にわざとらしいんだよな」
「いやいや、急に警戒されると困るんだがな。そもそも、同じ前世を持ってんだし。こういう前世持ちが一杯いるなら、まあ、軍産複合体とかと同じ事を考えるだろうよ。俺は俺達と同じ前世持ちの奴で王族や貴族に産まれた奴等が神聖帝国とやらを作ってると思うが」
「そうかもしれんけど、お前もその一員じゃ無いのか? 」
「それなら、もっと良い生活をしてると思うが」
イエスが頭を搔いて苦笑した。
「まあ、そうだよな」
「とりあえず、俺としても敵がどういうのか知っとかないとな。申し訳ないがリスクが合わないと見たら、俺はチームを止めて田舎に引きこもるわ」
イエスがもの凄くぶっちゃけた話をした。
「ああ、そう言う事なら、俺も同意だ」
「いやいや、これがお前絡みなら、それは無理だぞ」
「逃げるのは得意だ」
「ああ、そういやそうかもな」
俺とイエスが頷きあった。
とりあえず、意見の一致を見たので二人で気配が消えたあたりに向かった。
そして、木に真っ黒い一メートルほどの大きさの甲虫が二体ほどだが、何か三十センチくらいの鋭い針のようなものに貫かれて死んでいるのを見た。
それも、数本ずつ刺さっている。
「ほう、なるほど、死んでるのはキメラと同じく虫だな」
「虫にしたら安易に死んでる」
俺が針の匂いを嗅いだ。
「毒か? 」
「ああ、間違いない。神経毒かな? 」
「針を見る限り、鉄とかで無くて、生体っぽいな。こいつもキメラか? 」
「それも可能性が高いな」
俺とイエスでいろいろと観察してた。
「やっぱり、キメラだよね」
「「おおお! 」」
いきなり、セシリアちゃんに声をかけられて、思わず飛びのいた。
「気配察知が得意なんだから、とっくに気が付いてるでしょうに」
「いや、敵意の察知の方を優先してたから」
「俺も同じ」
俺とイエスがそう答えた。
『習慣的に俺はセシリアちゃんは怖いけど仲間だと完全に思ってるから、無意識に察知を外す時がある。今回もそれだ』
「まあ、喋ってるけど、それも気を付けた方が良いと思うよ。今後は非常に厄介な連中を相手にするわけだから」
セシリアちゃんが真顔で注意した。
「俺もそういう意味ではやばいな。羊飼いやってた時のオオカミとかの殺意察知から始めたから、相手に敵意が無いと微妙に分からん。こいつらもこれを殺した奴との戦意があったもんで分かっただけだし」
イエスがそう話す。
「分かった。俺もそう言う無意識の警戒を外すのをちょっと止めるわ」
俺がセシリアちゃんに答えた。
俺達にとって敵もいるが守ってる奴もいる。
正直、今の段階ではそれしか分かんない。




