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第三部 第五章 エドワード・エルガー

 俺とイエスが酒場の入り口で予約をとっていた。


 あれから、すぐにアルバート達はアーランデル伯領に旅立った。


 俺達は羊の草取りの予約である。


「この儲けは全部チームに出さないといけないのかな? 」


「半分貰うならそうなるな」


「くくっ……」


 俺の言葉にイエスが俯いた。


「いやいや、とは言え、A級冒険者チームの半額の方が手取りは上だしな」


「さっき、報酬を聞いたから分かっている。だが、これは大切な副収入だったのに」


「仕方あるまい。同じエイドリアン様の口利きだしな」


「働いても持っていかれると思ったら労働の意欲が」


「それは分かる」


 予約が入る度に顔が歪む。


 このクエストが終わってからなら、俺達の貴重な副収入だったのに。


「いっその事、予約を取るのをやめるか? 」


「いや、エイドリアン様の目がある。それは悪手だ」


 一度信用を失えば、それを取り返すのは非常に厳しい。


 だから、売らざるを得ない。


「悲しいな」


「現実の厳しさだな」


 イエスと俺が物悲しい顔で座っている。


「君達が噂の転生者グループかな? 」


 目の前にこちらの世界のバイオリンに似た楽器を持った男が立っていた。


 背の高いカイゼル髭の男で貴族のような気品に溢れていた。


「どなた? 」


 俺が訝しげに聞いた。


「吾輩はアーランデル伯の秘蔵のA級冒険者チームの<チームフルメタル>のメンバーであるエドワード・エルガーだ」

 

「エドワード・エルガー? そういや、そんなアニメだか漫画の似たような名前の主人公の話で、こんな人いたなぁ」


「あったなぁ」


 これに関しては俺とイエスの見解は同じだった。


「いやいや、その漫画だかアニメ以外に、この名前と顔で有名人がいるだろうに? 」


 エドワードが愚痴る。


「何かあったっけ? 」


「いや、知らんな」


 俺とイエスが首を傾げた。


「いや、お前みたいにメジャーじゃ無いけど、この容姿と名前でピンと来て欲しかったな」


 エドワードがそう愚痴る。


「誰だよ」


「知らんな」


「くくっ、音楽にもっと目を向けて欲しかったな。イギリスの超有名な作曲家だよ。この容姿と名前は? 」


「イギリスだとビートルズしか知らんな」


「そうだよな」


 俺とイエスが冷ややかに答えた。


「いやいや、<威風堂々>とか知らんのか? 」


「何だっけ? 」


「プロレスラーの入場曲で使われてたな。あれかっ! 」


 イエスが初めて驚いた。


「え? 思い出すきっかけがプロレスラーなん? 」


 エドワードが悲しそうだ。


「いや、そんなもんじゃ無いか? 」


「ちっ、自分はイエスキリストなんで調子に乗って」


 エドワードが舌打ちした。


「待て待て、その名を知っていると言う事は? 」


「いや、お前らと同じ転生者だよっ! 」


「ババーン! 」


「マジかよ」


 イエスの効果音とともに呟いた。


「いや、それはこうだろ 」


「ジャジャジャーン ジャジャジャーン」


 エドワードがベートーヴェンの運命をアレンジして衝撃的なシーンをバイオリンに似た楽器で演出した。


「ま、まさか、貴様も? 」


 イエスが効果音を忘れて驚いた。


「ふふふ、そのとおり。吾輩はバックミュージックが無い、この世界を憂えていたのだ」


 エドワードがふっと言う感じで話す。


「ここにアーランデル伯の命令で依頼に来ていたら、吾輩と同じ着眼点を持つものがいるのを知って、是非会いたいと思っていたのだ」


「おおおおお、同志よ」


 イエスが感動していた。


 ひょっとして、俺も何か音楽とか効果音とかした方がいいのだろうかと悩んでしまった。


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