第三部 第二章 依頼
「お、まだ居たか」
エイドリアン様が俺達を見つけて話しかけて来た。
「「何でしょう? 」」
俺とイエスがハモる。
しかも、イエスの野郎は俺の横で揉み手を俺と一緒にしていやがる。
『危ない。こいつ、並みのヨイショ野郎では無い。俺のエイドリアン様の愛に挑戦して来るとは。くくくっ、もしかしたら、エイドリアン様の愛が奪われてしまうかもしれない。それだけは命がけで阻止しなければ……』
「すまんが、お前が俺を大事に思ってくれるのはうれしいが、ホモじゃ無いか? とか言われたら辛いから、そう言うのは声に出さないようにしてくれ」
エイドリアン様がそうおっしゃった。
「いや、もし、そうなら頑張ります」
俺が震えながらも必死で口に出した。
「シュビッ! スパーンッ! 」
「何を頑張んだぁぁぁ! 」
セシリアちゃんのローリングソバットがイエスの効果音とともに俺を蹴り飛ばす。
「スパーンッ! 」
「お前もぉぉ! 効果音はいらんと言ったろうがぁぁぁ! 」
セシリアちゃんが着地と同時に効果音を言い続けるイエスにドロップキックを浴びせるのが見えた。
だが、俺はさっきはセシリアちゃんにびびって効果音を口にしなかったイエスが決死の表情で効果音を喋ってるのを見て、流石だと感動した。
「あーあーあーあーあーあーあーあー、何でこんなのが私達のメンバー何だか」
ダリアが呆れ果てたように聞いた。
「私もこんなのに入れて無いよね」
セシリアちゃんの三白眼でダリアが目を逸らした。
恐ろしや。
「まあ、これ以上騒がしくなっても困るわ。<チームジャスティス>に俺から依頼がある。ギルドマスターの部屋に全員来てくれ」
エイドリアン様がそう話した。
こういう話の感じの時は、クエストと言うより、別の厄介な話が多い。
「厄介事ですね」
アルバートがきっと<チームジャスティス>のリーダーの顔になった。
俺とイエスも簡易の机のかたずけを始めて、羊たちは水飲み場の方へ移動させた。
こないだ薬を入れられたのが嫌だったらしくて、イエスの日曜大工で、カバーをつけて薬とか投げ込みまれにくいように改造されていたが。
こういう所は抜け目がない。
イエス自身も相当やるのでは無いかと思ってるのだが。
「とりあえず、早くギルドマスターの部屋に行きましょう」
セシリアちゃんも少し真剣になっている。
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ギルドマスターの部屋はギルドの上の階の一番奥にある。
樫の木と薄い鉄板で頑丈に守られていて、襲撃があったとしても、それに対して対応できるようになっていた。
その辺で、ここのギルドが実は普通のギルドでは無いのが分かる。
普通のギルドでいくらギルドマスターの部屋だと言ってもここまで頑丈に作られてはいない。
ハートネット家のギルドと呼ばれるだけあって、実はたまに傭兵みたいな仕事も来る。
モンスター退治だけが仕事では無いので特異と言えば特異だ。
で、この部屋に呼ばれるのは、そっち向きの話が多い。
「ん? 何か俺が話してましたか? 」
俺が心配になってエイドリアン様に聞いた。
「いや、今は喋ってない。ここではちゃんと話さないでいてくれるから、それをもう少し拡げろよ」
「はあ、申し訳ないです」
「まあ、良いさ。でだ、実はクエストを引き受けた<チームチェイン>が帰ってこない」
エイドリアン様の言葉で皆の目が鋭くなった。
今、<チームチェイン>はエイドリアン様の特命で動いてると言う噂は聞いていたからだ。
となると相当厄介事だな……。
俺がセシリアちゃんと目を見合わせた。




