第十部 第十一章 もう一体のハリネズミ
「我が同胞よ。まさか、ここまで頭の悪い事をやっていたとはな。祖師は世界の破壊とともに新しい世界を作り上げる事を命じていたはずだ。それを貴様は何だと思っているんだ」
モヒカンのハリネズミが滔々とハリーを諭す。
「むむっ、貴様が現れるのはまだ先ではないか」
ハリーがそう忌々しそうに答えた。
「貴様らが暴走しているので現れざるを得なかったのだ。福音枢機卿たる主を紋章扱いし両足を切り落として動けなくして、ただのエンシャントドラゴンとの契約に使おうなどとは片腹痛い。主こそ、こののちの世界を統べる救世主にするんだろうが」
モヒカンのハリネズミがそうハリーへ怒った。
そのお陰でナマケモノのようなキメラは攻撃を止めた。
フランツ儀式枢機卿はモヒカンのハリネズミの言葉には、あまり納得していないような雰囲気だったが、新たなるハリネズミに敬意を表した感じだ。
「いや、こんだけ破壊して恨みを買ってたら今更救世主とか言っても無理じゃねえ? 」
俺が悲しく答えた。
「ふははははは、我らが主はどうもネガティブだな。良く考えたまえ。世界の英雄はどうであったか。皆、見方を変えれば虐殺者でしかない。だが、時代を作るのは常にそういうものなのだ。今、ここで死ぬ人間の事よりも未来で主が導き救うであろう人間の事を考えるべきだ」
モヒカンのハリネズミがそう力強く話す。
「おおおおおおおお」
俺の目から鱗が取れた。
何という素晴らしい言葉。
「いやいや、人間のいない世界こそ、祖師は綺麗な世界とおっしゃってたのではないのか? 」
フランツ儀式枢機卿が疑問を呈した。
「違うな。新たな世界を作ること。それがテーマのはずだ。祖師は物語でそれを出来なかったので、それを実現させようとしていたのだ」
モヒカンのハリネズミがそう反論した。
「だとしても、今は破壊の時だ! 貴様が現れる時ではない! 」
ハリーがそう激しく断じた。
「ならば好きにするがいい。だが、この主は私が連れて行く。貴様らでは紋章だけの動けない存在にしてしまいそうだからな」
モヒカンのハリネズミがそう言うと、俺の襟をつかんでズルズルと引きずって連れて行く。
すげぇ力だ。
「待てっ! 今、主を連れていかれては破壊が止まるっ! 」
「お前達から離すだけだ。別に五キロメートル前後なら紋章は維持されるだろうが。貴様らがそれよりも主を害しかねないので、それはさせて貰う」
ハリーの言葉をモヒカンのハリネズミは遮るように話すと俺をどんどん引きずって連れて行く。
ハリーが舌打ちをした。
そして、フランツ儀式枢機卿は鬼のような目で俺達を見た。
もしかして、モヒカンのハリネズミはハリーやフランツ儀式枢機卿より位が上なのだろうか?
原作のアニメを見ておけばよかった。




