第五部 第三章 監視
結果的に少し早い夕食は豪勢になった。
長旅になるとビスキュイと呼ばれる、全粒パンを二度焼きした日持ちがよく数週間は持つパンを食べる事になるが、まだ、街を出たばかりなので、二級品の白パンを食べた。上流階級用の上等な粉を取った後の粉で作られたものでサイズも大きい。
さすがに冒険者の舌が肥えるわけも行かず、かと言って、A級冒険者としても小麦のパンとして最下層のふすま入りのふるいにかけられてない全粒パンを食べるのは嫌だと言うアルバートの考えから、うちはいつもこれだ。
最下層のふすま入りのパンもスープに浸して食べれば美味いし、栄養価も高いのだがなぁ。
俺なんかは家では常にふすま入りのパンだから、ある意味、<チームジャスティス>の冒険クエスト中は贅沢である。
まして、トカゲ肉とは言えシチューと焼肉とエビとカニの焼いたものもある。
まあ、ギャラをあまり貰えなかった俺達からしたら、少しでも美味いものを食べたい気はするから、まあ良いか。
そうやって、夕闇の中で、焚火を焚いて皆で肉などを焼いて食べた。
ダリアちゃんのシチューもまあ及第点のレベルはあるが、俺はセシリアちゃんのシチューのが美味しいので好きなのだが。
セシリアちゃんが三白眼のままなんで、誰も頼めない。
今回は随分と長いなぁ。
「いや、あんたがペラペラ話すからでしょうが」
ダリアが不機嫌そうに突っ込んだ。
「いやいや、いつの間にか喋っちゃったんだもの」
俺がそう言い訳をしたら、セシリアちゃんが無言で三白眼を向けて来た。
「まあ、でも、これでうちのS級昇格も時間の問題だし」
アルバートがまあまあという感じで話す。
お家再興が大事なのは分かるが、どうして、こいつは空気読めないし、強けりゃいいやで話をするんだか。
セシリアちゃんの三白眼が今度はアルバートに向いた。
アルバートが動揺してスープの器をカタカタいわしている。
『ビビるなら、言わなきゃ良いのに』
「なぁ、気が付いてんだよな」
イエスがいきなり囁くように話してきた。
「ああ、ずっといるな」
俺がそう答えた。
その俺達の会話で、何だかんだ言ってもA級冒険者チームなだけあって行動が早い。
アルバート達が一気に身構えて殺気は出さないようにあたりをそれとなく見渡した。
「山賊なの? 」
ダリアが微笑んだままそう聞いた。
「いや? 殺気は無いな……」
俺が呟いた。
「じゃあ、ラッセルを殺した連中の監視か? 」
アルバートが真剣に囁いた。
「いや、違うな」
「俺もそう思う。と言うか、気配的に人間じゃ無いよな」
俺の言葉にイエスが補足した。
やはり、こいつ、並みの奴では無いな。
恐ろしい索敵能力だ。
俺の能力はマジ話として師匠の死神すら舌を巻くレベルなんだが、それと同等レベルとはな。
俺が即座にイエスの打楽器を取り押さえたので、緊迫の効果音が出せずにイエスはむくれていたが。
効果音を出す主義が無ければ、本当にすごい奴なのに……。
「あ、仕方ないからって口で効果音を言うなよ」
俺がさらにイエスに釘を刺した。
「何で、そんなに効果音に拘るの? 」
ダリアが横で呆れた顔をした。
「いやいや、私の生き様ゆえ」
イエスが胸を張った。
その時、カサカサと枯れ葉を踏みしめる音がした。
そして、それは遠くから囁くように、こう話した。
「我が主よ」
それは人の声では無かった。




