第二部 第七章 使徒アンデレ
「ババババーン! 」
イエスが効果音を叫んだ。
「むう? 」
次に現れた羊の使徒アンデレがやや膝を落とし内股でレの字に足を構える形で二本足で立った。
「ふははは、分かるか? 」
「サンチン立ちだと? 空手か? 」
「その通りだ。昔、通信教育で習ったものだ」
イエスが自慢げに話す。
「いや、普通に習いに行った方が良いんじゃね? 」
「殴られたら痛いじゃ無いか」
「なるほどな」
そのイエスの意見には同感だ。
「ふははは、さあ、今度はパンチだけではなく、蹴りもあるぞ。戦えるか? 」
イエスがにやりと笑った。
「と言うか。 まさか、全ての羊がそれぞれ違う格闘技をやってるのか? 」
「ふふふ、中国拳法とかレスリングも柔道もある。全部通信教育だがな」
イエスが胸を張った。
「つまり、全部、お前の羊は戦えると言う事か」
俺がそう聞いた。
「ふははは、その通りだ」
「じゃあ、終わりだな」
イエスに俺が呟いた。
「何? 」
イエスが驚いて羊たちを振り返ると痺れてその場に一斉に座り込んだ。
「こ、これは一体」
「いや、さっきから酒場前の馬用の水槽に顔を突っ込んで羊が水を飲んでたから、どさくさに痺れ薬を固めたのを放り込んでおいたんだ」
「なにぃぃぃぃ! 」
イエスが絶叫した。
「うわぁ、えげつなっ」
セシリアちゃんが横で冷やかに呟く。
戦おうとしていたアンドレも痺れて座り込んだ。
「ここまであまり水をやらずにつれて来たのだろう。羊が喉が渇いて堪らないようだったからな」
俺が冷やかに呟いた。
「何だ。あっさりと決まっちゃったね」
ダリアが苦笑した。
「何だよ」
「終わりかよ」
周りの酒場の連中が呆れた様に呟く。
「いや、引き分けだな」
俺が頭を搔いた。
「ほう、分かるか」
イエスが笑った。
「どう言う事だ? 」
エイドリアン様が不思議そうに首を傾げた。
「もしもの時に、街の外に展開させていたんだな」
俺がそう向こうの街はずれを指差した。
「そうだ。だまし討ちされては困るからな」
イエスがそちらを見た。
そこには大量の油の入ったランプを持つ二本足で立つ羊たちが居た。
「なるほど、別動隊か」
エイドリアン様が苦笑した。
「街をもしもの時に焼き払う準備がしてあるとは流石だ。ここがエイドリアン様の街で無ければ、全然全く気にしないが、ここは大切なエイドリアン様の街だ。やめてくれ。その代わり約束通りお前をこのA級冒険者チーム<チームジャスティス>のメンバーにしよう」
俺が微笑んだ。
「そうか……」
イエスも微笑んだ。
「ちょっと、待ってぇぇぇぇ! 何、勝手に仲間を増やしてんのぉぉぉ? 」
アルバートが発狂したように叫んだ。
「あんたっ! 勝手な事をををを? 」
「また新しい強力な仲間が増えたな。良し、登録をして置くぞ」
ダリアが叫んでる横でエイドリアン様が勝手にそう断言した。
『残念ながら、このギルドでエイドリアン様に逆らえる人間はいない。ふふふふ、認めるしかあるまいぃぃぃ! ふははははは! 』
「いや、だから煽るなと」
セシリアちゃんがじろっと見たので俺は黙った。
「では、よろしくお願いします」
そう、イエスがエイドリアン様と握手した。
アルバートとダりアが凄い顔をしていた。
「お前、悲願があるんだろ。軍隊は必要だろう」
俺がアルバートに囁いた。
「いや、そりゃあ軍隊は必要だが……羊の軍隊かよ……」
アルバートが泣きそうな顔になった。
『だが、アルバートは受けるしかあるまい! 彼らは奇襲に使えるからな! 』
俺が喋ってたらしく、アルバートの目が少し異様な輝きを見せた。
『それは正しい。誰も羊が敵の兵とは思わないからな』
「え? 受けちゃうの? 」
分け前が減るだけでなく、変な奴が増えるのでダリアが本当に泣いていた。
「駄目だ、こりゃ」
セシリアちゃんが呆れ果てた顔でそう呟いた。




