第三部 第九章 鍵
「確かに、ここにエドウィンとか言う奴が居たんだ」
ラッセルがそう必死に話した。
「いや、でも、部屋から誰も出て来ていないですし」
「いや、奴は衛兵が入れてくれたと言ってたぞ」
「それはあり得ませんよ。ラッセル様。この城はアーランデル伯様の厳命で中には知らない人間は入れないようになっておりますゆえ」
衛兵がそう答える。
「いや、お前等が入れたのではないのか? 」
「まさか? 」
衛兵たちが否定した。
「いや、確かに居たよな」
ラッセルが部下に言うと部下も頷いた。
「うーむ。あり得ないと思うのですが、ラッセル様がそこまでおっしゃるのなら、全ての衛兵に通達して城の中を捜索して見ます」
「ああ、頼むよ」
衛兵の言葉にラッセルが頷いた。
「では、失礼します」
そう、衛兵が扉を閉めると、その反対側にエドウィンがいる。
「えーと、疲れてるのかな? 」
「イヤ、確かに見たぁぁぁぁぁぁぁ! 」
ラッセルの部下が絶叫した。
ラッセルの背後の戸棚の帳簿をまたいつの間にかエドウィンが見ていたからだ。
「うぉぉぉぉおおぉぉ! 居たぞぉぉぉ! 衛兵ぃぃぃぃ! 」
ラッセルが叫ぶと衛兵たちがドカドカと部屋に入って来た。
「どこですか? 」
衛兵達が抜剣してあたりを見回す。
すでに、エドゥィンは居なかった。
「扉の裏側では? 」
ラッセルの部下が騒ぐので、衛兵が剣で扉を閉めて警戒するが部屋の中に居ない。
「いや、確かにいましたよ? 」
ラッセルの部下も騒いだ。
「いやいや、しかし、誰も出て行ってないですよ? 」
衛兵達が困惑した顔をした。
「とにかく、居たんだ。衛兵たちに探させてくれ」
ラッセルがそう言うので、衛兵たちがラッセルの部屋を探し回るが何もなくて、肩を竦めている。
「で、では、廊下か城壁にいるのでは? 」
「廊下は我らが見た時はいませんでしたし、後は城壁ですか……」
そう言って衛兵の一人が窓を開けて上下左右を見るが誰もいない。
「居ませんが……」
「とにかく、城内の警備の徹底をしてくれ」
ラッセルが真っ青な顔で呟いた。
衛兵達が首を傾げながら出て行った。
「ど、どういう事だ? 」
「確かに私も奴を見たのですが」
ラッセルと部下が困惑した。
「今日はもう休むか。検地もあったし、今日は疲れているのかもしれん」
ラッセルがため息をついた。
「ああ、ラッセル様、その方が宜しいかと」
ラッセルの部下がそう心配そうに答えた。
「そうするか」
ラッセルが引き出しから錠前のたばを出した。
勝手に人が入らないようにあちこちにラッセルは鍵をかけていた。
「ほう、こんなとこに鍵が……」
いきなりラッセルが背後から声をかけられてギギギギィと振り返るとエドウィンが居る。
ラッセルが金魚のように口をパクパクさせた。
「いや、後は私がやって置くのでお疲れ様です」
そう言って、あっさりとラッセルの手を捻って鍵の束をエドウィンが手にした。
「ちょ、待てっ! 貴様ぁぁぁぁぁ! 鍵ををををを! 」
ラッセルが絶叫した。
「衛兵っ! 衛兵っ! 」
ラッセルの部下が再度叫んだ。
衛兵たちが入って来ると、またエドウィンが消えた。
「どうしました? 」
衛兵達も度重なる呼び出しで態度が慇懃無礼になって来た。
「いや、見てくれ! ここの引き出しに入ってた鍵の束がっ! 」
そう、ラッセルが叫んで、引き出しを開けると鍵の束が入っていた。
「「え? 」」
ラッセルと部下が唖然とした。
「あるじゃ無いですか……」
そう衛兵たちは不機嫌そうに言うと出て行った。
「何で? 」
ラッセルが凄い顔をしていた。




