第三部 第七章 家令のラッセル
アーランデル伯の居城は盆地の中央あたりにあり、盆地の中にある湖から引いた堀で囲まれていた。
盆地の平城なので湖に隣接させて堀を作る事で、城の防御力を高めている様だ。
見るからに城の警備も堅く、俺でないと入るのが難しそうだ。
そこの正門の跳ね橋の前に華美では無いにしても、それなりの作りの馬車が止まった。
そこから、中年くらいのジェントルマンが出てくる。
四十後半くらいの年齢で着ている服の仕立ては古いが、それなりの貴族のような恰好をしていた。
「あれがアーランデル伯の家令ラッセル・エイムズである」
「家令って執事? 」
「いやいや、執事は家の中の差配と食事など主人の世話をするのである。家令はその上の位で財産管理など最上位の立場である」
「そう言えば、エイムズ家って法服貴族の家柄だな」
イエスが思い出したように話す。
「いかにも。我らの祖国ケルトの行政を行う法服貴族ではまあまあの家柄だ」
「そんな奴が裏切ったと言うのか? 」
俺が怒りに燃える。
『一般ピープルの俺なんか世知辛くいろいろと薬草を取ったりいろんな仕事をして必死に食いつないでいると言うのに、産まれついて貴族の家柄の癖に、そう言う根性が許せん……と言うより羨ましい。俺もそんな家に産まれたかった。笑っていても、他所からお金の話が持ち込まれる。何という羨ましさだ』
「いやいや、本音が素晴らしいな」
イエスが笑った。
「いや、そうだろう。祖国のケルトからも給与など貰える立場でありながら、グラナディア帝国から賄賂が貰えるとは! ラッセル・エイムズに俺がなりたいくらいだ」
「いやいや、方向性が違うと思うのだが」
エドワードが苦笑した。
「何だ、そこで騒いでいるのは……。<チームフルメタル>の一人でありながら隠密作戦で音楽をかき鳴らすので参加できなかったアホゥか? 」
つかつかとラッセルが憎々し気にこちらに来て俺達をじろりと見た。
「ババーン! 」
「チャチャチャー」
イエスの効果音とともにエドワードが楽器を鳴らした。
ラッセルの登場を意味してるようだ。
だが、こいつはグラナディア帝国から賄賂を貰って裏切っている者だ。
その音楽は違うだろう。
そこは悪代官の登場シーンの音楽ではないか?
「むう。確かに」
「もうちょっとおどろおどろしたイメージか? 」
イエスとエドワードが唸る。
「いやいや、誰がグラナディア帝国から賄賂を貰っていると言うのだ! 何だ? こいつは? 」
ラッセルが俺をじろりと睨んだ。
『ふふふふふ、早速、俺に目をつけたかぁぁぁ! なるほどな! 腹黒い奴ほど、相手を良く見ていると言う事か! 』
「いや、お前がそう喋ってるだろ。裏切っているとかなんとか! 」
『ふふふふ、やはり後ろ暗いかぁぁ! だろうな! 賄賂を貰い裏切るものは心の奥底で罪悪感を持つもの! アーランデル伯の将軍を暗殺し、アーランデル伯の傘下の<チームフルメタル>を襲撃させる悪党めがぁぁぁ! 』
「何だ、こやつは? 」
「ふはははははははは、悪党を許せぬ正義の使者よぉぉぉ! 」
俺が胸を張った。
「はあああああ? 貴様、無礼だろうが? お前らっ! 」
ラッセルが馬車に居た衛士を呼んだ。
が、衛士達は訝し気に俺を見るだけだった。
「どうした? 」
ラッセルが訝し気に聞いた。
「いや、こいつハートネット公爵のギルドのA級チームの銀章をつけてます」
「軽装の革の鎧に、この喋り……」
衛士達が凄いドン引きし始めている。
「何だと言うんだ? 」
「多分、<ストーカーのエドウィン>では無いかと」
衛士が恐ろしい物でも見るように俺を見て話す。
「「はあああ? 」」
俺とラッセルが同時に叫んだ。




