第四部 第一章 プロローグ
ラッセルがアーランデル伯の執務室に呼ばれている間に、エドウィンは自国ケルトの首都のような賑やかさのアーランデル伯領の城下の街に居た。
「ここだけの話なんだがな。ラッセル伯がアーランデル伯を裏切っているようなのだ。絶対に他言は無用だが、何か知らないか? 」
街の警備兵の中で隊長のような人物に通りの隅に連れて行ってエドウィンが聞いた。
「いやいや、そのような話は知らないし、お前に話すいわれが無い」
「俺はアーランデル伯の特別な依頼でハートネット公爵家の密命で動いているA級冒険者チームのものだ」
エドウィンが滅多に無い銀色のA級冒険者チームのみがつけれる紋章のバッチを見せた。
これにはハートネット公爵家のギルドの所属である事からハートネット公爵家の紋章とA級チームであるAの字が彫られていた。
「むー、これは間違いのないバッチだ」
相手の警備兵の隊長が唸る。
各ギルドの紋章にはその爵位の家の紋章が彫られており、これを偽造すれば即座に死罪になる。
しかも、単に国の警察組織が追うだけでなく、そのギルドを管轄する貴族に泥を塗った形になるので、即座に暗殺チームを出す貴族が居るくらいだ。
まして、祖国ケルトには10しかないAチーム。
その威力は素晴らしかった。
そして、最大のポイントはエドウィンが自分の名前を言わない事だったりする。
「まあ、昔から、フランシス商会と関係が深いとは言われてるな。元々、フランシス商会はグルナディエ帝国とも親密だし……」
警備兵の隊長がそう話す。
「ほほう、それはまた素晴らしい話を有難い」
エドウインがそう微笑んだ。
「待ってくれ。あの家令のラッセルさんがグルナディア帝国に裏切っていると言うのは間違いない事実なのか? 」
警備兵の隊長らしい男がそう聞いた。
「ああ、だが、まだはっきりとした証拠は出ていない。これは極秘の任務なのだ。絶対に他言は無用だ」
そうエドウィンが口止めすると、また街の中に聞き込みへ向かった。
エドウィンはわざと他言は無用だと念を押していた。
絶対に秘密、他言は無用、極秘任務、これらのワードを散りばめるだけで、彼らは皆、内緒話で広めてくれる。
この手の話が内密にされることは無いからだ。
エドウィンにとって最初は無意識でやっていた事なのだが、知らないうちにその効果を理解して噂をばら撒くことにした。
『人の意識というものは恐ろしいもので、こうやって拡がっていくうちにデマなどと結びついてドンドンと話が大きくなっていく。しかも、この手の内緒の話の方が世間で公式に言われてるものよりも遥かに皆が信じる。その結果、周りの目や噂に煽られて皆の疑いは集中するし、裏切りとかなら裏切らせてる奴が邪魔なこちらを始末しに来たりするし、そうでなくても疑いが集中しているものは馬脚を現すものだからだ。ふはははは、デマほど拡がるものは無いぃぃぃ! 』
「恐ろしい奴だな」
「本当である」
いつの間にか別で動いてたイエスとエドワードが俺の背後に立っていた。
「何だ? それは? 」
俺がイエスが持っている打楽器を見て驚いた。
「いやいや、エドワードに勧められてな。口で言うよりもこうやって打楽器などで効果音をやった方がインパクトがあるのでは無いかと言う事なのだ」
「ダダダダダ! バーン! 」
イエスがそう言いながらドラムとシンバルのようなものを使って音を出した。
「おおおおお、何というインパクトだ」
「素晴らしいだろう」
「これでパワーアップであるよ」
俺の感動にイエスとエドワードが喜んでいた。




