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第二部 第六章 使徒ペテロ

「さあ、いけぇぇぇ! シッ! シッ! ピシュツ! 」


 イエスが出す効果音に合わせて、羊の使徒ペテロがボクシングのジャブジャブストレートのコンビネーションを見せる。


 勿論、羊が二本足で立って前足で殴る仕草をしているのだが。


「ボクシングか? 」


「ああ、前世の通信教育で習ってたお陰だ」


「通信教育……なのか? 」


「流行っただろう? 空手とか拳法とかも……」


「こ、これは……」


『どうも、俺と世代が違うようだ。俺の時代はそんなの流行って無いし』


「何だと? ブルーワ〇カーとか流行る前だよ。何を言ってんだ」


 心外そうにイエスがそう話す。


「ブル〇ワーカーもあまり見なかったけど……」


「くくくっ、てめえ若造か? 」


 イエスの口が悪い。


 困ったもんである。


「ちょっと、羊さんを戦わせるのはどうなの? 」


 セシリアちゃんが苦言を呈した。


 そう言えば、セシリアちゃんの家でも飼っていたな。


「それは違うな。使徒ペテロは友達なのだ。友達なら仲間の為に戦って当たり前だ」


 イエスが冷やかに答えた。


「そ、それはそうかもしれないけど」


 セシリアちゃんが動揺していた。


「ふふふ、未だに自分が戦っているのか? 遅れてるぅぅ! 」


 イエスが嬉しそうに俺達を煽る。


「いや、悪いが俺は渉外と索敵が仕事なんで戦って無いぞ。だから、俺は遅れてない」


 俺が胸を張る。


「いやいや、それを止めるって言ってたじゃん」


 セシリアちゃんがそれを聞いて怒りだした。


「いや、俺はかってそうやって信じていた仲間達に裏切られた。それは仲間は何もせず見ていて、俺がいろいろとやる立場だったからだ」


「そうだ。一方的に仲間をこき使って頑張って貰って、それを応援するだけで仲間らしいからな。俺はあちらの世界のアニメで真実を見た。応援するだけで友達になれるんだと」


 イエスが厳かに告げた。


「むう、同意見だとはな」


「確かに。その辺は気が合いそうだ。君達には意外に見えるかもしれないけれど、死にもの狂いで戦うのも仲間なら、後ろで何もせずに応援するのも仲間なんだ」

 

 しみじみとイエスがそう話す。


「おいおい」


「糞だな。あいつら」


「最悪だ」


 酒場から出て来てた連中が口々に呟いた。


「ふはははは、時代について行けない貴様等はほざいてるといい! 行くのだ、ペテロぉぉぉ! 」


 羊のペテロは想像以上にパンチが早く、俺が驚くほどのパンチを浴びせて来た。


「シュッ! シュッ! ピシィィィ! 」


 イエスが必死に効果音を口でやる。


 確かに、効果音を聞いているとパンチの切れ味が確かに一段と凄いように見える。


 それで、昔、ガキの頃に喧嘩した幼馴染はいちいちパンチを出す時にシュッシュッとか口で喋ってた訳か。


「ふふふふ、だがな。お前の作戦は残念だが俺には通じんぞ? 」


「何? 」


 俺がそう言うとイエスが動揺した顔をした。


 俺がその場に落ちてた二メートルくらいの棒を持つと羊の心臓辺りをついてペテロを抑えた。


「くくっ、想像以上にやる奴め! 」


 イエスが吐き捨てた。


『羊さんは胴体がでかいので棒に心臓辺りを棒でつっかえ棒みたいにしたらパンチが届かなくなった。つまり手足が短いのだ』


「あ、パンチが届かない」


「まあ、そうだよな」


 セシリアちゃんとアルバートが呆れた顔をした。


「ふふふふふふ、これで勝ったつもりか? 」


 イエスがこちらを見て笑った。


「まだ、何かあるのか? 」


 俺が訝し気に聞いた。


「ふはははは、使徒アンデレ! 交代だ! 」 


 イエスが叫ぶとペテロは四本足で歩くように戻ってイエスの背後に下がった。

 

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